おすすめの秋の俳句をご紹介
吹く風がさわやかになり、作物が実りはじめる日本の秋。そんな季節には俳句を楽しんでみませんか?
普段なかなか触れることのない俳句ですが、作者の思いがつまった味わい深い名句がたくさんあります。今回はおすすめの秋の俳句をご紹介。
「月」「風景」「恋愛」をイメージさせる名句を6作選びました。この季節ならではの趣のある俳句ばかり。今年の秋は、作者の思いを想像しながらぜひ俳句を楽しんでみてください。
おすすめの秋の俳句《月》
最初は「月」をイメージさせる、おすすめの秋の俳句をご紹介します。秋といえば「中秋の名月」など、月がとても綺麗な季節。俳句で単に「月」といえば、それは秋の月のことを意味しています。
今回取り上げるのは2作ですが、日本には月の俳句がたくさん。「月の名句といえばこれ!」という有名な俳句もあります。俳人たちはどんな思いを月にのせて、俳句を詠んできたのでしょうか。さっそく見ていきましょう。
月にまつわる秋の俳句①松尾芭蕉
名月や 池をめぐりて 夜もすがら
松尾芭蕉
松尾芭蕉の有名な秋の俳句。秋の夜長に月を愛でる様子が思い浮かびますが、実はこの俳句にはさまざまな解釈があるんです。名月に見惚れていたら夜が明けてしまった、という意味の俳句ですが、注目なのは「池をめぐりて」の部分。池の周りをめぐっているのは芭蕉自身なのか、それとも月なのか、2通りの解釈ができます。
また、芭蕉が見ているのは空に浮かぶ月か、池に映る月か、いろいろな情景が浮かびますね。月への思い入れが深かった芭蕉は、このほかにも多くの「月」にまつわる俳句を残しています。
月にまつわる秋の俳句②高浜虚子
月を待つ 立待月と いふ名あり
高浜虚子
明治〜昭和まで3つの時代にわたり、俳人や作家として活躍した高浜虚子。10万句を超える俳句を詠んだと言われています。そんな高浜虚子が残した「月」にまつわる秋の名句がこちら。
「立待月(たちまちづき)」とは、「立って待っている間に出てくる月」を意味しており、別名「十七夜」とも呼ばれています。月は、十五夜の満月を境に出る時間が遅くなりますが、「立って待っていられる程度の遅くない時間帯」に見られる月ということです。「寝待月」と呼ばれる月もあるんですよ。
おすすめの秋の俳句《風景》
続いては秋の風景を思いだすような、おすすめの俳句をご紹介します。紅葉や空の色が鮮やかに見られる秋の季節の風景も、さまざまな俳人によって俳句として詠まれています。
ここでは日本を代表する有名な俳人たちの名句を、2作取り上げました。さわやかな日本の秋が思い浮かぶような、趣のある俳句です。目を閉じて情景を浮かべながら楽しんでください。秋の風景を詠んだ俳句はほかにもたくさん。ぜひお気に入りの名句を探してみてくださいね。
風景にまつわる秋の俳句①小林一茶
青空に 指で字を書く 秋の暮
小林一茶
日本を代表する俳諧師の一人である小林一茶。俳句をあまり知らない人でも、一茶の俳句は聞いたことがあるのではないでしょうか?「一茶調」と言われる独特の作風で、江戸時代の三大俳人の一人として名を残しました。
そんな小林一茶の、秋をイメージさせるおすすめの俳句がこちら。目を閉じると、気持ちのよい秋晴れの大空が思い浮かびます。一茶の俳句の中では、珍しくロマンチックな雰囲気が描かれている名句です。
風景にまつわる秋の俳句②正岡子規
砂の如き 雲流れゆく 朝の秋
正岡子規
出典:https://haiku-textbook.com/
明治時代、俳人・文学者・新聞記者などとして活躍した正岡子規。江戸時代の俳諧文化を「俳句」という形にした、日本を代表する有名文化人の一人です。そんな正岡子規の秋のおすすめの俳句がこちら。
朝の空を流れる雲を眺め、秋の訪れを感じる思いを詠んでいます。秋になると空を流れる雲の様子も、夏とは違ってくるもの。そんな秋の雲が静かにさらさらと流れる情景を、砂に例えた名句ですね。