給与明細をもらったとき、残業代や手取り額をさらっと見て終わりという人も多いでしょう。しかし一度、「支給」だけではなく、「控除」という項目にも注目してみてください。会社員の給与控除にはさまざまなものがあり、それぞれ目的が異なります。今回は、いまさら聞けない「控除」の基本と、知って得する制度について解説していきます。

給与明細に書かれている「控除」とは

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「控除」とは、会社が支給する給与からあらかじめ差し引かれるお金のことです。労働基準法で全額支払われることが原則になっている賃金ですが、法律や労使協定によって定められている項目については給与から控除されることが認められています。この項目のことを「控除項目」と言います。

控除項目は、法律によって給与から控除しなければならないとされている「法定控除」と、会社と従業員の間で労使協定によって控除することが決められている「協定控除」があります。

法定控除項目1.社会保険料

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社会保険料には、「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」の4つが含まれています。

健康保険料

従業員が病気やケガで医療期間を受診する際の治療費や投薬料の負担を軽くしたり、休業や死亡、出産をする際には現金が支給されるなど生活を安定させることを目的として使われます。

介護保険料

自力で生活することが難しくなった際に介護サービス受けることができるなど、介護の負担を社会全体でささえるために使われます。40~64歳の人が保険料を負担します。

厚生年金保険料

老齢になって退職する、身体が障害状態になる、死亡する、などの場合に本人や家族が年金を受け取ることができます。世代間扶養により収入を得ることが低下した際に安心・自立して暮らせるための仕組みです。

雇用保険料

雇用保険は、労働者が失業した際に次の仕事につくために生活を保護し、再就職を支援するために使われます。

健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、給与など報酬の月額を一定の幅で区分した「標準報酬月額」に料率をかけて計算され、給与明細にはそのうちの自己負担分が記載されています。

雇用保険料は、標準報酬月額ではなく「給与の総支給額」に税率をかけて計算され、会社が負担する労災保険料と一緒に都道府県労働局に納められます。

法定控除項目2.税金

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所得税と住民税は、毎月の給与から概算額を天引きして、会社がまとめて納税しています。この仕組みのことを源泉徴収制度といいます。正式な納税額は年末調整や確定申告を行うことによって決定します。

所得税

所得税は個人の所得の額に応じてかかる税金です。1年間の所得がわかったらそこから所得控除を引いて、残りの額である課税所得に税率をかけて計算します。2013年1月から2037年12月31日までの期間は、所得税額に2.1%をかけて算出する復興特別所得税と合わせて納付します。

住民税

住民税は、住民に対する行政サービスに必要な費用を所得に応じて負担するもので、前年の1月1日から12月31日までの給与総額をもとに計算されます。税率は住んでいる市区町村にとって異なりますが所得金額によって課税される所得割と、定額で課税される均等割があります。

協定控除項目

会社と従業員が労使協定によって定めた控除項目です。財形貯蓄、社宅費、組合費などが記載されています。

働く女性は控除を活用できる?

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会社員が毎月支払っている「控除」ですが、控除項目を支払っている人だけが活用できる制度があることをご存知でしょうか。

例えば、健康保険の給付には傷病手当金は、病気やケガで働くことができなくなったときに会社を連続して3日休んだ後4日目以降休んだ日に対して支給されます。一日当たりの金額は、給与の平均月額から算出した標準報酬月額を30で割った額の2/3の金額です。

また、出産時には、出産育児一時金として1児につき42万円がもらえます。双生児の場合、2人分支給されます。

資格を取るなどのために支払った費用の20%を上限10万円まで支給してもらえる教育訓練給付金もぜひ活用したい制度です。支給要件期間を満たせば、失業していなくても利用することができます。

ただし、いずれも自ら申請しないと給付金はもらえませんので、該当しそうな場合は早めに申請するようにしましょう。

給与明細を改めてよく見てみよう

毎月のお給料から控除されている項目については普段はあまり意識しないかもしれませんが、自分の給与がいくらでそのうち保険や年金、税金をいくら払っているのかに関心を持つのは大切なことです。

控除項目を支払っているからこそ使える制度も多くあります。また、自分が老齢で退職したり経済的に困難な状況になったりしたときに恩恵を受けられるのも安心ですよね。

控除について知っておくと、生きていく上で何かとお得になることも多いでしょう。自分の給与明細にはどんな控除項目があるか、改めてじっくり見てみませんか。

文・藤原 洋子(ファイナンシャルプランナー)

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