パートの手取り額の計算ポイント(2)所得税
よく聞く「年収103万円の壁」は所得税のこと
ここでも、住民税と同様、給与所得控除65万円を引いた金額が給与所得となります。さらに、所得税の場合、所得から基礎控除として一律38万円が差し引かれます。
控除額を計算すると、
65万円+38万円=103万円
となり、この金額を超えると、所得税の課税対象となります。
月給8万8000円以上になると強制的に「源泉徴収」される
日本では所得税法上、月給から所得税を天引きをする「源泉徴収」が行われています。給与所得者が自分で確定申告をしなくても納税できるようにという制度です。
毎月の給料から社会保険料を差し引いた額が8万8000円以上になると、源泉徴収の対象となります。
源泉徴収されても、年収103万円以内なら、引かれた分は年末調整で戻ってきます。パートの人が年末になると、働く時間を減らすのはこのためです。
パートの手取り額の計算ポイント(3)社会保険料
意外と心配しなくて良い?106万円で社会保険の対象となる条件
年収が106万円を超えて、かつ社会保険に入らなくてはいけない方は以下のいずれかに該当する人です。
この金額は雇用契約書に書かれた数字を元に決まるので、残業代などは含まれません。
- 所定労働時間が「週20時間以上」
- 月額賃金が8万8000円以上
- 勤務期間1年以上見込み
- 学生は除外
- 従業員規模501人以上の企業(例外として500人以下も有)
月額8万8000円を1年間受け取ると105万6000円となることから、「106万円の壁」と言われています。
130万円以上は全てが対象となる
配偶者の社会保険(健康保険)の扶養に入るためには、年収130万円未満が条件となっています。そのため、年収が130万円を超えれば、自分で社会保険に加入しなければなりません。これが、「130万円の壁」です。パートの手取り収入によって税金が掛かる金額が違う
これまでの内容を踏まえて、時給や働き方によって手取り額がどう違うのか、具体的に計算してみましょう。(いずれも東京都のケース)
時給1100円、週3日、1日6時間勤務のA子さんの場合
月に13日間働いたとすると、
・月給:8万5800円
6時間×13日間×1100円=8万5800円
・手取り:8万5137円
8万5800円−663円(住民税)=8万5137円
・年間給与:102万9600円
8万5800円×12ヵ月=102万9600円
【所得税】掛からない。 年収103万円までは掛かりません。月給で見ても、8万8000円以下なので掛かりません。
【住民税】663円/月
年収102万9600円−100万円=2万9600円
(2万9600円×10%)+5000円(均等割)=7960円
年間で7960円なので、12で割ると月額およそ663円となります。
時給1100円、週3日、1日6時間勤務。ただし、今月は4時間残業したB子さんの場合
月に13日間働いたとすると、
・月給:9万200円
(6時間×13日間+4時間)×1100円=9万200円
・手取り:8万9970円
9万200円−230円(所得税)−1080円(住民税)=8万8890円
・年間給与:107万9640円
8万9970円×12ヵ月=107万9640円
【所得税】230円が源泉徴収される。
所得税法によって、月給8万8000円以上の場合、給料から強制的に引かれることになっています。
B子さんは今月多く働いたので月給から源泉徴収されていますが、年収が103万円を超えていなければ、年末調整で差額が戻ってきます。
【住民税】約1080円
107万9640−100万円=7万9640円
(7万9640円×10%)+5000円(均等割)=1万2964円
年間1万2964円なので、12で割ると月額およそ1080円となります。
時給1100円、週4日、1日6時間勤務のC子さんの場合
月に17日間働いたとすると、
・月給:11万2200円
6時間×17日間×1100円=11万2200円
・手取り:9万2511円
11万2200円−(1万65円(厚生年金保険料)+5445円(健康保険料)+336円(雇用保険料))−540円(所得税)−3303円(住民税)
=9万2511円
・年間給与:134万6400円
11万2200円×12ヵ月=134万6400円
【所得税】540円が源泉徴収される
さきほどの表の「月給−社会保険料(厚生年金保険料+健康保険料+雇用保険料)」の額に当たる箇所を見ると、540円になります。
【住民税】約3303円/月
134万6400円−100万円=34万6400円
(34万6400円×10%)+5000円(均等割)=3万9640円
年間3万9640円なので、12で割ると月額およそ3303円となります。
【社会保険料】1万5846円
C子さんから社会保険料がかかるようになります。
社会保険料の加入条件は、年収130万円なので、毎月の給料から厚生年金、健康保険、雇用保険といった「社会保険料」が差し引かれることになったというわけです。