今年に入り、全仏オープンで記者会見を拒否し罰金を科され、精神面の不調を理由に同大会を途中棄権、続くウィンブルドン選手権の欠場と、話題にこと欠かないテニスの大坂なおみ選手(23)。
先日の東京オリンピック開会式では最終聖火ランナーを務め、聖火台に点火。世界的セレモニーのフィナーレを飾ったことも話題となりました。
7月16日よりNetflixで配信開始されたオリジナルシリーズ『大坂なおみ』は、一連の彼女の行動を裏付けるヒントがつまった全3話のドキュメンタリー。いろいろあった今だからこそ観ておきたい、とてもタイムリーな作品です。
トップアスリートとしての葛藤と迷い
本作では、2018年の全米オープンでグランドセラムを制覇し一気にスーパースターとなった大坂選手が、ディフェンディングチャンピオンとしての重圧を感じながら過ごす2020年までの2年間の日々に密着。
過酷なトレーニングを続ける姿や、オフシーズンの家族との時間、ファッションアイコンとしても活躍する姿など、トップアスリートとしての面だけでなく大坂なおみ選手の素顔にもフォーカス。
心の師であり友人だった、バスケットボールのコビー・ブライアント選手の突然の死に打ちひしがれる様子や、自分の立場を何かに役立てたいと黒人の人種差別問題に抗議する運動「ブラック・ライブス・マター」に参加するにいたった経緯などにも迫ります。
繰り返される「器」という言葉
その中で注目したいのは、何度か繰り返される「器」という言葉。冒頭、大坂選手は「自分は器だと感じる」と語り、離れて暮らす姉を訪ねて行った際には「私は姉がやりたいことをやるための器だ」とも語っています。
ホームスクール(学校に通学せずに家庭で学習を受ける教育形態)で学友を作ることもなく、姉と二人でテニスの練習ばかりしてきた大坂選手にとって、日本人初のグランドスラム覇者になることは幼い頃からの1番の目標だったとか。
その目標を20歳という若さで叶えてしまった彼女の迷いが、「器」という一文字に表れているように思えました。
他にも「強くあるために、(私が)払ってきた犠牲を誰も知らない」「強い選手じゃなければ私は何者?」「大きな試合があると睡眠に支障が出る」「心を休めるための休養が必要だ」など、トップアスリートとして走り続ける彼女の迷いや葛藤が表れた言葉が次々に飛び出します。
このドキュメンタリーでは今年に入ってからの一連の騒動までは描かれていませんが、当時の彼女の気持ちを垣間見ることができる内容となっていました。