フランス映画界の巨匠、フランソワ・オゾン監督が手がける最新作『Summer of 85』が8月20日より公開となります。フランスのアカデミー賞とも言われるセザール賞で12部門にノミネートされた本作で描かれたのは、1985年のフランスを舞台にした少年たちの恋物語。

太陽の光と海の青が眩しいブルターニュの風景や、当時のフランスのファッション、流行りの音楽などにも注目したい本作の魅力を、オゾン監督のインタビューとともにお伝えします。

17歳の頃の監督が出会った小説を映画化。当時感じた“青春”をスクリーンで表現

映画『Summer of 85』でフランソワ・オゾン監督が描く、1985年のフランスと少年たちの恋模様
(画像=『PARIS mag』より引用)

1996年の短編『サマードレス』や1998年の長編第一作『ホームドラマ』で一躍注目を集めたオゾン監督。以降、世界3大映画祭に多くの作品を送り出し、「映画祭の常連」としてフランス映画界の最先端に立ち続けます。2018年に公開された『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』は、実話に基づいたヒューマンドラマとして大ヒットし、第69回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞しました。

本作の原作となる小説『おれの墓で踊れ』と、17歳のときに出合ったオゾン監督。当時、「自分が映画監督になったらこの物語を手がけたい」という想いを抱いたそうです。少年同士の恋愛を伸びやかに、繊細に描いた本作からは、オゾン監督が原作から受けた感動が、スクリーンを介して私たちの心にも響くことでしょう。

映画『Summer of 85』でフランソワ・オゾン監督が描く、1985年のフランスと少年たちの恋模様
(画像=『PARIS mag』より引用)

【あらすじ】

1985年夏。ノルマンディーの海辺の街で家族と暮らす16歳のアレックスは、ある日、海でヨットが転覆したところをダヴィドに助けてもらう。運命の出会いを果たした2人は惹かれあい、友情を超えて恋愛感情が芽生える。互いに想い合う中で、ダヴィドから「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という提案を受け、アレックスは戸惑いながらも誓いを立てることに。初めて恋する喜びに浸るアレックスだったが、海辺で知り合ったケイトという女性の登場をきっかけに、2人の恋愛関係に亀裂が生じ始めてしまい…。

少年たちの恋愛模様と、80年代のライフスタイルやカルチャーに注目!

映画『Summer of 85』でフランソワ・オゾン監督が描く、1985年のフランスと少年たちの恋模様
(画像=『PARIS mag』より引用)

―監督が10代の時に読んだ小説『おれの墓で踊れ』の映画化ということですが、物語のどの部分に感銘を受けて映画化したいと思われたのでしょうか。

オゾン監督:この小説ではユニバーサルな恋愛が描かれています。当時、同性愛を語ること自体、ネガティブな印象を持たれがちな時代でしたが、「男同士だから」という罪悪感を感じさせることなく、少年たちのひとつの恋の形が美しく綴られていました。

ティーンエイジャーの頃は、恋愛も人生も「発見の時」だと思っています。発見して、傷ついて、回復していく。そういう青春を描きたい、原作を初めて読んだ当時の自分の想いをスクリーンで表現したいと思いました。

映画『Summer of 85』でフランソワ・オゾン監督が描く、1985年のフランスと少年たちの恋模様
(画像=『PARIS mag』より引用)

―これまでに手がけた作品の登場人物は、脆さや危うさを持つキャラクターが多い印象です。本作のアレックスやダヴィドからも、恋愛感情の初々しさや不安定さを感じました。

オゾン監督:まだアイデンティティが形成されていない、自分自身が何者かをわかっていない瞬間のキャラクターを描くのが好きなんです。

そのためには、自分が描く人物を理解し、愛することが大切。僕自身も自分が何者なのかわからない曖昧な時期がありました。今、アイデンティティを構築中の人物の思いや感情に寄り添うことでその理解が深まり、作品上に表現することができると思っています。

A地点とB地点の間でいろんな経験や試練があって、「人生とはどんなものか」を学んでいく…そういうプロセスを映画でも表現したいし、観る人にも体験してほしい。映画を観る前と観た後で、新しい思考に至るような体験につながればいいなと思っています。

映画『Summer of 85』でフランソワ・オゾン監督が描く、1985年のフランスと少年たちの恋模様
(画像=『PARIS mag』より引用)

―80年代のフランスのファッションやカルチャーを感じられるのも本作の魅力です。80年代を生きる役を演じる上で、主演の2人にアドバイスなどはしたのでしょうか。

オゾン監督:『ラ・ブーム』など、80年代の代表的な映画を観てもらったり、当時の音楽をたくさん聴いてもらいました。アレックス役のフェリックス・ルフェーヴルも「僕の母が劇中に登場する音楽を全部知っていたよ」と話してくれましたが、作中では、当時のポピュラーな音楽が多数登場するので、そちらも楽しんでいただけたらと思います。

―最後に、公開を楽しみにしている日本のファンにメッセージをお願いします。

オゾン監督:日本で公開されることをうれしく思います。映画の舞台となるノルマンディー地方は、80年代と比べても大きく変わらない美しい景観を持つ場所。この景色を見てフランスのバカンスの様子を楽しんでもらえたら幸いです。

映画『Summer of 85』でフランソワ・オゾン監督が描く、1985年のフランスと少年たちの恋模様
(画像=『PARIS mag』より引用)

アレックスとダヴィドの恋愛は、ときにロマンチックに、ときにメランコリックに描かれ、ティーンエイジャーならではの危うさに胸を締め付けられます。少年たちの細やかで美しい恋愛模様とともに、85年代のフランスのライフスタイルや音楽、開放感あふれる海辺の景色を楽しめる本作。まだまだ旅行に行きにくい情勢が続いていますが、フランスでのバカンスを体感しに、映画館に出かけてみてはいかがでしょうか。

【作品情報】

映画『Summer of 85』でフランソワ・オゾン監督が描く、1985年のフランスと少年たちの恋模様
(画像=『PARIS mag』より引用)

映画タイトル:Summer of 85
公開日:8月20日(金)
※新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国順次公開

監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、メルヴィル・プポー
配給:フラッグ、クロックワークス
原題:Ete 85/英題:Summer of 85
公式サイト:summer85.jp 【PG-12】
公式Twitter/Instagram:@summer85movie

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