「閉鎖>開設」のトレンド

世界のヘッジファンドの数は2015年末で8454であった。同年に閉鎖したヘッジファンドは977で新たに開設した968を上回っている。このトレンドは今後も続くのだろうか。

シャドーバンキング問題

みずほ総合研究所の「国際的な金融規制改革の動向 10訂版」2016年3月30日によると、厳しい銀行規制を回避するために、規制の緩い「シャドーバンキング」に資金がシフトしてきた可能性を指摘している。ヘッジファンドなどは、実質的に銀行に類似した信用仲介活動を行う非銀行金融セクターであり、「シャドーバンキング」に含まれている。そして投資家保護の観点では規制強化を行う方が望ましいと考えられ、このシャドーバンキングについても規制強化する方向にあるとも考えられる。

ファンド規制・レバレッジ規制

銀行のシャドーバンキングへの関与を規制する目的で「ファンド向け出資の自己資本規制上の取扱いの見直し」が今後加速する可能性があると考えられる。すなわち銀行が出資しているファンド、ヘッジファンドの資産内容をリスク計量すべきという方向性が進むだろう。先般の金融危機時に銀行がシャドーバンキングに類する事業体を救済した事例があり、契約上の範囲を超えて銀行が介入せざるを得ないリスクを考慮すべきということだろう。

流動性の低い資産に投資するヘッジファンド、レバレッジ比率の高いヘッジファンド、プライベートエクイティ中心のヘッジファンドなどには、出資していた銀行のリスクが大きくなる場合が考えられ、ヘッジファンドから銀行の資金流出が加速する可能性も視野に入れておきたい。同様に投資家が現在投資するヘッジファンドを改めてリスク計量することにより、解約していく可能性も考えられる。閉鎖するヘッジファンドが今後増加する可能性は否定できないだろう。

ヘッジファンドコスト考察

ヘッジファンドには成功報酬としてファンドの純収益の10-20%の成功報酬、1-2%程度信託報酬に加え、3-5%近い購入時の手数料を支払うケースもある。ヘッジファンドの運営者、ファンドマネージャーにとってのインセンティブは高く、数年成功すれば巨万の富を手にする可能性がある。しかし、投資家にとってこれだけの高いコストをかけてヘッジファンドで運用するメリットが本当にあるのか、投資家ひとりひとりが熟考すべき時期だろう。

文・安東隆司(CFPRファイナンシャル・プランナー)/ZUU online

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