2018年4月からスタートしたドラマ『あなたには帰る家がある』から、現代の女性が抱える生きづらさの正体を探る。
フィクションは世の中の写し鏡。
作品の中で生き辛そうな女性が描かれていれば、それは世の中にたくさんの生き辛い女性がいるということ。
今回取り上げるのは、4月からスタートしたTBS系金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』に登場するふたりの既婚女性、佐藤真弓(中谷美紀)と茄子田綾子(木村多江)です。
■ふたつの夫婦、それぞれの家庭が抱える問題
『あなたには帰る家がある』は山本文緒(やまもと・ふみお)さんが1994年に発表した同名小説が原作。2組の夫婦の日常に潜む不満や危機などを描いていきます。
今回のドラマ化にあたって、100人超の女性に「オンナの本音」をリサーチし、ちょっと笑えるような夫婦の“あるある”ネタが随所に織り込まれているのも話題を呼んでいます。
物語の大きなテーマになっているのは「不倫」。タイトルが沢田研二さんの不倫をテーマにした曲「LOVE(抱きしめたい)」の歌詞から採られていることに気づいた人は昭和歌謡通でしょう。
中谷美紀(なかたに・みき)さん演じる真弓は結婚して13年目の主婦。おおらかですが、気が強く、几帳面なのに家事に非協力的な夫・秀明(玉木宏)と衝突が絶えない毎日を送っています。娘の中学進学を機にかつての職場に復帰しますが、若手たちのお荷物扱い。さらに仕事で時間を取られることから、秀明との関係も悪化していきます。
原作で1歳だった娘が、ドラマでは13歳に変更されていますが、これは上手いと思います。娘の中学受験を乗り越えたところから第1話が始まっていますが、夫婦の気持ちと関わりが大きく異なるのが子どもの受験(特に小学校、中学校受験)なのです。その証拠に、中学校の入学式で涙を流す真弓に対して、秀明はまったくピンと来ていませんでした。両者の食い違いはこんなところにくっきりと表れています。
一方、木村多江(きむら・たえ)さん演じる綾子は、夫の茄子田太郎(ユースケ・サンタマリア)と彼の両親を含めた家族の世話をし続けてきた専業主婦。ひたすら従順な彼女は、陰湿な太郎に家庭内でパワハラ、モラハラを受け続けていました。
そんな折、綾子が秀明の勤める会社のモデルハウスにやってきます。惹かれ合ったふたりは深い仲に……。秀明の不審な動きに、真弓は不倫を疑って……というのが、第2話までのストーリーでした。
■「女に一体いくつの役割を押し付ける気だ?」多くの女性が抱える怒り
娘が志望校に進学した真弓の家庭や、新たに二世帯住宅を新築しようとする綾子の家庭は、外から見れば「幸せ」な部類に入るかもしれません。綾子は自分で言い聞かせるように「幸せです」と言っていました。
でも、真弓も綾子も決定的とも言える「生きづらさ」を抱えてしまっています。
夫の太郎からパワハラとモラハラを受け続けている綾子は、夫に「おい」の一言で身体を求められると、黙って下着を脱ぎ、そのまま抱かれます。明け方、台所で綾子は古びた鍋を磨き続けていました。これは自分の身体の汚れを洗い流したいという彼女の気持ちの表れでしょう。彼女は夫に抱かれたことを「汚れ」だと感じているのです。
綾子は家庭での鬱屈からの逃げ道を秀明に求めているようです。夫から逃げたいのに経済力もなく、家庭に縛られている綾子はどこにも逃げられない。せめて心だけでも逃げている、そんなように見えます。
一方、真弓は夫の秀明のことを愛しているのに、不満を全部口にしてしまうタイプ。だんだん秀明は家に寄り付かなくなり、ついに不倫に走ってしまいました。しかし、ここで妻を責めるのは筋違い。家事に非協力的なのも、不倫に走るのも、すべて夫が悪いのです。
第2話で取引先の太郎に呼び出されて酒を飲まされた真弓ですが(このこと自体がありえないハラスメントだと思います)、酔っ払って怒りを爆発させた彼女の言葉が多くの女性の共感を呼びました。
「女に一体いくつ役割押し付けるんだ? できるもんならそっちがやってみろ! あんたら男が仕事もして家事もやって、それで子どもの面倒も都合の良いときだけじゃなく全部見て! それで、他の女によそ見せず、妻に優しくしろ? 口説くときじゃなくて、用事がなくたってデートぐらい連れてけ! 妻をないがしろにするな! 妻の気持ちを少しぐらいわかれーっ!」
ハラスメントの権化である太郎が目を丸くするような迫力。
しかし、同じようなことを秀明に言っても事態は改善されないでしょう。気の強い真弓のことですから、これぐらいのことはすでに言ったことがあるのかもしれません。そして、そのたびに映画マニアの秀明は現実から目を背けて、フィクションの世界に逃げていくことになります(綾子との恋も彼にとってはフィクションの延長のようなものなのかも)。
■現代の主婦が抱える“古き良き“という名の生きづらさ
ふたりの生きづらは、そのまま現代の日本における家庭の「主婦」の生きづらさを表しています。“古き良き”家庭観に縛られて自由がなく、その上、夫からハラスメントを受け続ける綾子の生きづらさ。
家事も子育ても仕事もワンオペでこなさなければいけない上、夫に浮気されてしまう真弓の生きづらさ。真弓の言葉が喝采を集めたのは、彼女と同じような境遇の女性が世の中にたくさんいるという証拠です。
ドラマは悲惨さ一辺倒ではなく、どちらかというとユーモラスに描かれていますが、真弓と綾子の生きづらはどのように解消されていくのでしょうか? それとも解消されないのか。第3話以降、綾子が不倫モンスター化しているのが大変気がかりですが……。今後の展開を見守っていきたいと思います。
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