炭治郎たちは、転職できないゆえに「理想の新卒」

 

そして、主人公の炭治郎たちも理想の新卒でした。素直、柔軟、愚直。この3つの要素を持っている人材は、大抵の職場で伸びます。才能を性格と努力で乗り越えられる社員こそが、会社の全体レベルを上げるものです。才能依存では、その社員以外にスキルを適用できないですから……。

 

さらに、炭治郎たちは転職できない人材でした。鬼殺隊がいくつかあれば、よりよい職場を求めて柱の幾人かや、炭治郎たちも転職を考えたでしょう。

 

考えてみれば、あんなに活躍しているのにお付きの者もおらず、移動手段が徒歩って何事? 馬くらい与えたら? ……と思うわけです。柱すら、徒歩移動が主体っぽいです。おいおい、企業の幹部社員だってビジネスクラスくらい乗るでしょうよ。

 

というわけで、煉獄さんを含めた「柱」や炭治郎たち優秀な新卒を鬼殺隊が維持できていたのは、ひとえに転職が不可能だったことと、偶然善人が多い職場だったことだけが理由です。

 

不死川さんや伊黒さんなど、他の柱の発言を見ていると、とても部下へのマネジメント研修があったとは思えないんですよね。偶然、「ぶっきらぼうでも根は善人」の幹部が多かっただけで、鬼殺しが楽しいサイコパスなんかが幹部にいたら、離職率は甚大なことになっていたはずですし……。

 

そう考えると、鬼殺隊も1000年くらいある組織にしては、組織設計が属人的で脆弱に見えて仕方がないのです。

 

(繰り返しますが、人権意識もへったくれもない時代だから当然のことですし、だからといってワニ先生がどうこう、という話題ではないです。吾峠呼世晴先生が最高の作品を世に生み出してくれたことに、いちファンとして感涙です)

 

なぜライバルである鬼たちは倒されていくのか

『鬼滅の刃』では、基本的に鬼が倒されていきます。そりゃあ、主人公の敵だから当然です。ですが、なぜ敵が負けるのか。この辺はアニメの「無惨様・パワハラ会議」などで有名になりました。

 

 

アニメの終盤、敵のボスである無惨は部下を大量に間引きます。あまりに戦績が及ばないので、イラっとしての犯行と思われますが、あのとき部下をもう少し生かしていれば、鬼殺隊の戦力は大幅に削れたのではないか……とツッコんだ視聴者も多かったはず。

 

そして鬼殺隊に負けず劣らず、鬼の組織もブラックです。システム上は鬼殺隊より洗練されたブラック企業で、まず労働組合を作れないように、集団行動を禁止されています。さらに給与はボスの血なので、金銭を与えなくても現物支給で何とかできます。

 

そして無惨はジャンプの敵としては珍しく、ちょっと無能です。「パワハラ無能上司がいるブラック企業」VS「善人の聡明なトップが集うブラック企業」では、後者が営業成績を上げるのも当然のことでしょう。

 

ビジョンを持たないゆえに高い鬼の離職率

何より、ブラック企業の離職率を下げるのは「ビジョンや、やりがい」です。これが社是になっていれば、ちょっと残業が多かろうが、労災が起きようが人材はついてきます。このビジョンが鬼殺隊にはハッキリありますが、鬼の組織にはありませんでした。

 

そのため、鬼のグループは珠代様をはじめとする離職者があとを絶たず、組織として崩壊しやすいのです。

 

視座の高さ、ビジョンの重要性、そして属人的な価値など、大事なことを多数教えてくれた『鬼滅の刃』は、こうして多数の会社員の心をえぐり取っていったに違いありません。願わくばみなさんが産屋敷家や柱のような、良き上司にめぐまれますことを、最後にお祈り申し上げます。

 

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