公務員の人事制度は給料や休暇、昇進制度など、民間企業のワーカーには少し縁遠い世界。産休や育休などの両立支援が手厚いだとか、男性の育休取得が民間より多いだとかいう話は聞こえてきますが、実際のところはどうなのでしょうか。
民間との違いは何か、そしてそこにはどんな意味があるのか。公務員の子育て関連制度と現状を学んでみましょう。
公務員の育児休業を規定する法律
民間企業の育児休業を規定する法律は、1992年に制定された育児・介護休業法(『育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』)です。一方、公務員の育児休業を規定する法律は、『国家公務員の育児休業等に関する法律』と『地方公務員の育児休業等に関する法律』の2つ。
育児・介護休業法と公務員の『育児休業等に関する法律』は、いずれも働き手の仕事の継続と福祉の増進を目指して、同時に整備されました。最近の法改正は2017年、期間の延長や範囲の拡大など、さらなる整備が進んでいます。
ここからは、主に国家公務員の場合について解説していきます。
公務員の育児休業規定
育休期間は3年。延長や短縮、再取得も可能
公務員の出産や育児に関する休業は、次のように定められています。
【産前休暇】出産予定日の6週間前から取得できる
【産後休暇】出産の翌日から8週間取得できる
【育児休業】子供が3歳になるまで取得できる
育休期間の増減については、次のとおり。
【延長】原則として1回の延長が可能
【短縮】法令上の規定はないが、託児先が見つかったなどの理由があれば、届け出ることによって短縮可能
【再度取得】原則として取得は1回限り。ただし①産後パパ育休(※次で詳しく説明)②特別の事情がある場合は再度の取得が可能
非常勤職員の場合、期間は原則子供が1歳になる日まで。また、取得するには勤務日などいくつかの要件があります。
男性公務員のための特別な制度
子供が3歳になるまでの育休は男性でも女性でも取得できますが、男性のみに定められた特別な休暇として、次の2つがあります。
【配偶者出産休暇】
配偶者の出産時に、付き添いなどのために取得できる休暇。入院などの日から出産後2週間までの間に、2日間まで取得できる。
【育児参加のための休暇】
配偶者の出産前後で、生まれた子やそのきょうだいの世話のために取得できる休暇。産前6週間から産後8週間の間に、5日間まで取得できる。
子供の生まれた日から57日間以内に男性が取る育休を「産後パパ育休」と呼びます。これを取った男性は特別の事情がなくとも、間をおいて再度育休を取得することが可能です。
公務員が受けられる育休中の手当
公務員共済組合による経済援助
産前産後と育休中は、公務員共済組合による手当金の支給など経済援助が受けられます。共済組合は、公務員の「健康保険」。民間企業では、出産手当金と出産育児一時金は健康保険から、育児休業給付金は雇用保険から給付されますが、同様に公務員では、共済組合から給付されるのです。
産前・産後休暇期間および育児休業期間は、申し出により共済掛金が免除されます。なお、産前産後の休暇は有給休暇であり給与が発生するため、手当金はありません。