「30代にもなって新たな会社にチャレンジするのは難しいのではないか?」「結婚や出産もしたいけど、転職の妨げにならないだろうか?」など、30代女性の転職にはその年代ならではの悩みがあるでしょう。
30代からの転職は可能なのか?女性の転職や中途採用市場に関するデータから探ります。
転職市場は30代女性にとって追い風か、逆風か?
30代女性の転職事情は明るいのでしょうか、それとも厳しいのでしょうか。まずは、近年の転職市場の動向から見てみましょう。
30代の中途採用がもっとも多く、2019年も増加傾向
リクルートワークス研究所『中途採用実態調査(2018年上半期実績、2019年度見通し)』によると、2018年度上半期の中途採用における採用年齢層は、30代が66.8%でトップ。40代の中途採用も、2017年から2018年で5.3ポイントの増加と高い伸びを見せています。厳しいのは50代以降の年代です。
これは男女まとめてのデータなので男女で傾向が異なる可能性もありますが、30代はまだ、転職に年齢の影響を心配する世代ではなさそうです。
採用と処遇を決めるのは「経験・能力・知識」
企業が転職者を判断するポイントはどこなのでしょうか。厚生労働省『平成27年転職者実態調査の概況〔事業所調査〕』によると、転職者のいる事業所の採用理由は、次のような回答となっています。
<専門的・技術的な仕事>
1位:経験を生かし即戦力になるから……64.8%
2位:専門知識・能力があるから……55.0%
3位:離職者の補充のため……48.4%
<事務的な仕事>
1位:離職者の補充のため……59.3%
2位:経験を生かし即戦力になるから……45.4%
3位:職場の適応力があるから……29.9%
<販売の仕事/サービスの仕事>
1位:離職者の補充のため……(販売)57.2%、(サービス)62.7%
2位:経験を生かし即戦力になるから……(販売)57.8%、(サービス)47.7%
3位:職場の適応力があるから……(販売)30.1%、(サービス)35.1%
また、転職者の賃金や役職など処遇を決める際に考慮した要素においても、業種を問わず「これまでの経験・能力・知識」を挙げる企業がもっとも多く、全体で71.4%に上ります。
採用の可否、採用後の待遇を決めるのは「転職前に身につけたもの、積み上げたもの」だと考えてよい結果でしょう。これも、経験豊富な30代女性には追い風となる情報だと思います。
30代転職者の強みとは?
30代転職者の特徴も見ていきましょう。独立行政法人労働政策研究・研修機構が2019年に発表した『若者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ』の分析結果から追ってみました。2018年4月2日時点で20~33歳の、正社員としての勤務経験が1回以上ある人を対象に行った調査です。
在職期間が長いほど能力が高い
全体的な傾向として、若手正社員の職務遂行能力は、長く勤めるほど伸びていきます。最初の正社員勤務先を離職した人も継続している人も、職務遂行能力を示すあらゆる行動特性において、入職3カ月時点よりも離職直前や調査時点のほうが高い得点を記録します。また、勤続期間3カ月超より3年超、3年超より5年超と、在職期間が長いグループのほうが、より多彩な行動特性について能力の伸びを示します。
30代になって転職を考える人は、大卒の新採用で就職したのであれば、勤続10年に届こうとする頃。企業の求める仕事の能力は、十分に備えていると自信を持ってよいのではないでしょうか。
在職期間が長いほど、能力の高い人が離職していく
勤続者の能力と離職者の能力を比較してみると、次のようなことが分かりました。職務遂行能力は勤続期間に伴って伸びていきますが、勤続期間が長くなると、離職者が勤続者の能力を追い越す傾向が出てきます。
勤続期間3カ月超3年以内のグループで比べると、勤続者のほうが離職者より高い得点を示す行動特性は、半分くらい。5年超10年以内のグループになると、すべての行動特性において、離職者のほうが勤続者より高くなります。勤続期間が長くなるほど、能力の向上した人がキャリアアップのために会社を離れるという状況があるようです。
「結婚・出産のため」転職する人たちの能力がもっとも高い
女性特有のデータもあります。勤続期間が長くなるほど「結婚・出産のため」を理由に転職する人が増えていくのですが、「結婚・出産」を理由に離職した人は、その他の理由で離職した人よりも高い能力を示すのです。
転職前の企業から見れば、能力が伸びこれから活躍する女性社員を、よその企業に流出させているというもったいない状況です。
一方、転職者の側に立ってみると、能力の高いビジネスパーソンが結婚・出産を理由に転職することは決して珍しくないとも言えるでしょう。