洞窟酒蔵、と聞いて、みなさんはどんなものを想像するでしょうか?洞窟で酒造りをしているの?なんだか怖そう・・・?など、さまざまな想像がめぐることでしょう。那須にあるこの酒蔵の実態をご紹介します。
洞窟酒蔵で長期熟成酒造りに取り組む島崎酒造
栃木県那須烏山市にある島崎酒造は、嘉永(1849)2年創業。2代目熊吉の頃に、200年余りの歴史を持つ酒蔵庫を譲り受ける形で、現在の場所に移ってきたそうです。熊吉が無類の相撲好きだったことで「東力士」と名付けられた主力銘柄。現在、酒好きの間では「洞窟酒蔵」としてもその名を轟かせています。
1970年から大吟醸酒を中心とした長期熟成酒製造への取り組みを開始したという島崎酒造。長期熟成酒とは、酒造りをした後に、熟成させたお酒のことをいいます。島崎酒造では、日本でも珍しい洞窟を利用した日本酒貯蔵に取り組んでいます。
この洞窟酒蔵、実は電話1本で、一般の人でも見学ができるのです(土日祝、GW、お盆などは洞窟酒蔵開放日となっています。開放日以外は、前日までに予約が必要です)。
洞窟酒蔵、いざ探検!
予約時に集合場所として指定されたのは、洞窟酒蔵を持つ島崎酒造の醸造所兼販売店。そこから車で5分ほどの場所へ、蔵の人が案内してくれます。
木に囲まれ、なんとなく怖い雰囲気を醸し出す洞窟酒蔵の看板。見逃してしまいそうな外観は、案内がなければ道に迷いそうです。
酒蔵を思わせる建物はなく、数台の駐車スペースがあるだけ。それもそのはず。入口は、岩盤の上にこんもりと木が覆う、その一角にありました。
人ひとりが通れるほどの狭い入口。中は真っ暗です。冒険心に火を付けながら、歩を進めます。
第二次世界大戦の遺物に貯蔵される大量のお酒
実はこの洞窟、第二次世界大戦末期に戦車を製造するためにつくられた地下工場跡なのだとか。しかし、実際にはこの地下工場では戦車を製造することなく終戦を迎えたのだそうです。
「洞窟酒蔵」といっても、酒蔵内で酒を醸造しているのではなく、主な機能は酒の貯蔵。年間平均10度前後、日光がまったく差し込まない真っ暗な環境は、熟成酒を造り出すのにこれ以上ない最高の環境なのだそうです。
洞窟の大きさは約12,000平方メートルの山1つ分で、野球場のグラウンドほどの広さとのこと。その中に、縦100メートルの通路が8本、横60メートルの通路が5本通っており、一升瓶で20万本の貯蔵能力があるのだとか。
一般のお客様からのお酒お預かりシステムもあり、5年~最大20年まで洞窟内に貯蔵することができるのだそうです。現在は10万本ほどが貯蔵されており、お客様のお名前やお子様へのメッセージが書かれた貴重なお酒がズラリと並んでいました。