バーで知り合った男性と

 久々に、以前行きつけだったバーのドアを開けた。不妊治療を始めてから、飲みにいくこともほとんどなくなっていたのだ。

「何度か顔を合わせたことのある男性が、『久しぶり』と声をかけてくれました。おごらせてというので1杯ごちそうになり、その日はけっこう飲んで愚痴って、みんなでしゃべって……。

 結婚してから、私はずっといい妻であろうとがんばりすぎて、ひとりでバーに行くような自由を忘れていたと思いました。たまに行っても1杯飲んですぐに帰るか、仕事仲間と行って仕事の話をしているかだった。他の人と世間話をするような余裕がなかったんですね。その日は独身時代に戻ったみたいにはしゃいで飲み過ぎました」

不妊治療中に不倫の恋におちた40代女性の胸中「夫に恋はしていなかった」
(画像=『女子SPA!』より引用)

気づくと、1杯奢(おご)ってくれた男性とホテルにいた。当日のことをあまり覚えていないとトモカさんは言うが、それでも店を出たところで彼に口説かれたのはうっすらと記憶しているという。

「いや、でももしかしたら私がホテルに誘ったのかもしれない。ホテルではふたりとも眠り込んでしまったんですが、深夜に目が覚めて帰ろうとしたら彼に『好きだよ』と言われて、酔いが冷めないまま私もその気になって……というのが真相です。

 彼とのセックス、楽しかったんです。妊娠のことなんて考えなくていいし、お互いに相手を気持ちよくさせたいという意志が合致していたみたいで」

 楽しくてエロくて、理想的なセックスだったとトモカさんは振り返る。それが恋心に変わるのに時間はいらなかった。

夫に恋はしていなかった

「毎週末、バーで彼と待ち合わせるようになり、そのうち店主や常連さんにバレるからと、外で彼と待ち合わせて食事してホテルへという関係になり。正直言って、不妊治療はどうでもいいような気分になっていきました」

 お互い既婚者だから、秘密だけは守り通そうと約束した。それでもお互いを求める気持ちに嘘はなかったと彼女は言う。

「まぎれもない恋だと自分では思っていました。夫とは婚活という共通の目的があって知り合ったので、ほぼ条件だけで決めたようなもの。もちろん、夫はいい人だし家庭的でもあるから生活していくには、素晴らしいパートナーです。でも、夫に恋はしていなかった。

 不倫相手と関係を続けていく中で、私がほしかったのはこの恋する感覚なのではなかったのかと思うようになりました。夫との間に、そういう感覚がないから、子どもという目に見えるものがほしかったのかもしれない、と。いえ、今になると何が本当の私の気持ちだったかさえわからないんですが」

不妊治療中に不倫の恋におちた40代女性の胸中「夫に恋はしていなかった」
(画像=『女子SPA!』より引用)