20日から全国公開となった青春映画『子供はわかってあげない』。
原作は、漫画ファンのみならず同業者からも人気の高い漫画家・田島列島の同名コミック。監督は『南極料理人』『横道世之介』など、温かくどこかユーモラスな作品で知られる沖田修一。ほっこりのスペシャリスト2人による夢のタッグが、ついに実現しました。
絶妙な台詞回しと軽快なテンポで高校生・美波の恋と冒険を描いた『子供はわかってあげない』。作者は、かつて好きな映画として沖田監督の『南極料理人』を挙げており、今回の映画化はまさしく夢の共演といえます。
上白石萌歌が初主演 ちょっと切ない、ほっこり青春映画
『子供はわかってあげない』の主人公・朔田美波は、部活中に屋上で動く怪しい人影を発見。そこにいたのは、書道部のもじくんこと門司昭平君でした。大好きなアニメの話で意気投合した2人は、ひょんなことから美波の実の父親を探し始めます。美波は、海辺の町で暮らす父親と数日間過ごすことになりますが…。お気楽だけどちょっと切ない、ほっこり青春映画です。
美波役を演じるのは、今回が初主演となる注目の若手女優・上白石萌歌。もじくん役は、映画『町田くんのせかい』で、1000人のオーディションから選ばれ主演を務めた細田佳央太。この2人による「サクタさん」と「もじくん」が本当に瑞々しく、可愛らしい。余計な力が入っておらず、演技に自然と引き込まれていきました。
屋上から渡り廊下まで一緒に歩く場面は、「もっと話し足りないし一緒にいたい」と思う気持ちが、会話の端々や一挙一動から滲み出ており、非常にいいシーンでした。
豊川悦司、古舘寛治ら脇も名優揃い
また、行方不明の実父役に豊川悦司、美波の母親役に斉藤由貴、今の父役に古舘寛治と、主人公たちの周りも名優揃い(ちなみに、古舘寛治は沖田作品に数多く出演しており、『南極料理人』では終始態度の悪い「主任」役を演じています。そちらも名演です)。
今の父と美波が『魔法左官少女バッファローKOTEKO』のテーマソングに合わせて踊る冒頭は、義父娘の良好な関係性が伝わってほっこり。暮らしの中の細やかな言動を長回しで丁寧に描くのは、沖田作品の特徴といえます。
トヨエツのキュートなおじさんぶりが見事
個人的にかなり衝撃だったのが、ビキニ姿の豊川悦司! かつて美青年だったあのトヨエツが、こんなにむっちりした体に!?と、それはそれでまた興奮しますので必見です。
いきなりテレビを買ってきたり、泳ぎを教えてもらったり。美波の実父は「はしゃぐ姿がちょっと気持ち悪い」という思春期の娘から見た父親像そのもので、豊川悦司がキュートなおじさんを見事に演じています。
ただ、一点だけ気になったのは、門司君との対話のシーン。10代の男の子を断れない状況に追い込んで、ある行為を強要するというハラスメント描写があまりに怖くてドン引き。 沖田監督であれば、別の切り口で実父vs娘の男友達の緊張感を表現できたのでは…と、残念に思った次第です。