2021年がスタートしてからまもなく5ヶ月。コロナ禍、長引く自粛生活でストレスや慢性的な疲労をため込んでいませんか?「春眠暁を覚えず」という言葉があるように、春先は眠気が強くなって気だるくなってしまうなど、体の不調を感じることが多い季節です。新年度を迎えたかと思えばあっという間にゴールデンウィーク…。日常の慌ただしさから疲れを感じやすくなるのも、この時期の特徴かもしれません。

そこで今回は、疲労専門クリニック、ナカトミファティーグケアクリニックの中富康仁先生に伺った内容をもとに、疲労のメカニズムから疲労をためない工夫、効果的な疲労回復の方法までご紹介します。 疲労具合を可視化する「セルフチェックシート」もご用意したので、ぜひお役立てくださいね!

慢性的な睡眠不足は病気を引き起こすきっかけに

大型連休前の今こそ、たまった疲れと向き合って。疲労の専門医に聞く、予防と回復方法
(画像=『LAXIC』より引用)

毎日を忙しく過ごすみなさんの中には、十分な睡眠をとりたくても難しいと感じる方も多いかもしれません。特に、乳幼児がいる方は夜中の授乳や子どもの急な体調不良などで睡眠が細切れになることもしばしば。

厚生労働省の「令和元年国民・栄養調査結果の概要(※1)」によると、日本人の睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も多く、男性が32.7%、女性が36.2%とのこと。これは世界各国と比較しても最も低い順位(※2)にあたり、睡眠不足はもはや慢性的な社会問題といえそうです。

特に女性では、睡眠時間が7時間以下という人の割合が76.8%にも達していて、30代女性では育児を理由に睡眠不足に陥っている人が多いようです。未就学児を抱えるワーママが多く在籍するLAXIC編集部でも、話を聞いてみると、睡眠の時間と質の両方で何かしらのトラブルを抱えている人が目立ちました。一部をご紹介しましょう。

仕事で遅い時間までPCを見ていた日は寝つきが悪くよく眠れず、朝早く起きてしまいます。(6歳の子のママ)

眠りが浅く、朝に疲れが残っています。思いっきり寝たいけれど、子どもたちに起こされてしまい、「あと1時間は寝たい!」と思う毎日です…。(3歳と5歳の子のママ)

子どもが2~3時間おきに泣いて起きるので必然的に睡眠不足に…。出産してからまとまった睡眠が取れていません。(2歳の子のママ)

睡眠時間が少ないと、睡眠負債(※3)が溜まっていき、仕事や家事の効率が下がったり、「なんとなくだるいな…」といった症状が現れます。さらにこうした睡眠不足から生じる疲労が蓄積し続けると、怪我や病気を引き起こすことも。疲労をためずに日々を健やかに過ごすにはどうすればいいのでしょうか?

(※1) 令和元年国民・栄養調査結果の概要 (睡眠については27頁に記載)
(※2) Gender Date Portal 2019
(※3)睡眠不足が借金のように毎日少しずつ積み重なっていく状態のことで、生活習慣病やうつなどの心身の不調となって返済を迫られます

「疲労」と「疲労感」は似ているけれど違うもの

大型連休前の今こそ、たまった疲れと向き合って。疲労の専門医に聞く、予防と回復方法
(画像=今回お話を伺った、ナカトミファティーグケアクリニック院長 中富康仁氏、『LAXIC』より引用)

そもそも「疲労」とは一体何なのでしょうか?

疲労ケアの専門家である中富康仁先生によると、疲労は、「痛み」や「発熱」と同じ生体の警告信号だといい、「痛み、発熱、疲労」は三大生体アラームといわれるのだとか…!ただ、疲労は痛みや発熱と異なり、明確なアラートが発せられるわけではないので、後回しにされやすいというのです。そしてさらに難しいのは「疲労感」との違い。

中富先生によると、「疲労」は「物忘れが多くなる」、「仕事でのミスが多くなる」などパフォーマンスが低下している状態のことをさすのに対して、「疲労感」は疲労を脳で感じている感覚のことをさすのだそう。

「怖いのは、疲労が麻痺してしまっている状態です。」と、中富先生。たとえば、旅行やイベントなどを思い出してみてください。その時は楽しいけれど、帰ってきたらドッと疲れが出た、という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?まさにこれが「疲労感」の正体なのです。楽しいときほど疲労が麻痺してしまうのですね…。

同じようにエナジードリンクやコーヒーなどのカフェインを摂取しているときも元気になったような感じがしますが、これは体力を前借りしているようなもので、あとで疲労感を覚えてしまうというのです。こうしてみると、「疲労感」は、一見「疲労」と同じようにも思えますが、実は違うのですね。

中富先生のクリニックでも、ここ1年程、コロナ禍による自粛生活でいつも以上に疲労が溜まりやすくなった患者さんが多いそうです。

■在宅勤務、リモート授業など、家族が家にいる時間が増え、家事が増大
■在宅勤務で同じ姿勢が続き、肩こりや腰痛がとれない
■運動不足になりがちで、睡眠状況も悪い

自分が感じている以上に、見えないところで知らず知らずに疲労をためているのかもしれません。

疲労については日々感じているものなので、ついケアを後回しにしがちですが、疲労が蓄積すると深刻な疾患を引き起こす可能性もあるので、こまめに疲労回復をしたいものです。

疲労と回復のメカニズムを知り、自分の疲労具合をチェックしよう 今のあなたの疲労度はどのくらいでしょうか?以下の疲労度チェック表で自己診断してみましょう。

大型連休前の今こそ、たまった疲れと向き合って。疲労の専門医に聞く、予防と回復方法
(画像=ナカトミファティーグケアクリニック 中富康仁先生作成「自己診断疲労度チェックリスト」、『LAXIC』より引用)

質問項目を見てみると、どれも「疲れたな」と思ったときによく感じる症状ばかりですね。みなさんはどのくらいくらいチェックが入りましたか?

No.1~3の質問は、比較的誰でも起こりやすい疲労です。そしてNo.4~6の質問はちょっと注意が必要、危険信号の疲労を表しています。疲れをためないためにもいち早くケアが必要です。No.7~9を選んだあなたは、だいぶお疲れの症状です。これらは危険信号の疲労ともいえます。早めに医療機関などに相談することが選択肢の一つとしておすすめです。

ちなみにLAXIC編集部8名の結果はというと、1~5点が1人、6~10点が5人、11点以上が2人という結果でした。なお、点数が6点以上だったスタッフ7名は全員が未就学児を抱えるママ。「子どもが幼いので添い寝しているため、まとまった眠りを確保できない」、「授乳中のため夜中に起きざるを得ない」という理由で疲労度が高いようでした。