森ビルとアート集団・チームラボが共同運営する「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」(以下、チームラボボーダレス)が2021年7月15日に「運動の森」エリアを大規模リニューアルしました。14日には、単一アート・グループにおいて世界で最も来館者が多い美術館「Most visited museum(single art group)」としてギネス世界記録に認定(2019年1月1日~12月31日の来館者数において合計計2,198,284名を記録)。多くの来場者が訪れる話題のスポットです。そんな同館は夏休みに合わせ、体を動かして親子で楽しめる体験型作品を追加しさらに進化。今回は新作とパワーアップした作品を中心に紹介します。
「チームラボボーダレス」とは?
「チームラボボーダレス」とは、2018年6月に東京・お台場パレットタウン内にオープンした美術館。アート集団・チームラボが「地図のないミュージアム」をコンセプトに境界のないデジタルアートを展示・公開しています。
約1万平方メートルの敷地では、470台以上ものエプソン製プロジェクターを駆使した映像と立体空間を組み合わせ、境界のないデジタルアートを展示。順路はなく、来場者は自分の感覚を頼りに館内を進んで作品にふれられるのが特徴です。時には体を動かしたり、ほかの来場者と共同で作業したりしながら、より深く作品へと没入できます。エリアは「運動の森」「Borderless World」「ランプの森」「学ぶ!未来の遊園地」そして「EN TEA HOUSE 幻花亭」の5つで構成されています。
同作品群を手がけるアート集団・チームラボは、2001年より活動をスタート。アート、サイエンス、テクノロジーと自然界の交差点を模索し、アーティストやプログラマにエンジニア、CGアニメーターや建築家、数学者らが在籍。ニューヨークやロンドンをはじめ世界各地で展覧会や常設展を実施しています。
「チームラボボーダレス」の楽しみ方
展示エリアには60以上のデジタルアートが展示され、来場者は暗く演出されたミュージアム内を歩き回り作品との出会いを繰り返します。マップはなく散策気分で自由に移動し作品と対峙したり、公式ガイドアプリ「teamLab」を駆使し、解説を読みながら作品世界を深く理解したり、行って戻って、眺めてふれてと作品に自由なアプローチができます。
また、体を動かし体験する作品が主なため、飛び跳ねたり、ポイントからポイントへ渡ったり、さまざま種類の運動も伴います。ゆえに履き慣れた靴と動きやすい服装は必須。作品と一体化した写真を撮りたい場合は映像が映りやすく、周囲の色に影響される無地の白、逆に暗闇と一体化できる黒い服などもよいでしょう。約3,4時間を目処に、丸1日ミュージアムで遊び尽くすつもりでスケジュールを組むのがベストです。
大幅リニューアルで魅力が倍増した「運動の森」
7月15日にエリアの1つ「運動の森」が大規模リニューアル。こちらは「身体で世界を捉え、世界を立体的に考える」がコンセプト。脳の海馬を成長させ空間認識能力を鍛える創造的運動空間です。5エリアの中で最も身体を動かし、作品と一体化する時間が多いのが特徴。懐かしい遊びも組み合わせ世代を問わず作品とボーダレスな関係を築けます。今回は新作とアップデートした作品を中心に紹介します。
【新作】『インビジブルな世界のバランス飛石』
通常は目にすることがない小さな微生物の世界を「バランス飛石」を渡りながら眺める作品が『インビジブルな世界のバランス飛石』。インビジブルとは目に見えないという意味です。独特の素材感の飛石をゆっくり踏むたびに“ふわふわ”や“にゅにゅ”など人間の声にも似た不思議な音が響き石の色も変わります。
また、石の色は周辺に投影された微生物にも影響し空間全体の色味が変化。水の中を浮遊するような強弱のある動きは生命の息吹を感じるはず。なお、ずっと同じ飛石の上にとどまっていると素材由来の複雑な揺れが発生するので、落ちないように身体でバランスを取る必要も。体幹を使って感じる作品です。
【新作】『弾む水の天才ケンケンパ』
大人には懐かしいケンケンパを使った作品『弾む水の天才ケンケンパ』。水の上に表れたマルやサンカク、シカクの記号をリズミカルに踏み、飛び、心踊るような体験ができます。上手く記号が踏めるとサウンドが鳴り蝶々や鳥、魚たちが生まれ出てくるのがポイント。木琴をはじめとした優しい音色とともにふわりと広がるカラフルな水紋と、躍動感ある生き物によって作られる世界は、まるで自分が妖精になったような気持ちにさせてくれます。
同一カラーや記号を連続して踏むと空間が華やかに色づいていき、行動により空間が変化する様を体感。具体的にはシカクの記号を連続して渡ると鳥が飛び立ち、ブルーが連続すると青の空間が広がります。ある一定のパターンで動くと虹がかかることも!?
【新作】『タイフーンの上のエアリアルクライミング』
屋外アスレチックの定番ゆらゆら棒渡りを彷彿させる『タイフーンの上のエアリアルクライミング』。連結した棒が空中に浮かんでおり、足場として使いながら渡り歩く作品です。周りの人が動くと連動して全体が揺れるため、ちょっとしたスリルも感じます。
鮮やかで色とりどりの棒を渡り歩いていくと、フルートやピアノの音が鳴り、いつのまにか周囲の景色が変化していることに気づくはず。棒に乗ると下に台風のような渦が生まれ、乗っている棒の色と周囲の渦の色がどんどん混ざっていきます。ロープと棒、自分自身のバランスを考えて渦を作ってみましょう。グループの場合は巨大な渦を共同で作ったり、崩したり変化を楽しむのもおすすめです。
【新作】『鼓動する大地』
『鼓動する大地』は、大規模リニューアル前日にサプライズで発表されました。高低差のある立体的な地形の大地を歩くと地層がゆがみ、うごめきます。立ち止まってじっとしていると足元からは植物の芽生えが。大地には『グラフィティネイチャー 山山と深い谷 、レッドリスト』のミヤコヒキカエル、キシノウエトカゲにオオサンショウウオなど絶滅の恐れがある野生生物たちが棲んでいます。じっと眺めていると食物連鎖の瞬間も目撃できるでしょう。
大地の生物たちは来場者が『グラフィティネイチャー 山山と深い谷 、レッドリスト』で描いたもの。塗り絵を受け取ったら自由に色を塗り、スキャンをすれば、あっという間に足元へと現れ動き出します。自分が生み出した命の行く末を追いかけてみるのも楽しいですよ。
『重力にあらがう呼応する生命の森』
弾力のある素材で作られた巨大なバルーンが空間を埋め尽くすように配置された『重力にあらがう呼応する生命の森』。カラフルなバルーンは重力に逆らうように床や天井に立っています。ときおり息をするように光が強くなったり、弱くなったり。まずは、バルーンの間を探索するようにゆっくり進み、先に広がる開放感を味わいましょう。
空中に浮いたバルーンは自由に動かすことが可能です。気になる場所に移動させたり、ポンポンと揺らしてみたり、ふれ合ってみましょう。床に自立するバルーンは倒れそうになると不思議な音色とともに色を変化させて意思表示するかのように知らせてくれます。カラーによって出す音も異なるので色々実験してみるのもいいですね。