旧日本軍が突き進んだ敗戦への悲劇そのもの
銀行の体質というのは、どうも旧日本軍の悪い点をそっくり真似ているように思えてならない。現状認識が甘く、戦略的な発想ができない。耳の痛い話を上申すれば疎んじられ、いつの間にか経営者は裸の王様になってしまう。
いま銀行は、政府日銀の金融緩和政策によって収益を圧迫されている。どんなに融資を伸ばしても適切な利ザヤを確保することが困難で、貸せば貸すほど収益が圧迫される事態に陥っている。
だからこそ、銀行は投資信託などの販売で収益を稼がなければならない。経営者の頭の中はそればかりなのだろう。「なぜ投資信託が売れないんだ?」という問い合わせがしばしばある。
直接私にその疑問が投げかけられれば、こう答えるだろう。「今は投資信託が売れる時期ではありません。投資信託にこだわっていると、時代に取り残されます。次にどんな金融商品を売っていかなければならないのかを真剣に考える時期が来ています」と。
ところが、現実はそうはいかない。上に提出される報告書はいつもこうだ。「現場の営業力が低下しています」「商品ラインナップが少なく、もっと投資信託の種類を増やす必要があります」
その結果、販売部隊にこれまで以上の人員が投入される。そして取り扱う投資信託の数もどんどん増えていく。
私に言わせると、新たに投入された戦力は、まるで「ひよっこ」である。新たに追加される投資信託も時代錯誤のものが多い。これらの結果が検証されることなく、使い物にならない新兵と、使い物にならない粗悪な武器がどんどん配備されていくのだ。それは、旧日本軍が突き進んだ敗戦への悲劇そのもののようでもある。
繰り返し言うが、いまはどんなに営業力を強化しても、どんなに品揃えを充実させても売れないものは売れないのだ。
現場で投資信託を販売している人間にしか分からないことがある。もう一度言おう。潮目は変わったのだ。
あなたにも危機が迫っている
重要なのは、あなた自身にも危機が迫っていることだ。
最近、或るメディアで取り上げられた話題を紹介しよう。個人営業(リテール)部門の落ち込みに危機感を抱いた証券会社などは利回りの高い「変わり種」の金融商品を相次ぎ投入し「せめて1%」を求める個人投資家の支持を集めているという。
本当に投資家自身がこんなモノを求めているのか、私には疑問だ。一部の層にはニーズはあるかもしれない。しかし、「変わり種」にはとんでもないリスクが潜んでいる。
たとえば「グローバル・マクロ」と呼ばれる海外ヘッジファンドが得意とする運用戦略に基づく投資信託だ。株式や債券、金融派生商品などを駆使し、相場の上げ下げにかかわらずプラスの運用を目指すというものである。聞こえは良いが中身はブラックボックスだ。一体どのような運用が行われているのか分からない。
そんな投資信託をお客様にどのように説明するのだろう。そんな投資信託の良し悪しを一体どのように判断すれば良いのだろう。正直なところ、私には「変わり種」投資信託を適切にお客様に説明するだけの自信がない。
「とにかくこの投資信託は儲かります」
結局のところ、絶対収益を目指すとは、そういうことなのだ。そんな説明をしなければならないのは、銀行員として心苦しい限りだ。
そう遠くないうちに、あなたのもとにも銀行員がとんでもない「変わり種」を売りにやってくるに違いない。くれぐれもご注意あれ。
文・或る銀行員/ZUU online
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