SDGsという言葉を耳にする機会が多くなった昨今。SDGsとは2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことで、国連加盟193か国が2030年までに世界共通認識で達成するために掲げた目標です。最近は小学校の教科書にも掲載されるなど、学校教育の現場でもSDGsという言葉を耳にします。
一方で、読者からは「会社でSDGsが掲げられたけど、実はよくわかっていない」、「子どもに説明できない」といった声が聞こえてきます。
そんな中、以前LAXICでインタビューさせていただいた株式会社イースマイリーの矢澤氏がSDGs教育プログラムのクラウドファンディング※を開始したと聞き、さっそく問い合わせをしてみました。同社が実施したアンケートによると、社会課題・SDGsに対し関心が高い親のうち64.4%が「SDGsを身近に感じるのは難しいしい」「今のところ何もできていない」と回答したとのこと…!
そこでLAXICでは、SDGsに関心の高い編集長小山と矢澤氏が中心となり、ママ向けの座談会を企画。SDGsを学びたい読者代表ママと、企業や地域でSDGsを実践しているママによるオンラインセッションを行いました。
SDGsを自分ごとにするヒントはどこに…? 前後編でお伝えします!
(※)SDGs教育プログラム「Wow!クエスト」クラウドファウンディング
<座談メンバー>
■佐々木つぐみさん
地域×SDGsの実践者で三児のママ。一般社団法人渋谷区SDGs協会理事。息子さん、娘さんが同法人キッズアンバサダーとして活動中。
■日下部奈々さん
企業×SDGsの実践者で二児のママ。ソフトバンク株式会社SDGs推進室に所属。
■齋藤明日香さん
株式会社VOYAGE MARKETINGでWebディレクターを務める三児のママ。SDGsには詳しくないが、環境保護、エコロジーやゴミ問題に関心がある。
■永見薫
LAXICライターであり、再生可能エネルギー会社で働く一児のママ。サスティナブル分野や地域活動に興味がある。
<ファシリテーター>
株式会社イースマイリー代表取締役 矢澤修さん
LAXIC編集長 小山佐知子
自分の体験や身近な事例に置き換えるだけでSDGsとの距離がぐっと近くなる
矢澤修さん(以下、敬称略。矢澤):SDGsという言葉が浸透しつつありますが、まだ具体的なイメージまでできていないという方が多いですよね。きょうは地域や企業でSDGsを実践されている方のお話を聞くことで、SDGsをカジュアルに知ってもらう機会になればと思います。
まずは佐々木さんに伺います。渋谷区SDGs協会の理事として、またお子さんと一緒にSDGsを実践されていますが、何がきっかけで活動を始めたのでしょうか?
佐々木つぐみさん(以下、敬称略。佐々木):子どもたちが友人に誘われてワークショップに参加したときにSDGsに出会いました。特にアースオーバーシュートデー(※1)の話は印象的で、「地球が生み出す資源よりも1年間に地球1.6個分も、多くの資源を人間は消費しているんだよ(※2)!」という内容には衝撃を受けていました。
「この驚きをほかの子どもたちに伝えていきたい!」と、キッズアンバサダーとして活動を始めました。今では小学校や高校などで、子どもたちだけでワークショップをしています。
矢澤:子どもたちだけで…!
佐々木:ワークショップでの出会いが大きかったですね。グリーンバードと日本財団、グリーンアップルのイベントに参加した際には、そこにいる大人がいろいろなイベントや情報を紹介してくださって、子どもたちの興味を膨らませてくれたんです。特に息子はこの1年で大きく成長して、「将来は環境大臣になりたい!」と言っています。
一同:それはすごい…!
佐々木:息子はよく、「今僕が思っていることは全部変えられるんじゃないか」と言っています。
矢澤:ワークショップを通して社会問題と自分との距離が近くなって、ついに夢にまでなったんですね!何がよかったのでしょう?
佐々木:周りの大人たちが子ども扱いをしないで対話をしたことが、子どもの興味やアクションを引き出したように思います。
矢澤:なるほど! 子どもの自発的なアクションのために、いかに身近な体験や実例を自分ごととして結びつけてあげられるかが大切ですね。
(※1) 国際NPOグローバル・フットプリント・ネットワークが設定した「自然資源をどのくらいの速さで消費しているかを示す日」のこと。毎年資源の消費スピードに合わせて日付が設定されます。
(※2) 2020年時点の数値
今目の前にあることが「どう社会に良い?」と問うてみる
LAXIC編集長小山(以下、小山):大人であっても“自分ごと化”するって意外と難しい。社員やユーザーに向けて、日々の生活や仕事をSDGsと結びつけるために、企業側が行っていることを知りたいです。日下部さんはソフトバンクでSDGsの推進をなさっていますね。
日下部奈々さん(以下、敬称略。日下部):企業からSDGsを浸透させる意義は大きいです。企業を通して子どもに一番伝えやすいのは、「パパやママのお仕事はこんなことをしていて、社会や暮らしにこんないいことしているんだよ!」と具体的な事例で分かりやすく言い換えることなのかなと思います。
矢澤:なるほど、子どもに伝えることで身近になりますし、親の仕事を子どもに理解してもらうこともできそうですね!
日下部:SDGsは17の大きな目標で構成されていますが、ただ、これがかなり抽象的に見えるので、具体的な話に結びつけるのかが難しいんです。まずは今ある出来事を事例で伝えられるといいですね。弊社ではスマートフォンを提供していますが、ただ商品をお持ち帰りいただくだけではなく、年齢の高いユーザー様などスマートフォンになじみのない方には専門性の高いスタッフによる『スマホ教室』を開催しています。時間やコストをかけてこの取り組みを行うのは、スマートフォンを長く上手に活用して欲しいからなんです。
小山:SDGsが目指すのは、誰も取り残さない「経済」「社会」「環境」ですが、『スマホ教室』はまさにその視点がありそうですね。
日下部:デジタル社会が進化していくときに、 “誰一人取り残さない” を意識することはとても大切です。デジタルデバイド=情報格差のない社会を作りたいから、労力がかかっても活動を続けるのです。
小山:SDGsって、概念から入ろうとするととってもお勉強的なので、ハードルが上がってしまうけれど、そうやって今目の前にあることから入るとストンと入ってきそうな気がします。
日下部:「これってどう社会にどう良いのかな?」とか「持続可能なのかな?」と問うてみるといいですね。
矢澤:ソフトバンクさんのHPを見ると、手掛けられている事業や人材育成の方針の中でSDGsが語られていて、社員の方が自分の仕事はこういうところがSDGsにつながっているのだな、とイメージしやすいですね。社員が発信をする活動はしているのですか?
日下部:昨年1年間は社員へSDGsを浸透するためのフェーズでしたが、これからは社員が社会に向けて行動をしていけるように場を作っていきたいです。たとえば弊社では「ソフトバンクイノベンチャー」という新規事業提案制度があるのですが、「SDGsに貢献するビジネス」というテーマで事業アイディアを応募したところ、ここ数年で最多の応募があったんです。それだけ社員にも事業と社会課題の解決へのつながりに関心があるのだと感じています。
矢澤:営利企業であっても、こうやって社会課題や貢献を考えることができるんですね!