加入できるのは要件を満たす人だけ

厚生年金保険の加入対象は国籍・性別を問わず70歳未満で、事業所で働く対価としてお金を受け取っている人である。会社勤めのサラリーマン、OLはその典型例だ。保険の適用は事業所単位で行われ、株式会社など法人の事業所、もしくは従業員が常に5人以上いる個人の事業所(農林漁業、サービス業などを除く)は、厚生年金保険の適用事業所となる。

法人事業所の場合、事業主が1人で運営していても加入は強制となる。個人の事業所の場合、上記の条件に当てはまらない事業所でも、従業員の半数以上が適用に同意すれば適用事業所になる。

また保険適用されるのは正社員だけではない。パートやアルバイトは、1週間の所定労働時間及び1カ月の所定労働日数、つまり予め働くことが決められた時間と日数が同様の仕事をする社員の4分の3以上であれば適用対象となる。

もしそれに満たなかったとしても、当人が学生でなく、週の所定労働時間が20時間以上、月の賃金が8万8000円以上で、1年以上の雇用期間が見込まれ、常時501人以上が働いている企業に勤めていれば同じく対象となる。なお、500人以下の企業に関しても、2017年4月1日以降、社会保険加入について労使で合意がなされていれば適用されることになった。

比較的短い期間のみ働く人、例えば日々雇われている人や2か月以内の期間だけ使用される人、6か月以内の臨時的事業の事業所に使用される人、所在地が一定しない事業所に使用される人は対象にならない。

保険料の決め方と支払い方法

厚生年金保険料は標準報酬月額、標準賞与額をもとに決められる。前者は基本給に残業手当などを含めた給与額をもとに算出し、状況に応じて改定される。後者はボーナスや賞与など、年に3回以下、一時的に支給される150万円を上限とする金銭であり、製品といった現物も含む。年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象となる。

それぞれに18.3%の保険料率が掛けられ、算出額を合計した金額が保険料となる。ただ保険料の支払いに際しては会社側と労働者側が半分ずつ、9.15%ずつ負担する労使折半という形がとられているため、全額支払うことはない。

保険料は労働者に給与が渡る前に会社側によって天引きされており、会社がまとめて年金事務所に納める。産前産後休業期間中、育児休業等期間中は申し出れば会社と労働者ともに保険料負担が免除される。

他方、保険料は国民年金との違いが顕著に現れる部分でもある。国民年金では収入や所得に関わらず定額だが、厚生年金保険では状況により変わる標準報酬月額に定率を掛けた額になるという点が異なる。

加えて国民年金では保険料を全額、被保険者が直接支払うのに比べ、厚生年金保険では直接支払うことなく、負担も半額となる点も異なる。ちなみに厚生年金保険加入者である会社員などに扶養されている第3号被保険者には保険料負担がない。

厚生年金保険料は実際いくら?

厚生年金保険料の負担額はどれぐらいになるのだろうか。

厚生年金保険の適用事業所に勤める会社員A氏が1年に支払う厚生年金保険料額を確認してみる。A氏が受け取る月給(残業手当など込み)は40万円、ボーナス(賞与)は80万円で夏冬2回とし、標準報酬月額と標準賞与額はこの金額から判断する。

標準報酬月額は、月々の給与を一定の幅で等級として分け、その等級ごとに標準報酬月額を設定した厚生年金保険料額表(2017年9月~)から導き出す。40万円の給与では等級24、報酬月額39万5000円~42万5000円の範囲に相当するので、等級24に設定された41万円が標準報酬月額である。41万円にA負担分の9.15%を掛けると3万7515円、1年分なら12を掛けて45万180円であり、これが月々の給与に対するA氏が負担する保険料になる。

標準賞与額は税引き前の賞与から1000円未満の端数を切り捨てた額で、今回は80万円のままとする。80万円にも9.15%を掛けると7万3200円、2回分では14万6400円となり、これがボーナスに対するA氏が負担する保険料だ。それらを足した額、59万6580円が1年間でA氏が支払う厚生年金保険料となる。

参考までに国民年金第1号被保険者のケースも計算してみる。2017年4月~2018年3月の月額保険料である1万6490円をもとにすると、1年分の支払い額は19万7880円となる。