「限定正社員」という働き方から見える可能性は?

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「限定正社員」とは

「限定正社員」の定義は明確ではありませんが、2012年の厚生労働省『「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書』では、次のように整理しています。

① 無期の労働契約である点で有期労働契約の非正社員とは異なる
② 配属先の事業所、活用業務が限定されている、残業がない、短時間勤務であるなど、非正社員の働き方と共通する点がある

雇用区分として実際に企業で採用されているのは、「職種限定」「勤務地限定」「労働時間限定」などで、限定される事項が複数の場合もあります。

「限定正社員」の4類型

このように、限定正社員は「多様な働き方」を実現できるとされながらも、企業ごとに導入の仕方がさまざまで実体が曖昧なものでした。

労働政策研究報告書No.185『働き方の二極化と正社員-JILPTアンケート調査二次分析結果-』(労働政策研究・研修機構、2016年)は、分析の結果、次の4つの類型が混在しているとしています。

A.周辺的な労働を担う正社員
① 「事務職」タイプ
もともと正社員として雇用されているが管理職になる可能性は低い。女性割合が高く、「一般職」に近い働き方。

② 「生産・技能職」タイプ
非正社員からの転換割合が高い。男性割合が高く、製造業などの「労務職」に近い働き方。

B. 基幹的な労働を担う正社員
③ 「営業職」タイプ
通常の正社員からの転換割合が高く、基幹的正社員に時間や勤務地など何らかの制約が生じた場合に導入されているもの。男性比率の方が高く、管理職への昇進もある。

C.周辺的な労働から基幹的な労働へ移動する中間地点にある正社員
④「接客・サービス職」タイプ
非正社員から正社員への転換割合も管理職割合も高い。飲食店の接客・調理や介護職など、パート・アルバイトから同じ職種の正社員に転換し、その後店長や施設長など管理的地位に就くような働き方。

表面上の区分よりも、企業が実際にどのように活用しているかに注目する必要があることが分かります。

限定正社員のメリット・デメリット、仕事の満足度

前述の報告書では、さらに限定正社員自身による自分の仕事への評価も分析しました。すると、次のようなことが分かりました。

① 仕事の裁量度や労働時間、給与などは、限定正社員は通常の正社員と非正社員の中間に位置する。ただし、労働時間や給与は通常の正社員の水準に近い。
② 「一般事務職」タイプの限定正社員は、ワークライフバランスへの満足度が高い。一方、「生産・技能職」タイプや「営業職」タイプは、勤務地や労働時間におけるメリットがさほど見いだせず満足度が低い。
③ 非正社員から限定正社員に移行した人、正社員から限定正社員に移行した人の満足度は、初めから限定正社員だった人より高い。選択の自発性と就業形態の変更可能性が、仕事の満足度にプラスに働く可能性が高い。

「限定正社員」という雇用区分は、非正規雇用から正規雇用へのステップアップにも、正社員のワークライフバランスの実現や働き方の多様化にもどちらにもつながり得ます。あなたやパートナーの現在の働き方と比較してメリットが大きいようなら、限定正社員への転換や転職を考えてみてもいいのかもしれません。

これからの私たちは「無限定」には働けない

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結婚して家庭を持ったとき、男性も女性も仕事において何らかの制約を抱えます。介護と仕事の両立も問題になっていますし、研究報告書『育児・介護と職業キャリア-女性活躍と男性の家庭生活-』は、既婚者よりも制約が少ないと見なされて過重労働になりやすい未婚者の問題も指摘しています。

パートナーの「無限定」な働き方を支えるには、一方が大幅に「限定的」に働かざるを得ません。そうすると今度は、その「限定的」な働き方をカバーするために誰かが「無限定」に働くことになります。男性も女性も仕事を持つ現代、私たちはもう「無限定」には働けないところにきているのかもしれません。

これまで夫婦の働き方を両立できないときには、退職や転職を含め、妻の方が仕事を調整することが普通でした。しかし、家庭を顧みることのできない働き方に「No」を出す若い父親たちも増えています。

家庭とキャリア、夫婦のどちらかが一方を諦めるのではなく、両立できる道を探っていきましょう。それがかなうような転職や配置転換を個人が実現していくことで、それぞれの幸せのみならず、やがてはそれが企業を変え、みんなが働きやすい社会へとつながっていくのではないでしょうか。既婚者も未婚者も、子供を持つ人も持たない人も。

文・菊池とおこ/DAILY ANDS

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