踏み出す勇気がないなら、自分に問いを投げかけ続ける

ZUU CAREERの佐藤さん(写真=筆者撮影)

くすい: ここで、来場者からあらかじめいただいた質問に皆さんにお答えいただきたいと思います。パネルディスカッションには株式会社ZUUのキャリア・コンサルタント佐藤さんにも登壇していただきたいと思います。佐藤さんは、金融業界を専門に転職支援をされています。

まず、「何かしら行動を起こしたいけど、一歩踏み出す勇気や自信が持てない」という方にアドバイスをお願いしたいのですが。

佐藤さん(以下、佐藤): 転職活動は「面接→採用」というプロセスだけではありません。いろいろな人から話を聞き、ご自身の価値観を整理する時間を作れることも転職活動のメリットだと思います。動いてみた結果「やっぱり現職が良いな」と気づけたのであれば、モヤモヤしながら現職で働き続けるよりもよっぽど納得感は高くなりますし。その意味で、このイベントに足を運ばれていることも、ご自身が納得してこれから過ごすための判断基準を作る、一つの行動だと言えるのではないでしょうか。

最近は、世の中も変わってきています。いきなり転職するのは不安かもしれませんが、副業 OK の会社も増えていますし、仕事というかたちではなくてもボランティアなど、今の仕事を続けながら、並行して他のことをやるのもいいと思います。仕事と並行しながらであれば、ちょっと違ったなと思っても方向転換もしやすいです。そうすると気楽な気持ちで行動を起こせたり、チャレンジしたりできるのではないかと思っています。

大山: 私は、一歩踏み出せないときは踏み出すときではないと思うんですよね。私が「アフリカで起業しました」というと、ぶっ飛んでいると思われがちですが、10年前は全然そんなことなくって、今の自分は想像していませんでした。ただ、ずっと変わらないスタンスは「目の前の仕事を一生懸命やること」。一生懸命仕事をしていたからこそ新天地での仕事に生かせるんです。

「こんな仕事をしていて大丈夫かな」と思うこともあるかもしれませんが、長い目でみると絶対に将来につながってくるので、とりあえず今自分のできることを頑張ることが、はじめの一歩になるのかなと。

佐藤: 確かにそうですね。踏み出すべきときというのは、チャレンジの意欲に満ちあふれている段階だと思うんですよね。ただ、キャリアカウンセリングをしていると、はっきりと自分の考えを言語化できる人は少ないなと感じます。

それは、ご自身の考えが明確ではないからとも言えます。であれば、「今の仕事や職場環境にどんな不満を抱いているのか?」「自分が幸せを感じる状況はどんなときか?」と自分に問いかけて、きっちり言語化して整理するといいと思います。

金融出身女性が思う「金融女性のキャリアのこれから」

(写真=筆者撮影)

くすい: 「最後に金融女性のキャリアのこれから」について、皆さんのお考えを伺いたいです。

角田: 今のスキルに固執し過ぎず、世の中の一歩先を見据えて生きていくことが大事だと思います。これからAIやロボットがますます進化すると思うので、単調な仕事が減る可能性も高いと思います。そうした変化をポジティブに捉えて、いかに仕事を楽しむかを考えるといいと思います。私自身も常にそう考えながら仕事していきたいです。

大山: 名の知れた金融機関で働いているとバリューがつくので、そこは自信を持っていただいていいと思います。ちなみに、私はがんを経験したのですが、誰しも人生の時間は限られていると思い知らされました。それは当たり前のことですが、若い頃は残された時間が何十年もあると錯覚するものです。けれども、本当はそんなにないかもしれないわけです。

失敗しても人生はいくらでもやり直しがききます。なので、たとえば「本当にやりたいことは今やっていることじゃないんだよな」と少しでも疑問に感じたら、しっかり探求することから始めてほしいです。正解にたどりつく道のりが分からなくても、探求する意識さえあれば、自ずと新しい方向に歩きだせるはずです。

野澤: これからは一人一人の個性が大事になる時代だと思います。そして自分が進みたい道や、将来のありたい姿に向かって、やりたいことをどんどんやっていく時代でもあります。

もし「これだ!」というものがまだ見つかっていないのであれば、「これだけは誰にも負けないものが何なのか」を考えて、これはナンバーワンだっていうことを見つけてもらいたいです。例えば、電話を取る速さで誰にも負けないとか、些細なことでもいいのでナンバーワンだっていうところをたくさん積み重ねていくことで、得意なものが見えてくると思います。

佐藤: 今日の登壇者の皆さんは、ビジネスパーソンとして第一線を走っている方々なので、もしかすると遠い存在に思われるかもしれません。でも、変に「明確な目標やゴールを持ってキャリアを作らなくてはならない」という強迫観念にとらわれる必要は全くなく、毎瞬間毎瞬間、納得しながら生きることができていれば、人生の最後に振り返った時その積み重ねで「幸せだった」と思えるんじゃないかなと考えています。だからこそ、ご自身のキャリアを見つめ直す際は、「大きな目標を立てるぞ!」というところからではなく、まずは肩肘を貼らずに「今、生き方に納得できているかな?」「幸せかな?」といった自問自答から始めてみるといいのではないでしょうか。