普段は山に興味がなくても一生に一度は登ってみたいと思うのが富士山。ですが、ばく然とした憧れはあっても日本一高さを誇るだけにハイキング気分で登れるような山ではありません。
今から9年前、当時付き合っていた彼氏から富士登山に誘われた滝口梨加さん(仮名・34歳)もすぐには返事ができなかったといいます。
準備万全の彼女と前日飲み歩いていた彼氏
「魅力的な話だし、山頂からご来光を見てみたいと思いましたけど、岩場だらけでキツそうじゃないですか。 一応、中学高校と陸上部でしたが引退してかなり経っていたし、山登りなんてせいぜい高尾山くらい。それも途中までケーブルカーを利用してです(笑)。
なにより体力面以上に問題だったのは、学生時代にヒザを故障して手術歴があること。富士山の険しいコースに耐えられるかという不安があったんです」
それでも「ダメなら途中で一緒に引き返そう」との彼氏の言葉もあり、最終的に登ることを決意。それから毎日歩く量を意図的に増やし、購入したトレッキングシューズも靴ずれを起こさないように履き慣らしておくなど来るべき登山に備えていました。
「せっかく登るならしっかり準備したいじゃないですか。山に関しては素人ですが初心者なりにコンディションくらいはちゃんと整えなきゃと思って。
当時はいつも深夜まで夜更かしていましたが、登山の一週間前から毎日8時間は寝るようにしていました。ただ、彼氏はいつも通りの生活を続けていたらしく、出発前夜も友達と飲み歩いていたようです」
自分だけどんどん先に行く彼氏
トレッキングシューズ 行楽シーズンのトレッキング 登山 ハイキング アウトドア 登山は山梨側の吉田口からの1泊2日のルートで、5合目から出発して初日は8合目の山小屋に宿泊。2日目は山頂からご来光を眺めるために深夜のうちに出発する、余裕を持たせたスケジュールにしたそうです。
「彼氏は最初、ガッツポーズして記念撮影をしたり、かなりおどけた様子でした。登り始めてからも元気一杯でしたがピッチが早かったので『そんなに飛ばすと途中でバテちゃうよ』って忠告したんです。けど、言うことをまったく聞かなくて……。
一緒に登るどころか自分だけどんどん先に行っちゃうし、この時点で正直イラッとしていました」