「もしもし?」

日曜日の夜に電話がかかってきました。よく通っている美容院の店長からです。

「ちょっと相談があるのですが、お時間は大丈夫ですか?」そう話し始めたところーー店長のお母様が、銀行から定期預金が満期になったとの連絡を受け、窓口に呼ばれたそうです。そこで、銀行員から「一時払いの外貨建て変額年金保険」を勧められ、入ってしまったということでした。

「これはヤバイ保険だ!」

その美容院で、髪を切ってもらいながら、保険について話す機会はたくさんありました。ですから、店長も「これはヤバイ保険だ!」とピンときました。で、解約をしたいということで、私に相談の電話をしたわけです。幸い、契約してから6日目なので、クーリングオフが可能です。

クーリングオフは契約日から8日以内です。しかし、ギリギリに手続きをすると何かあったときに困ると思い、「明日にでも解約の手続きをした方がよいでしょう」とアドバイスをしました。「解約の意思を示すことで、手続きは特に問題はないと思います」とお伝えしました。

銀行が儲かる商品は、私たちが損をする商品

契約した保険は、どういう内容ですか? と店長に聞いたところ、オーストラリアドル(豪ドル)の一時払い変額個人年金保険ということでした。

ああっ、やはりという感じですね。

豪ドルの一時払い変額個人年金保険は、銀行で力を入れている主力の保険商品です。なぜ、これが銀行の一押しかというと「銀行が得る手数料」が大きいから。つまり銀行が儲かる商品だからです。しかも、手数料は開示されていません。

これは「ボッタクリ」ではないですか?

豪ドルの一時払い変額個人年金保険は、お金を「定額部分」と「変額部分」の2つに分けたものです。しかし、繰り返しますが銀行が受け取る手数料は開示されていません。この点について、金融庁の森信親長官が『文藝春秋』5月号で言及して話題になりました。

この商品の特徴は「外貨での元本保証」です。つまり、「定額部分」は安定運用でオーストラリア国債を使って1%で運用します。1豪ドル=80円とした場合、80万円を払い込んで1万豪ドルを運用してもらいます。外貨での元本保証なので10年後に1万豪ドルは必ず戻ることが約束されます。それ以外に変額部分で運用した利益を上乗せする……というものです。

問題は銀行が得る手数料です。オーストラリア国債の利回りは年2.5%。それを保険商品では年1.0%で運用します。つまり、1.5%のサヤ抜きです。10年間運用すると15%となります。これを「ボッタクリ」と呼ばずして、なんと呼ぶのでしょう?

15%の分け前を、保険会社と銀行で折半をすると、それぞれ7%ほどの利益になりますね。つまり、80万円の契約をすると、銀行は5万6000円の手数料を得る計算です。

豪ドルの一時払い変額個人年金保険を買うよりも、「オーストラリア国債」を直接買った方が、まったくお得ですよね。森長官がこの事実を契約者に公開しないのを問題視されていましたが、私も同感です。

先週、大手銀行5社が「年明けに保険手数料の開示を自主的に行う」と報じられましたが、今後すべての銀行において手数料が開示され、透明化が徹底されることが求められます。