新型コロナウイルスのワクチン接種が各地で本格的に始まり、ネット上で「反ワクチン勢力」の動きが活発になっているようだ。
接種への「妨害」も多くのメディアで取り上げられている。河野太郎ワクチン担当相も「ワクチンデマについて」と、ブログで注意喚起するに至った。
自治体への抗議電話で、窓口が停止
ネット用語でいう「電凸」は深刻だ。先ごろ、若年者への接種を決めた京都、愛知、岡山などで、その自治体の外部からの抗議電話が殺到し、行政の窓口が停止する事態があった。
危険性を説く内容のほか、「人殺し」の声や「殺す」という脅迫もあったという。担当者の困惑が報じられていた。SNSで繋がり、電話番号を共有して「行動しましょう」と呼び掛ける輩がいて、その多くは、ネットに転がる反ワクチン思想のデマに触れていることが分かっている。
今回のワクチンをめぐってのデマは様々だ。たとえば「不妊になる」。これは接種された「mRNA(メッセンジャーRNA)」が人体に溜まるという不確かな説に基づいている。そうした正式な報告はなく、mRNAは短期間で分解されることが分かっている(厚労省などの発表による)。
また、声高に言われる「治験が終わっていない」も誤りだ。製薬会社による治験完了日の記載を誤認したもので、簡単に言えば、現在はどんなワクチンの承認後にもある観察期間に入っている。承認に必要な治験の段階は終わっている。
人々の不安を煽るデマや陰謀論
国際的な報道機関のファクト・チェックでも、今回のワクチンへのネガティブな情報は一蹴されている。感染症専門医や公衆衛生の専門家から、画期的で優れたワクチンだとの評価も多く聞かれる。にもかかわらず、人々の不安を煽る前述のようなデマや「人体実験」「人口削減のためだ」などの“陰謀論”も広がっている。そうした情報をシェアしているのはどのような人達だろう。
FacebookやYouTubeを観察すると情勢が分かりやすい。名指しはしないが、某大学の名誉教授の“仮説”を流す動画チャンネル。この教授はワクチンを「お注射」などと表現し、「卵巣に毒」というように危機感を煽り続けている(ちなみにこの活動について大学側は「雇用関係がなく個人の見解」と発表している)。
この教授だけでなく、偽医療で名高い医師や歯科医、いわくつきの議員、海外在住のスピリチュアル系配信者らが真偽不明なデータなどを示しながら、根拠の曖昧な説を好き放題に流していることが分かる。