コーヒー豆や挽粉、またはインスタントコーヒーを購入するとき、どのような理由で商品を手に取るでしょうか。銘柄や生産国、味、値段――人それぞれ理由があると思います。

しかし、『生産者』や『栽培環境』を考慮してまでコーヒーを選ぶ人は少ないと思います。

それは、なぜなのでしょうか?

重要ではないから。

いいえ、『生産者』と『栽培環境』この2つはコーヒーの未来を左右する重要な選択肢になります。

近年のコーヒーブームによりコーヒー業界は盛り上がりを見せますが、多くのコーヒー農園はその恩恵を受けておらず貧困に喘いでいるという現実があります。また、質より量を重視した栽培は地球環境のみならず、私たちの食の安全をも脅かしているのです。

この問題と向き合っているのが『認証団体』です。

――コーヒーパッケージに『認証ラベル』というものが付いているのを見たことはないでしょうか。ここでは栽培の改革や生産者の保護、コーヒー未来を考える認証コーヒーについて解説します。

コーヒー農園の貧困が招くコーヒーの将来

コーヒーの生産者と栽培環境を守る『認証ラベル』各団体の活動を知る理由とは?
(画像=Cafendより引用)

コーヒー農園の9割以上が遠い地コーヒーベルトと呼ばれる地域にあるため、日本国内からでは実状が見えにくいというのが大多数の意見だと思います。ブームのはずのコーヒー業界。なぜ、農園は儲かっていないのでしょうか?

それは私たちがコーヒー豆を購入しても、そのお金が直接コーヒー農園に行くわけではないからです。ほとんどの場合、穀物メジャーといった大手コーヒーディーラーの懐に入っていきます。

図式としてはディーラーが安価で農園から豆を買い取り、その何倍もの価格で全世界に輸出するというものです。

このような実状からコーヒー農園は質より量を考え田畑を拡大するため森林伐採し、農薬を大量散布します。

ですが、一部の農園では1日1ドルほどの賃金しか得ることができません。

この風潮は現在も当たり前のように続いており、生産者は「農園を継続してやっていけるのか?」という問題に直面しています。

『環境破壊』『不公平な取引』『劣悪な労働環境』この流れを止めなければ近い将来、高品質のコーヒー豆は消え、生産者はいなくなってしまうかもしれません。

では、冒頭で触れた『認証団体』は、これらの問題をどのように是正しているのでしょうか?まずは、多くの認証団体が取り組む『トレーサビリティー』というシステムを解説していきます。

食品の流通経路を知り安全を得る『トレーサビリティー』

コーヒーの生産者と栽培環境を守る『認証ラベル』各団体の活動を知る理由とは?
(画像=Cafendより引用)

トレーサビリティー(traceability)とは、追跡可能という意味です。

追跡可能というのは、食品が消費者の元に運ばれるまでのプロセスが明確であるということです。

国産でも外国産でも基準スレスレでパスしている食品はたくさんあります。

生産されている場所だけでなく食品がどのように加工、流通されているのかが一貫して分からなければ安全と言えないのではないでしょうか。

サプライチェーン(※)で物流を考えることが大切です。(※原材料調達・生産管理・物流・販売までを一つの連続した供給管理)

生産者が誰なのか、どこの農園・工場でどのように作られて、どのように流通しているのか、一つ一つの経路を明確に把握することにより食品が、安全・安心なものにつながります。

これを見極める1つの指針が『認証ラベル』です。認証されている食品は生産者を始め、生産方法から流通経路の全てが追跡可能となっています。

このように生産品の情報が明らかになっている状態を『トレーサビリティー』と呼びます。

また、認証団体の多くが『サステナビリティ』という理念を持っています。次項ではサステナビリティという考え方を解説します。

認証団体のコンセプト『サステナビリティ』とは?

サステナビリティ(Sustainability)......和訳してみると『持続可能性』となりますが、いまいち聞き慣れない言葉ですよね。

ですが、多くの認証団体がこのサステナビリティという理念を支柱に活動しています。

■サステナビリティ『持続可能性』(Sustainability)とは■

認証団体は各々、考え方に違いはありますが第一に『環境を守り、取引市場に公平性を持たせる』という活動を行っています。

この活動が実を結ぶことにより生産者が次の世代にもバトンを渡せる、つまり持続的に生産を続ける社会ができあがるのです。

まだ、ちょっと分かりにくいので具体的な話として『あるコーヒー農園』に着目してみましょう。

「日本から遠く離れたコーヒーベルトの地でコーヒー農園で働く人がいました。

彼は働いても働いても僅かなお金しかもらえません。

仕方がないので子供を学校に行かせず一緒に働くことにしました。それでも得られる賃金は僅かなものです。

そして、農地を広げるため森林の伐採や農薬をたくさん使うことにしました。

こうしてやっと暮らしていける程度の賃金を手にします。

幼いころから、そんな父の姿を見て育った息子は『将来、コーヒー農園を継ぎたい』とは思わないでしょう」

そこで、認証団体は公正な取引の推進や環境破壊をしない効率的な農法などを農園に提示します。

また、児童の労働を禁止させるなど子供の福祉にも目を向けます。

なんとなく認証団体の活動を見てみるとチャリティーのイメージを持ってしまいがちですが、

本質は『農園や企業の環境を向上させ、将来的に生産者が産業を続けられると思える社会・土壌を作る活動』なのです。

かなり簡易的に説明してしまいましたが、次項では有名な認証団体を詳しく解説していきます。

サステナビリティを軸に食品・製品(コーヒー)を支援する団体

・レインフォレスト・アライアンス

コーヒーの生産者と栽培環境を守る『認証ラベル』各団体の活動を知る理由とは?
(画像=Cafendより引用)

地球の生物種の半数以上が生息していると言われる熱帯雨林は、20世紀に入ると商業伐採が進み毎秒0.5~0.8ヘクタールの速度で減少していると言われています。

この状況を食い止めるべく1987年に設立されたのが『レインフォレスト・アライアンス(RA)』という団体です。

RAは熱帯雨林で農業や林業、観光業を営む人たちに

“地球に優しく、今より作業効率の良いプラン”を提示し、熱帯雨林を守ると同時に地域住民が『持続的』に生活をしていける社会を作ります。

RAが定める基準に従って監査会社が監査を行い、認証機関がその報告書をもとに認証する「第三者による認証」によって基準をクリアした農園・企業の製品が対象となります。

審査基準は『生態系の保護』、『良好な労働環境』、『生産性・品質の向上』が支柱となり、これらの基準を通過した製品は“カエルマークの認証ラベル”の使用が許可されます。

生物多様性や水、土壌など天然資源の保護、労働者の労働環境の保護、農薬使用の制限と低減によって、また消費者の手元に届くときまでの流入経路(トレーサビリティ)が明確にしていくことによって結果的に安全性の高い製品に繋がっていきます。

現在、認証を受けている主な農作物は、コーヒーや茶、カカオ、バナナ、オレンジなどが挙げられます。

・UTZ (ウツ)

コーヒーの生産者と栽培環境を守る『認証ラベル』各団体の活動を知る理由とは?
(画像=Cafendより引用)

主にカカオやコーヒー、茶などを生産する農園に『地球に優しい農法』や『優良な労働環境』を推進する団体です。

この2つの理念が広がることで、農園で働く労働者や、その家族の生活が守られ、私たち消費者も安全な食品を口にすることができます。

UTZプログラムでは、「トレーサビリティを重視し、オンライントレーサビリティシステム」を提供しています。

このプログラムでは、管理基準遵守やトレーニングにより生産者にプロフェッショナルな生産者になってもらうことによって、品質向上と生産量増加させていくことによって長期的に持続可能性が高い競争力をつけていくことを目指しています。

具体的には……

UTZ団体「アジア・ビジネス開発マネージャー・オルティス様」によると。

「UTZでは同システムを含むメンバー限定ポータルサイトを運営しています。

UTZ認証原料をUTZ認証原料だとうたって売買する全メンバー(生産者および消費国側の輸入業者、加工メーカー等)は全てのUTZ認証原料の売買を同システムに登録する必要があります。

消費者向け製品を製造する企業は、使っている原料が本当にUTZ認証原料であるという保証を得られます。

それによって消費者にもこの点に関するコミュニケーションが可能になり、消費者も自らが購入した『サステイナブル製品』が本当にそうであるという安心感を得られることができます。

具体的には、オンラインバンキングやオンラインショップに似た使い勝手の良いものをイメージして下さい。

またRAでも同様のシステムを提供しています」

2018年にウツはレインフォレスト・アライアンスと合併しました。

今回の合併は複雑化した認定基準を分かりやすくし、お互いの良い部分を取り入れるという狙いがあります。

※数年前にUTZ Certifiedは『UTZ』という団体名に変わっています。