引き留めに成功する可能性と弊害

別の角度からも見てみよう。エン転職が2016年9月~10月に実施した「転職のきっかけ」についてのアンケート調査によると、転職を考えたきっかけで最も多いのが「給与・待遇への不満」、次いで「仕事内容への不満」、「成長実感が持てない」となっている。

転職したい理由が「給与・待遇への不満」だとする社員には、カウンターオファーはある程度有効かもしれない。満足できる給与や待遇を会社が用意してくれるのであれば、退職を踏みとどまる人も増えそうだ。「仕事内容への不満」についても、改善できる可能性はあるだろう。

ただし、カウンターオファーには危うい面もある。たとえ引き留めに成功したとしても、退職を考えていたという事実は消えない。周りは「結局、すぐに辞めるのでは?」と疑心暗鬼になりがちだ。また、「良い条件で引き留められた」という噂が広まることで、不公平を感じる社員も出てくるだろう。どちらのケースも、会社にとってはマイナス要素になり得る。

どうやらカウンターオファーには意味がない

カウンターオファーについてここまで見てきたが、退職を決意した社員を引き留めてもあまり効果がない、どうやらカウンターオファーには意味がない、と言えそうだ。では、どうしたらいいのか。会社として事態を改善していく方法を2つ挙げてみる。

まず1つは、退職希望者を引き留めずに「快く辞めさせる」という方法。社員の退職後を応援するというスタンスだ。強引な慰留は会社の評判を下げるが、辞めていく社員の未来を快く応援することは、会社のイメージアップにもつながる。戦力を失うことで一時的な損失は生まれるかもしれない。しかし、企業のブランド力を上げていくことで、新たに優秀な人材を集めることもできるだろう。

もう1つは、「辞めたくならない職場づくり」だ。これまで離職していった社員たちが、どんな理由で去って行ったのかを分析しているだろうか。たとえば、キャリアアップを望む人が多いなら、資格取得の支援制度を整備する必要がある。また、待遇面に不満を感じている人が多いなら、早急に対策を検討していくべきだ。辞めたい人を引き留めるのではなく、辞めたいと思わせない環境をつくっていくことが大切なのではないだろうか。

退職の意思が固まってからカウンターオファーを提示しても、そのタイミングでは遅すぎる。最も理想的なのは、直属の上司が早い時点で部下の悩みに気づくことだ。会社やチームの業績にばかり目を奪われると、つい小さなサインを見落としてしまう。働き方が多様化していくこれからの時代、個々の管理能力はますます問われることになるだろう。

文・渡邊祐子(フリーライター)/ZUU online

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