ラシク・インタビューvol.85

株式会社ビデオリサーチ ひと研究所 f2ラボリーダー  村田 玲子さん

株式会社ビデオリサーチといえば視聴率を調べるところ?と思っている人も多そうですが、実は様々な視点から現代社会を切り取っています。その中で「モノではなくヒト」に密着したリサーチを行っているのが「ひと研究所」です。

そんな、ひと研究所が今回発表した「F2層のモヤモヤフルネス」によると、35歳~49歳の女性たちは、ライフコースや生き方の多様化に関わらず、悩み多き日常を抱えているそう!ワーキングマザーも、専業主婦も、DINKSもワーキングシングル(独身女性)も、みんな悩みながら選択し、歩みを進めているのです。

ご自身もF2層のワーキングマザーであり、ひと研究所でf2ラボリーダーを努める村田さんに、ミドル女性の「モヤモヤ」とその解決法などをお聞きしました。

35~49歳女性の9割近くは「モヤモヤ」している!

ワーキングマザーも専業主婦も、ワーキングシングルも!35歳~49歳女性の約9割はモヤモヤを抱えながら生きている
(画像=ひと研究所 主任研究員 村田玲子さん、『LAXIC』より引用)

編集部:今回の調査でF2層(35歳~39歳 女性)の87%が普段の生活で「モヤモヤしている」という結果が出ましたが、これは想定通りの結果だったのでしょうか? (*F1:20~34歳女性、F2:35~49歳女性、F3:50歳以上の女性)

村田さん(以下、敬称略。村田):色々な人にインタビューをし、モヤモヤしている人が多いのは想定内ではあったのですが、F2層の87%という高いスコアにはちょっと驚きました。一般的なリサーチではなかなか出てこない高い数字です。7割でマジョリティと言えますが、ほぼ9割が「モヤモヤ」している、しかもその半数以上が頻繁にモヤモヤを感じています。

編集部:今のF2層が抱えているモヤモヤは、かつてのF2層(現在50代)よりも増えていますか?

村田:女性全体が悩みと葛藤を持っているのは事実なのですが、違うのは、昔は育児が落ち着いた頃に体の変化、いわゆる更年期などの症状が出ていました。でも現在では、結婚や出産の時期が後ろにずれてきており、その為に育児、仕事、それに女性としての大きな体調の変化がいっぺんにやってきてしまう、この一時期にコンパクトに集中してしまい、葛藤や迷い、不安などが非常に高くなっているように感じます。女性の体の部分はあまり語られていないけれども、とても大切な観点だと思いますね。

編集部:今のF2層、どうしてこんなにモヤモヤしているんでしょう?

村田:実はF2以外の年代でもモヤモヤしています。ただ、悩みの質がかなり違いますね。若い年代は漠然とした将来への不安だったりしますが、F2層はもっとリアルで、それぞれ個別に様々な悩みや不安を抱えています。時代の閉塞感もあり、先行きが見えない中で、判断がハイリスクハイリターンに思えること、またこの先をどうやって生きていくか決める責任が重いと感じているのも要因にありますね。

現在、F2の生き方はとても多様化してきていて、昔に比べ未婚率も上昇し、子どもがいない女性・フルタイム勤務の女性たちも増加しています。また、ライフイベントごとに、ライフコースが細分化する傾向にあるのも、また女性ならではの特徴ですね。

調査では属性によって分けるという考え方はあまりしていませんが、今回セミナーを開催し「自分だけではないんだ」「みんなそうなんだ」という共感がとても大きかったのです。どの立場にあっても、モヤモヤは持っていて、思った以上にモヤモヤの内容に関してナイーブであり、ひとりで抱えがちだという点がハッキリしました。

女性活躍の文脈の中で「働かないと主張しづらい」ように感じるF2女性たち

ワーキングマザーも専業主婦も、ワーキングシングルも!35歳~49歳女性の約9割はモヤモヤを抱えながら生きている
(画像=現在のF2が抱える葛藤の図、『LAXIC』より引用)

編集部:私自身、ワーキングマザーとして思うのですが、働くママの声って割と取り上げられることが多いと思うんですね。今回の調査で興味深かったのは、ワーキングマザーだけではなく、専業主婦やワーキングシングル、DINKSが抱える悩みをきちんと取り上げたことだなあと思うのです。

村田:女性活躍という言葉が枕詞になることが増えて、ワーキングマザーが注目されることは確かに増えていますよね。その一方で、インタビューの中で感じたのは専業主婦の方が「お気楽な専業主婦なんですけれども」とか「働いている皆さんの方が大変なんですけれども」とか、前置きをしてから話す人が多いなということなんです。専業主婦も大切な役割を担い、自分や家族の環境や価値観の中で今そうであるに過ぎないのに、女性活躍の文脈の中では、働いていないと主張しづらいように感じているのかもしれません。

また私たちがワーキングシングルと言っている子どもがいない女性たちも、この世代の中でボリュームとしてはすごく増えているのです。子どものいる・いないでいうと、大体半々くらいの割合で、そのどっちに属しているのかはたまたまの偶然だと思うんです。ワーキングマザーという言葉が先行してしまっていて、「こうじゃなければ」という思い込みが女性の生きづらさにもつながっている気がしますが、いろんな生き方とそれぞれの幸せを認められる社会であるといいですよね。