米国:資産残高連動型報酬とRIA

賢い投資家たちは、低コストのETFなどを使った運用がコスト面で有利であり、結果として投資家リターンに繋がりうることを理解した。

しかし、どの商品を選択すべきかがわからない場合には「資産残高連動型」のアドバイザーからアドバイスを得る選択肢がある。米国では「RIA」と呼ばれる投資アドバイザーが広く認知され活躍している(Registered Investment Adviser、登録を受けた投資アドバイザー:投資助言業者)。米国のRIAの数は2万6000とも言われ、その95%のRIAが「資産残高連動型報酬」を採用している。

販売手数料が高い場合にもRIAはその高い手数料を受け取ることが無い。RIAにとって重要なのは、顧客の契約資産残高の増加であり、そのためには高い手数料の商品はむしろ顧客の資産を減らす形になる可能性がある。米国の個人投資家の資産形成において、RIAなどの対面チャネルの貢献があったことは周知の事実となっている。

日本の富裕層が注目する「海外ETF」

リーマンショック後の2008年9月から2009年3月の間に、日本の投資家が購入・契約した金融商品を調査した野村総合研究所のアンケートによると、金融資産5億円超の「超富裕層」は海外ETFを挙げていた。

しかしその他の階層の投資家は海外、国内ともにETFを挙げていない。大口の資産運用を行う富裕層には様々な情報が集まり、結果として金融リテラシーが高まっていた。海外ETFは富裕層に選ばれていた。透明性、流動性、コストの面で投資対象に値するという判断をされたということだ。

ETFを志向するプライベート・バンカー

海外の事例だが、A氏は米系証券会社で1日12時間、推奨銘柄案内の電話をかけ続けた。手数料は稼いだが、顧客はそれほど儲かっていないことに気付く。A氏はETFを活用し、顧客の特性に合わせた資産配分を実施。顧客のリターンが向上し、2012年にはスイスの著名プライベート・バンクでトップのフィナンシャル・アドバイザーとなった。

かたやETFの優位性は本音ベースでは理解しつつも、ノルマ達成のために高い手数料の商品を販売している「プライベート・バンク」を名乗る金融機関が多く存在しているのも事実だ。販売商品は窓口と同じでありながら「立派な応接室」でプライベートバンキングを名乗っている金融機関も日本にはある。どちらが顧客サイドに立っているかは言うまでもないだろう。

高い手数料を顧客に払わせることを目的としたアドバイザーは米国では敬遠されている。米国の投資家の「高い金融リテラシー」と「アドバイスを対価」とする制度が顧客の資産形成に貢献してきた事実を知り、日本人も賢い投資家になって頂きたい。

文・安東隆司(CFPRファイナンシャル・プランナー)/ZUU online

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