女子テニスの大坂なおみ選手(23)が全仏オープンの記者会見を拒否することを表明、2回戦を前に大会棄権を発表したことが世界中で議論を呼んでいます。彼女が住んでいるアメリカをはじめ欧米では、どのように受け止められているのでしょうか?
ウィル・スミスらが、大坂選手に支持の声
女子テニスのセリーナ・ウィリアムス選手は「私も同じような状況に立たされたことがありどんな気持ちなのかを知っているから、彼女をハグしてあげたい」と大坂選手を激励。
俳優のウィル・スミスは「なおみ、君は正しい。彼らが間違っている。俺は君の味方だ」とサイン入りの手書きメッセージをインスタグラムに投稿し彼女を支持するなど、多くのアスリート仲間やセレブリティーが大坂選手をサポートする声を挙げています。
筆者が米在住の友人たちに聞いてみても、「さすがなおみ!勇気ある行動!」「今まで当たり前に消費されていたアスリートのメンタル面のケアが、大きく変わるかもしれない」という声が、主に働くアメリカ人女性たちから寄せられました。
“心の健康”を理由に大坂選手が記者会見に応じないとツイートした後に「4大大会からの追放もあり得る」と大会主催者が発表したことについては、単なる「Threat(脅し)」と認識しているようでした。
他人事ではない?!意外とノーと言えない欧米人
US版『エル ELLE』は、大坂選手がマイノリティーの立場であることに注目し、とりわけBLM(ブラック・ライブズ・マター)ムーブメントが盛り上がり、アジア系住民に対するヘイトクライムが横行しているアメリカで、「若い黒人の日系女性が『ノー』と言うのは並大抵の覚悟ではできないこと」とその勇気を賞賛しています。
日本に比べてカウンセリングが一般的な欧米でも、“心の健康”という見えない問題を理由に組織からの要求を断ることや、現場を離れて一定の休息期間を設ける決断をするのは、かなりハードルの高いこと。悲しいかな、多くの組織が利益のために関係者が全身全霊を捧げることを要求する文化はまだ残っているのです。
そのため、US版『ハフィントンポスト Huffington Post』など多くの欧米メディアが今回の騒動を社会問題として深く掘り下げ、「同じような状況で悩んでいる全ての人に捧げる」「この問題はスポーツや芸能の世界だけの問題ではない」という記事を投稿しています。
ミュージシャンのピンクは大坂選手を激励するツイートの後、自身の子どもたちに向けて 「彼女(なおみ)は子どもたちに見せたいロールモデル。よく聞くのよベイビー、あなたたちは自分の技術を磨くために懸命になるでしょう。でもそれは自分の許容範囲で行いなさい。もしあなたを理解しない人がいたら無視したって構わない」 と、「断る勇気」「逃げる勇気」の大切さを訴えるツイートを投稿しています。
「プロなら強いメンタルを」欧米でもマッチョな意見
好意的な意見が主流な一方で、大坂選手のSNSには「トップアスリートには何を言われても折れないメンタルが必要」「プロなら記者会見も仕事のうち」「メディアへの対応より、自分の健康を選ぶなら引退した方がいい」といった批判コメントも。
アスリートは自身がプレイするスポーツを宣伝しその存在感を高め、広告と放送の収益を上げることでスポーツに還元することができるという考え方は、案外欧米でもいまだに根強くあるようです。
元アメフト選手で、自身も過去に試合後の会見を拒否し罰金を払った経験を持つブレット・ファーブはポッドキャストで、「我々アスリートはメディアと対話すべきだ。絶対に話せとは言わない。罰金を払う選択肢もある」という持論を展開していたと『インサイダー Insider』が紹介。
この時までアメリカンフットボールリーグ(NFL)にはメディア対応へのルールはなかったそうですが、ファーブの騒動を機に「会見拒否した場合は罰金を科す」という1文が規約に追加されたといいます。
ここで興味深い例をひとつ。2015年、NFLシアトルシーホークスのマーション・リンチが試合後の記者会見で全ての質問に対して一言一句違わない答えを繰り返したというのは、アメリカのスポーツファンの間では有名な話。彼は何を聞かれても、「私がここにいるのは罰金を払わずに済むからです」という皮肉で返したというのです。
まさに誰得の意味のない会見です。そこまでしても嫌がる選手をメディアの前に引きずり出す必要があるのでしょうか?
「メディアはアスリートの能力のために存在すべき」
ちなみに、ナイキなど大坂選手と契約を結ぶスポンサー各社は、次々と彼女をサポートすることを表明。『フォーブス Forbes』は、今回の言動がスポンサーのイメージダウンに繋がることは全くないと指摘しています
英『インディペンデント Independent』は、メディアがスポーツを促進する役目を担っていることを認めた上で、「価値があるのはアスリートの発言ではなく、プレイの質だ」として「メディアに答えるのもアスリートの仕事」という批判的な意見を牽制(けんせい)。スポーツとメディアの関係を例え話を交えて定義しました。
「記者会見に応じなくても私たちは大坂のテニスを見たいと思うでしょう。想像してみてください。メディアに優しく冗談話は得意だが、テニスが下手な選手を。そんなアスリートにメディアが注目することはあり得ません。メディアはアスリートの能力のために存在すべきであり、その逆ではありません」
皆さんは今回の一件、どうご覧になっていますか?
Sourses:『ELLE』『Huffington Post』『InsiderForbes』『Independent』
<文/橘エコ> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】他人事ではない 橘エコ アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。
提供・女子SPA!
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