世界でも指折りの投資家、ウォーレン・バフェット氏を知っていますか?彼が会長兼CEOを務める米国のバークシャー・ハサウェイは、2020年5月2日、本社を置くネブラスカ州オマハにおいて年次株主総会を開きました。コロナ禍において全世界の投資家から注目を集めるこの株主総会で、バフェット氏はいくつかの驚くべき発表をし、今後世界がどういう方向に進むかを示唆する語録を残しました。

バークシャー・ハサウェイの業績

バークシャー・ハサウェイは上場企業への投資事業が注目されがちですが、同社が傘下に持つ子会社の事業領域は保険業を筆頭に、鉄道、建設・エネルギー業など多岐にわたっています。

また株式を保有している有名な企業として、ゴールドマンサックス、アップル、バンク・オブ・アメリカ、コカ・コーラ、アメリカン・エキスプレスなどが挙げられます。

今回発表された2020年第一四半期の業績発表は最終損益が5兆円の赤字ということで、新聞各紙はこれを大きく報じました。

一方で、バークシャー・ハサウェイの子会社各社の業績は前年より低いとはいうものの、すべて営業利益で黒字。この5兆円の赤字の中身は、子会社の業績悪化によるものではなく、所有する株式の評価損失によるものでした。

評価損失が出た原因が、新型コロナウイルス感染拡大に伴う2月中旬以降の株価の下落であることは想像に難くありません。

語録その1「世界は変わる」

――The world has changed for the airlines.

「航空会社にとって、世界は変わった」

バフェット氏は新型コロナウイルス感染拡大後、「世界は変わる」として持っていたデルタ航空など代表的な米国の航空会社4社の株をすべて売却したと述べました。

バフェット氏にとって航空株はお気に入りとして投資家たちの間でも知られていただけに、驚きが広がり、株主総会ではこの件について質問が集中したそうです。

バフェット氏は新型コロナウイルスの流行が収束したあとも、飛行機の乗客の客足は戻るかどうかわからないと見ています。外出制限によって遠方への出張はインターネットを使用したリモート会議に代替され、それが大きな不便にならないことに皆が気づいてしまったため、以前より需要が増大することはないかもしれないとする見方です。

2050年までに二酸化炭素排出量をゼロにする運動の国際的広がりなども理由の1つでしょう。そこにはインターネット社会の発展と、地球規模での気候変動など顕在化していく環境問題があります。

株式の長期的保有を投資方法論とするバフェット氏が言う「世界は変わる」の中身とは、こういった点も指しているかもしれません。

語録その2「アメリカの成長は止められない」

――Nothing can stop America.

「アメリカを止めることはできない」

前述の通り、2020年の第一四半期に5兆円もの純損失を出していながらもバフェット氏は「コロナでもアメリカの成長は止められない」と強気の発言をしました。

2001年の同時多発テロ、2008年のリーマンショックを乗り越えてきたことを「米国の奇跡、米国の魔法だ」として、「中長期的にはアメリカは成長を続ける」と述べたのです。海外からの投資家に向けたと思われる発言の中にも、「決して米国の成長に逆らうような賭けをしてはいけない」とまで述べました。

世界に冠たる投資家が、株主総会でこれだけはっきりとした発言をすれば、安心感が広がるというものです。このように世界の資本主義の頂点に立つアメリカの、そのまた頂点に立つとも言える投資家の観測通りに世界が動くのだとすれば、中長期的な成長に期待したいところです。