5月31日、夫と離婚協議に入っていることを発表したタレントの熊田曜子(39歳)。夫のDVを主張する熊田に対し、夫は熊田の不貞行為を主張。双方の言い分は真っ向から対立しており、事態はドロ沼化しています。

DVや不貞行為が事実だったのかは現時点で判断できませんが、一般的にDV・モラハラ夫との離婚は難航するケースも多いようです。

 妻から裁判所への離婚申し立ては、令和元年で4万4040件。うち、理由の3位は「精神的に虐待する」25.2%、4位は「暴力をふるう」20.5%です(令和元年・司法統計)。4〜5人に一人はモラハラ・DVが理由で、調停・裁判にもつれ込んでいるわけです(ちなみに、1位は「性格が合わない」、2位は「生活費を渡さない」)。

 実際に、離婚協議・調停で途方にくれている女性たちに話を聞きました。

「目障りだから消えろ」と叫ぶ夫から逃げたものの

やよいさん(仮名・35歳)は、夫(38歳)と離婚調停中です。子どもが生まれてしばらく経った頃から、夫が徐々に“モラハラ夫”になっていったといいます。

「モラハラは、時々飛び出す暴言から始まりました。夫のストレスがたまっていると、些細なことで『お前バカじゃねえの?』『目障りだから消えろ!』と罵られるんです。結婚前の夫は優しくて穏やかな人だったので『仕事で疲れているんだな』『私の言い方が悪かったかも』なんて思い、しばらくは耐えていましたが……ある日ヒートアップした夫に暴力を振るわれ、近所の人に通報される騒ぎになったんです。さすがに身の危険を感じて、子どもと一緒に家を出ました」

 やよいさんはその後、夫と離婚に向けた協議を進めようとしますが、意見は真っ向から対立。話はまとまらず、離婚調停にいたります。

離婚調停で、耳を疑う発言が飛び出した

 夫婦間(弁護士が入る場合も)の合意で離婚することを協議離婚といいますが、そこで話がまとまらない場合は離婚調停に進むこととなります。

熊田曜子の離婚“ドロ沼化”に「DV夫との離婚は苦行」と共感する妻たち
(画像=『女子SPA!』より引用)

家庭裁判所でおこなわれる離婚調停では、夫婦の間に男女各1名の「調停委員」が入り、中立的な第三者として双方の話を聞きます。そして、離婚条件などを当事者同士が合意できるようにまとめるのです。裁判官と違い、調停委員は「原因は夫だ」「妻が悪い」といった夫婦の主張をジャッジすることはできません。あくまで両者の話を聞いて条件などを整理することが役目とされています。

 そんな“中立”のはずの調停委員ですが――調停が始まり、やよいさんは夫からこれまで受けたモラハラやDVが原因で別居にいたったこと、離婚を考えていることを主張しました。ところが後日、調停委員の言葉に耳を疑います。

「女性の調停委員から、『過去のことは過去のこととして、いい加減、夫さんを許してあげたら?』と諭(さと)されて……ひっくり返りそうになりました」

涙ぐみながら「妻と子どもの幸せを考えています」と夫

 調停の場では、妻と夫が交代で個室に入って調査委員と会い、それぞれの言い分を伝えます。

「聞けば、夫は調停委員に対してまず『子どもに会いたいです』と涙ぐみながら訴えたそうです。『たしかに僕には至らないところがあって妻に誤解を与えたかもしれませんが、DVは断じてしていません。一緒に暮らしていた頃も今も変わらず、いつでも妻と子どもの幸せを第一に考えています』といった内容を話したらしいんですよ」

熊田曜子の離婚“ドロ沼化”に「DV夫との離婚は苦行」と共感する妻たち
(画像=『女子SPA!』より引用)

やよいさんが調停の場で感情的にならないよう事実ベースで話していたのに対し、事実をねじ曲げながら情に訴えた夫。そんなやり口も夫の言い分も、おかしなことだらけでした。

「同居中、暴言を吐いたり物を投げたり壊したりする夫に何度やめて欲しいと訴えても、夫は反省どころか『事実を言って何が悪いんだ』『いらないものを処分しているだけ』と開き直るばかりでした。反省や謝罪の言葉なんて一切なかったですし、子どもを連れて家を出て行ってからも、私や子どもの生活を心配する連絡はなかったんですよ。そもそも、DVで警察沙汰にもなっていますからね。夫が調停委員に言っていることは、事実とかけ離れています」

夫へ肩入れする調停委員に、妻の話は届かない

 もともと、やよいさんの夫は外面(そとづら)がとてもよく、職場や仲間の間では“優しい好青年”と評判も良いようです。

「実際に、夫のDV・モラハラを私の両親や共通の知人に相談したときも、『あの人がそんなことするの!?』と驚かれましたから。夫は家の外では物腰も柔らかく人当たりもいいです。わたし自身も夫の優しいところに惹かれて結婚したので、まさかDVを受けるとは夢にも思いませんでした」

 そんな夫のひとたらし術が調停でも功を奏したようで、調停委員は回を追うごとにどんどん夫に肩入れしていきます。

熊田曜子の離婚“ドロ沼化”に「DV夫との離婚は苦行」と共感する妻たち
(画像=『女子SPA!』より引用)

「私は夫のDV・モラハラについて事実ベースで主張してきましたが、それでも調停委員は夫の言葉を信じ切っているようでした。『売り言葉に買い言葉っていうこともある』『夫さんはあんなに謝っているのに、あなたは一体なにがしたいの?』『過去にこだわっているのはあなただけですよ?』となぜか私が説教され、まるで“わがままで我慢できない妻”のような扱いをされました」

 夫の主張は事実とかけ離れていると調停委員たちにいくら訴えても、届かなかった――やよいさんは悔しそうに話します。彼女は、第三者がDVやモラハラ被害者を傷つけるこうした状況について、「言うなれば“セカンドモラハラ”ですね」と表現していました。

 調停委員には本当に色々なタイプがいて、対立する夫婦の言い分を上手にまとめるよう誘導してくれるケースもあれば、やよいさんのようなケースも残念ながらあるようです。

何でも「証拠ありますか?」神経質タイプのモラハラ夫

 もう一人、別のケースを紹介しましょう。ちかさん(仮名・39歳)は、神経質なタイプのモラハラ夫と離婚協議中です。新婚時代は楽しい期間もあったそうですが、この夫もまた途中で変わってしまったとか。

熊田曜子の離婚“ドロ沼化”に「DV夫との離婚は苦行」と共感する妻たち
(画像=『女子SPA!』より引用)

「同居中は、家が少しでも夫の思い通りに片付いていなかったり、夕食のメニューが気に入らなかったりすると、ネチネチ文句を言われやり直しをさせられました。週末や長期休暇中に機嫌が悪くなると、家族との約束も何もかも無視して丸一日家を出て行ったりと、やりたい放題。あとで知ったのですが、そんな日は出会い系アプリを使って遊んでいたみたいです。

 夫は家事も育児も一切しないのに、共働きで生活費はきっちり折半。私に与えるものといえば文句と不快感だけ。今思えば結婚期間の後半、私にとって夫の存在は、“負担”でしかありませんでした」

 そんなちかさんも、離婚調停でかなり参っている様子。

「私が協議内容に関わる書類を提出するたびに、調停委員さんに『それおかしいですよね? 証拠ありますか? その数字はどのように算出したのですか?』っていちいち食いついているようなんです。彼はもともと細かい性格だったのである程度の覚悟はしていましたが……想像以上。『どんなに些細なことでも、妻のミスは絶対に見逃さない』という夫の執念すら感じます」

 ちなみに数年前、ちかさんが妊娠して夫に家の中でタバコを吸わないよう伝えたときも、「は? そういうのはエビデンス出してから言ってくれる?」と答えたそう。ゾッとしますね。

養育費の金額を決めるのに1年かかった

 本題に入らないまま、夫の些細な数字の指摘や蒸し返しに対応し、ちかさんに落ち度がないことを説明するだけで、調停(期日)の一回分が終わることも多々あるそうです。平日の日中、毎回仕事を休んで裁判所に行っては、疲労感だけを土産に帰ることが続きました。

熊田曜子の離婚“ドロ沼化”に「DV夫との離婚は苦行」と共感する妻たち
(画像=『女子SPA!』より引用)

「養育費の金額を決めるだけで、1年かかりました。本来、お互いの源泉徴収票を提出して収入を証明すれば『養育費算定表』をもとにほぼ自動的に決まるのが普通だと思うんですが……私の収入について『一昨年の分も出せ』『やっぱり過去3年分を見ないと納得できない』『この年は育児休暇をとっていたから無効だ』『生活費の明細も見ないと納得できない』など、1回1回何かしら要求してくるんです。無理なものは突っぱねましたけど、それでもものすごい日数を費やしました。 お金のこと以外にも、とにかく挙げるのもバカバカしいくらい、無意味な要求ばかり続いています。ちなみにこれまで、私の提出した書類に不備があったことは結局一度もなかったんですよ?」

 もはや単なる嫌がらせなのか、本当に気になって追及しているのかは、夫本人にしかわかりません。いえ、夫本人も、自分が何をやっているのかわかっていないのかも。

「これからまだ、親権や財産分与のことなど決めることが盛りだくさんなんですけど、何年かかることか……。調停委員さんからは、これ以上不毛なやりとりが続くと調停不成立になって離婚裁判に移行することもあると言われやきもきしています。  財産分与の話になったらきっと、私名義のカードで家族分貯めた飛行機のマイレージや、ショッピングもポイントなんかも分担しろと言ってくるでしょうね。それに近いメールも来ていましたから」

 このように何かと困難が多い、DV・モラハラ夫との離婚。最初に登場したやよいさんに「苦行ですね……」と言うと、「でも一緒に暮らしていたときは、365日が苦行でしたから」という返事がかえってきました。

 皆さんの協議の少しでも早い決着と、晴れやかな生活の到来を祈るばかりです。

<取材・文/瀧戸詠未、女子SPA!編集部> 瀧戸詠未 ライター/編集者。趣味は食べ歩き・飲み歩き。