天から恋が降ってきて
レストラン「1ヶ月後、私は彼女とレストランにいました。信じられなかった。元クラスメートってすごく身近なんですよね。当時はほとんど話せなかったのに、今は軽口を叩きながら一緒にごはんを食べてる。舞い上がりましたよ」
食事が終わると、彼女は娘のところへ行くと言った。1ヶ月に1度くらいは来るからまた会いたいとも。だが彼は自分の中から突き上げてくるものに抗うことができなかった。
「どうしても一緒に来てほしいところがある。そう言ってラブホに連れ込んでしまったんです。彼女はびっくりしていたけど抵抗はしなかった。だけど部屋に入ってから、『こんなつもりじゃなかったのに』と。
『僕もだよ、こんなつもりじゃなかった。でもあなたを見ていたら自分を止められなくなった』と素直に言いました」
48歳の既婚の男女が、体も心も何もまとわず向き合ったときに、本物の恋が始まったんですと、彼は力を込めて言った。
自分の息子に逢瀬を見られた
それ以降、彼女は頻繁(ひんぱん)に上京してくるようになった。彼はケイコさんにどんどんのめり込んでいった。
「半年間、ほぼ毎週のように会っていました。朝帰りもしたので、妻はおかしいと思っていたようです。でも私は、同窓会以来、こっちにいる友人たちとの関係が復活してみんなで飲む機会が増えたと言い張っていました」
ホテル ある金曜日の夜、ふたりが繁華街のホテルへと向かっていると横の道から飛び出してきた若い男がいた。「すみません」と言ったその顔は、なんと息子だったという。
「あとから知ったんです。息子がその近くの居酒屋でアルバイトをしていること。時間に遅れそうで走っていたそうです。私は息子のバイト先なんて知りませんでした。息子は驚いたような顔をして私を見て、彼女を見た。でも何も言わないまま走り去っていきました」
もちろん、ケイコさんはその男性が彼の息子とは知らなかった。その晩、彼は彼女に、「もし僕が離婚したらどうする?」と言った。彼女は「私も離婚してもいいわよ」と軽く返した。
「息子に会った衝撃で、無意識のうちにケイコに救いを求めたんだと思います。でもケイコは本気に受け取ってしまった。数日後、『離婚してもいいわよ、私は』とメッセージが来て。自分が家族からも彼女からも追い詰められている気がしました」
息子の一言で恋心は消えていった
息子の態度は明らかに変わった。妻は「あの子、何かあったんじゃないかしら。あなたから聞いてよ。心配だわ」と言い出した。
「息子と話しました。ホテルへ行くつもりではなかったこと、近道だから駅まで行くのに通っただけだということ。
息子は信じてはいなかったでしょう。でも『オレは何も言わないから。お母さんを泣かせるなよ』と」
義父にはじめて直接的に歯向かった ヨシフミさんの恋心は、その息子の一言で泡のように消えていった。彼女が「離婚」を本気で考えていることも恋を萎えさせるにはじゅうぶんだった。
「私は恋をしていたはずなのに、いつの間にか結婚生活を脅(おびや)かされていた。それはすでに恋からは逸脱していたんですよね。
ケイコにはもうつきあえない、妻が病気だと嘘をつきました。彼女は『いつまでも待ってる』と言ってくれたけど、もう会うつもりはありません」
ヒヤヒヤビクビクしながら暮らしている
会社にも妻にも今のところはバレていないが、彼女が会社に乗り込んでくる可能性も、息子が母親にぽろりと漏らすこともあり得ないわけではない。
「毎日、ヒヤヒヤビクビクしながら暮らしています。まだ定年まで15年以上あるし、仕事を失いたくない。
こうなって初めてわかりました。やはり私は恋などしてはいけなかったんだ、と。
あの濃密な半年間は楽しかった。別の理由で彼女とすっきり別れていたら、恋は恋として思い出になったかもしれないのに……。いい年した大人の恋は、思っていたよりずっとむずかしい。そう思います」
守るものがある人は、もっと緻密(ちみつ)に恋を進めるべきだったのかもしれない。
【他の回を読む】⇒「シリーズ40代の恋」の一覧はこちらへ
<文/亀山早苗> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 亀山早苗 フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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