環境破壊や貧困、差別といった社会問題の解決を支援する事業に投資することで、多様な利益を創出することを目的とする「ソーシャル・インベストメント(SI)」が超富裕層間で活発化している。
フランスの国際コンサルティング会社、キャップジェミニのデータによると、2014年から2015年にかけて超富裕層の投資の31%がSIとのことだ。中でも40歳以下の超富裕層の関心が高く、すでに約40%がSIを行っているほか、60%が「今後2年間にわたり、SIへの投資額を増やす」意向を示している。
投資先としては、日本を除くアジア太平洋域へのSI活動が伸びを見せており、世界平均を上回る36.3%が投じられている。
ソーシャル・インベストメントとは?
SIとは企業の社会的責任(CSR)に基づくもので、クリーンエネルギーや正規貿易額など、社会に貢献する事業への投資を指し、社会的責任投資(Social Responsibility Investment)と同等の意味合いで、Social Return On Investment、Social Impact Investmentなど、様々な名称で認識されている。
投資から一方的な利益を得るだけではなく、社会に何らかの恩恵をもたらすという発想で、幅広い層の投資家から共感を集めている。
これらの投資家はSIへの積極的な資金援助、あるいはSIではない企業や活動への投資を拒絶することで、よりよい社会の構築を目標としている。現在世界中で投じられているSIの41.6%は、上場企業の公開、未公開株だ。
欧米では政府や大手企業が全面的に支援
CSRが盛んな欧米ではすでに広く浸透しているが、日本ではまだ浸透していない状況だ。
モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスといった国際大手企業が継続的にSIを支援し、投資家の意識向上に貢献しているほか、一個人、一企業という枠組みを超え、各国の政府もSIに乗りだしている。
一例をあげると、昨年8月に英国政府が中心となって設立した「Global Social Impact Steering Group(GSG)」では、米国、日本、カナダ、フランスといった主要13カ国に加え、EUを含む世界各国の政府や機関が、ともにSI活動の促進に励んでいる。
社会貢献で実績をあげている、または実績をあげようとしている企業への投資が一般的だ。環境保護活動に重点を置いたグリーン債券(Green Bond)、非営利で発行されるコミュニティー債券などが人気で、目標を達成した場合にのみリターンが発生するソーシャル・インパクト債券には、SI投資の13.8%が流れている。
熱心な超富裕層の中には、単に資金を投資するだけではなく、積極的に自らの支援プロジェクトを立ち上げ、活動する姿も目につく。