不透明なこれからの社会こそ女性リーダーの時代 そこで問われるリーダーの資質とは

ネガティブな感情をポジティブに昇華させる!ジャーナリスト谷本有香流「フリーランスで生き抜く力」
(画像=『LAXIC』より引用)

編集部:今後、成功する女性リーダーの条件とはなんだと思いますか?

谷本:私がお会いしてきた中で女性リーダー、ましてや母というサンプルが本当に少ないのですが、その中でもトイザらスの元社長モニカ・メルツさん、ペプシコのインドラ・ヌーイさん、HASUNAの白木夏子さん、あぁいう自然体の人が女性リーダーとしてふさわしいと思います。これからの不透明な時代、トップダウン型からイノベーションは生まれない。揺らぎのような中に正解があり、多様性の中から解を見つけていく…… そう言うのって女性的じゃないですか。監督型と言うか、個々の良い面を伸ばしていく、まさにコレクティブ・ジーニアス。 きめ細かな気遣いができる、まさに女性リーダーの時代が到来したと思います。

編集部:著書にもあった「人たらし力」ですね。

谷本:天性な部分もあるけどみんな最初は孤高の天才で、それでもある程度の局面までは行けます。組織が大きくなるにつれて、その先はもっと人間力を問われますよね。本来、誰しも人懐っこかったりするのですが、トップに立つと「社長でなければならない」と言うペルソナを持ってしまう。でも、それを取り払った時にみんな付いてきてくれるので、その局面にくるとその人本来の姿に戻るのだと思います。

「できないことなんて何もない!」世界的トップリーダーから学ぶ育児法とは?

編集部:有香さん自身が、子育てについて気をつけていらっしゃることは?

谷本:とにかく様々なことに触れさせ、いろんな選択肢を与えたいと考えています。残念ながら日本って未だに教育が画一的で、意識的に触れさせないと多様性は育たないと思います。仕事先に連れて行ったり様々な人に会わせたり、いろんな事例を聞かせたり…… 何がよくて何が悪い、だけでなくバランスを取るようにしています。

編集部:子どもが今小学校なのですが、学校に行き出すとまた違ったバイアスが付いて来るなと実感しています。

谷本:大学で教えていても痛感します。親の意見や世間の価値観がベンチマークのように付いてしまっていて。就職活動でも「自分がどうしたいから」ではなく「とにかく安定している大手企業」を切望します。これまでも自分自身で選択することや、自分がどうしたいか考える、というプロセスが全くなされていない=自分の価値観の形成ができていないから、客観的理由だけで選んでいるのでしょうね。だからこそ子どもの自由な発想を許容し、その発想について一緒に考えられる親になりたいですね。大人として現実的に考えたり、自分の価値判断で決めつけたりしないで「できないってことなんて何もない!」と言うことを教えてあげたい。

キャリア育成の延長線上にあるのが国際会議ですが、日本のリーダーは自分の仕事に関するプレゼンはできるのですが「では、100年後の話をしよう」って自由な発言の場となると口を噤んでしまう。少年の時にはもっと自由な発想をしていたはずなのに……

編集部:子どもを今、公立に通わせていますが、イマジネーションの世界が全くない。きちんと言われたことをできる人がいい、みたいな。これでいいのかって思ってしまいます。

谷本:そう思うと、やっぱり自分たちが変わっていかなくてはならないですね。ジェネレーションバイアスだとか言われていますが、いつまでも変わっていける自分の後ろ姿を見せていくことが一番大事かと。

編集部:本当ですね。これまでお会いしてきたトップリーダーの子育てで印象的だったことはありますか?

谷本:花まる学習塾の高濱正伸先生がおっしゃっている「子ども時代は子どもをやれ」という言葉に私自身も救われていますが、これを子育てで実践しているリーダーも多いです。あとは情緒教育。アートなどの芸術に触れる機会を多くする。本物を見る、本物を聴く、ということを意識してされていると思います。

そもそも、日本のリーダーで教育のことを語る人はあまりいませんが、海外の人はすごく考えている。控室でもすごく教育の話をしているから、良い情報も入ってくるしさらに興味も膨らむ。それって結局は社員教育や社員育成にもつながるので、遠い話ではないことなのです。

日本って、エリート教育の末に成功っていう構図じゃないですか。でも海外に行くと「肩書きを聞いているんじゃない、あなたって個人はどうなの?」と、人間としてオールラウンドに問われるので、常に自分を成長させていかなければ評価されない。主婦の方も「専業主婦でボランティアをやっていてこんな教育に興味がある」と堂々と自分自身を語りますよ。

編集部:谷本さんはいつ頃から自分を語れるようになったのでしょう。

谷本:就職氷河期でしたし、その頃から語っていますね。その後もフリーランスなので自分を売らなくてはならなかったですし。これからもっと個の時代になりますし、押し殺していたものが開花できる良い時代になると思います。

だからこそ「あなたは何者なの?」という答えを是非見つけ出して欲しいと思います。そうすれば社会との接点を見いだせますし。ママたちの間でも広がればいいなと思います。

 

インタビューのプロである有香さんにお話を伺うので、最初はとても緊張していたのですが…… お会いするなりとっても自然体。親しみやすい雰囲気で包み隠さずお話しして頂けるので、一気に魅力に引き込まれてしまいました。そして聞けば聞くほどネガディブな“負の塊”のような事例も、その大変さや苦労を微塵も感じさせない有香さん。それはすべてポジティブに昇華してネクストステージに挑戦しているからなのですね。そんな芯の強さがまた多くの人を惹きつける魅力なのだろうな、と思いました。

特に印象的だったのが「子どもたちの自由な発想をいかに育むか」と言うこと。世界のトップリーダーに会ってきた有香さんだからこそ、その重要さを痛烈に感じていらっしゃるのだと思います。親の影響力って自分でも怖くなるほど強く、無意識のうちにありとあらゆるバイアスをつけてしまいがち。でも教育が、社会が、と大きな話にして「自分がどうすべき」というところにまで考えが及んでいませんでした。そんな中「できないことは何もない!と挑戦する姿を見せたい」と。次世代を担う子どもたちへ、一番身近で伝わるメッセージですものね。その気づきはとても大きかったです。

谷本 有香さんプロフィール

経済ジャーナリスト/Forbes JAPAN 副編集長 兼 WEB編集長。大学卒業後、山一證券に入社、社内の経済キャスターに抜擢される。2年後、会社が自主廃業となり、フリーランスキャスターの道へ。十数年にわたって経済キャスターの第一線で活動し、日経CNBCでは初めての女性コメンテーターに抜擢される。世界のVIPへのインタビューを含め、これまで3000人を超える取材を行う。近著に「何もしなくても人が付いてくるリーダーの習慣」(SBクリエイティブ)。

提供・LAXIC

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