投信セット定期は「麻薬」のようなものだ

多くのFPが投資信託セット定期を問題視しているのは、「実際には宣伝されるほどお得ではない」ということだろう。しかし、問題の本質はそこではない。この定期には、あなたに「また高い金利の定期が欲しい」と思わせる麻薬のような効果があることである。

たとえば、あなたは銀行員から次のような提案を受けるかもしれない。

「他行で低い金利の定期や普通預金が残っていませんか。3%の金利がつく方がずっとお得じゃないですか。よろしければ、当行へ預け替えしませんか?」

そして3カ月後……

「残念ですね。定期預金の金利が下がってしまいます。よろしければ、投資信託を買い足しませんか。併せて、郵便局の貯金も当行へ持ってきて頂ければ、高い金利を享受できますよ」

こうして、いつの間にかあなたの投資信託はどんどん残高が膨らむことになる。それで利益が出れば良いのだが、相場はあなたの都合に合わせて動くわけではない。そんなことはお構いなしにあなたは再び投資信託を購入し、再びセット定期で高い金利がついたことに喜んでいるのだ。

日銀によるマイナス金利政策は運用の世界にも大きな影響を与えている。これまで投資に無関心であった人も「このままでは資産が目減りするのではないか」「リスクを取ってでも運用しなければならないのではないか」という不安にさらされている。だが、世の中には運用が不要な人だっている。運用に不向きな人だっている。にもかかわらず、政府も銀行も、FPも人々の恐怖心をあおり、運用が不要な人にも運用へと駆り立てる。

特別金利につられて運用を始めることが果たして健全なのだろうか。可能であれば、そうした人たちにこっそりと教えてあげたい。「セット定期はお得です。ただし、それは麻薬のようなものですよ」と。

文・或る銀行員/ZUU online

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