「人生100年時代」と呼ばれる現在、生涯に渡って必要となる資金も増える可能性が高くなるのはほぼ間違いないとところです。そんな中で、自身の老後のため、または家族のため、今のうちに資産形成を始めたいと考えている方も多いのではないでしょうか。

「お金を投資信託などで運用し、じっくり資産を作っていきたい」。そんな考えを持った方に最適な制度がNISA(少額投資非課税制度)です。

2014年1月に制度が開始されたNISAですが、2019年12月末現在は国内居住の成人の10人に1人以上が利用しており、上手に活用することで非課税制度を生かしてより大きな資産を形成ができます。

一方で、NISAには「知らないと怖い落とし穴」があります。NISAのデメリットを知らずにNISA口座を開設したり、NISAを利用して投資を行ったりすると、思わぬ損失や手間がかかってしまい、資産形成にも悪影響を及ぼしかねません。

今回は、NISAの概要に加えて、NISAについて意外と知られていない「NISAのデメリット」を紹介します。

NISAとは

「NISA(ニーサ)」は、株式や投資信託の投資資金における売却益や配当への税率を、年間120万円まで原則5年間ゼロとする制度です。

昨今、話題となっている「老後資金2,000万円問題」は、私たちに長期の資産形成の必要性に目を向けさせることになりました。そこで注目を集めた資産形成方法の1つがNISAです。NISAはiDeCoと並び、国が自分たちの資産を自ら形成するために用意した非課税制度といえます。

個人型確定拠出年金制度であるiDeCoよりNISAはより資産運用の色が濃く、株や投資信託から様々な商品を選ぶことができます。

また、原則として途中で引き出すことができないiDeCoと比べ、NISAは投資途中でも商品を解約することができます。急に現金が必要になったときに解約できる安心感や、保有商品が大幅に値上がりした際に解約し、利益を確定させることも可能です。基本的にNISAは老後資金の備えるために長期に渡って資産を運用する制度ですので、途中解約や大幅な利益を狙うことは本来の目的とはやや異なりますが、いつでも現金化できることは、初めて投資を行う方などにとってはメリットに感じられるのではないでしょうか。

株式や投資信託の売却時には通常、買い付け時に支払った代金以上の価格で売却が成立した場合、その差額となる「売却益」に対して約20%の所得税・住民税が掛かります。また、株式や投資信託を保有していることでもらえる「配当金」や「普通分配金」にも、同様に約20%の住民税・配当金が掛かり、自動的に徴収されます。

しかし、NISAを利用して年間120万円を上限に買い付けた株式や投資信託については、「売却益」に対して住民税・所得税はかかりません。また、投資信託から得られる「分配金」も非課税となり、株式保有によって得られる「配当金」は受け取り方法を「株式数比例配分方式」に設定することで非課税対象となります。

なお、NISAの対象商品は「国内公募投資信託」と「国内上場株式」「国内上場REIT」「国内上場ETF」等に限定されています。社債、国債などの「債券」や外貨MMFなどの「外国投資信託」、また海外市場に上場している株式やETFはNISAを利用して買い付けることができません

NISAを利用するための条件

NISAは日本国内居住の20歳以上の方のみが利用可能です。そのため、日本国内から住民票を除票している方はNISAを利用できません。また、日本国内居住の0歳~19歳の方は通常のNISAではなく「ジュニアNISA」口座を利用できます。

NISAを利用するためには、必ず国内の金融機関(銀行や証券会社)にて証券口座を開設する必要があります。

証券口座開設時、または証券口座開設後にNISA口座の開設を申し込むことで、税務署の審査等を経て約2~3週間程度でNISA口座の利用が可能となります。

なお、平成31年1月からは、金融機関によってはNISA口座開設申し込みを行った当日よりNISAを利用した取引を行うことができるようになりました。

NISA口座および証券口座の申し込みには「マイナンバー」と「本人確認書類」の提示が必要になります。

本人確認書類は運転免許証やパスポートのほかに、住民票や保険証などでも認められる場合があります。マイナンバーは通常「マイナンバー通知カード」または顔写真付きの「個人番号カード」のいずれかが必要ですが、紛失してしまった場合は各自治体で取得できる「マイナンバーが記載された住民票」を利用することもできます。

NISAのメリットとは

NISAには3種類ある

NISAと一口でいっても3種類あります。「NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」です。

「NISA」は個人投資家のための税制優遇制度としてスタートしました。後述しますが、NISAでは毎年120万円の非課税投資枠が設定されており、株式・投資信託等の配当・譲渡益等が非課税対象となります。

「つみたてNISA」は少額からの長期積み立てが可能となっており、最低額は100円です。2018年1月からスタートした制度で、年間40万円まで商品を購入でき、非課税期間は20年間に及びます。一方、購入できる商品は、長期の積み立て投資に適した投資信託に限定されています。

つみたてNISAは少額からスタートできることから、特に多くの投資初心者が関心を持ち、投資デビューする機会も増えるとみられ、そのため商品にも法令上の条件が設けられています。つまり、リスクの高い商品はつみたてNISA向きではないと判断されるために、ラインアップされることはありません。

金融庁の「つみたてNISA早わかりガイドブック」によると、つみたてNISAの対象となる投資信託は、安定的な資産形成を目指す、長期・積立・分散投資に適した商品となるよう、

1)販売手数料が0円(ノーロード)で信託報酬も低い商品
2)頻繁に分配金が支払われない商品
となっています。

このように、少額から投資できリスクも比較的低いことから手軽に始められる特徴があります。

「ジュニアNISA」は、その名の通り、未成年者を対象とした少額投資非課税制度です。2016年度から開始され、0~19歳を対象に、年間80万円分の非課税投資枠が設定されています。親が通常のNISAを活用し、子がジュニアNISAを活用すれば、一家としては数百万円の非課税投資枠を利用できるメリットがありますが、口座開設者が18歳になるまで払い出しができないといった制限もあります。これは、ジュニアNISAが口座開設者の将来の資産形成(教育資金や結婚資金など)を目的とした制度であるためです。

また、NISAの商品の特徴としては、繰り返しになりますが、長期運用に適したものが多いということです。国の政策の1つとしてスタートしたこともあり、商品も投資でありながら長期的に利益が見込め、リスクも分散されるなど比較的安全性が高いものが揃っているといわれています。これも投資を始めようとしている人にとって、安心できる要素ではないでしょうか。

NISA最大のメリットは「税金がかからないこと」

そのNISAを利用することで得られる最も大きなメリットは「売却益や配当等に掛かる税金がゼロになる」という点です。通常、株式や投資信託を売却した際に利益が出た場合、売却益に対して約20%の所得税・住民税が掛かります(2020年3月現在は復興特別所得税を含めて20.315%)。

例えば、投資信託を120万円で購入したとします。その投資信託の評価額が150万円まで値上がりしたタイミングで売却した場合、買い付け価格と売却価格との差額である30万円が、売却益として課税対象になります。この場合、売却益30万円に対して掛かる税金は6万945円です。
しかし、投資信託120万円分をNISA口座で購入した場合は、150万円まで値上がりしたタイミングで売却をしても、売却益に対して税金はかかりません。

以上のように、NISAを利用して株式や投資信託を購入することで、非課税期間内に買い付けた商品がどれだけ値上がりしても、売却時に生じる売却益に対して課税されない点がNISAの最も大きなメリットであると言えます。

NISAを利用することで非課税となるのは売却益だけではなく、投資信託から得られる「普通分配金」や、株式数比例配分方式で受け取る国内株式の「配当金」やETF・上場REITの「分配金」も非課税対象となります。

非課税以外にも様々なメリットが

まず、NISA口座の開設自体が原則無料で、20歳以上の国内居住者なら誰でも利用できる点です。iDeCoのような年齢の上限制限はなく、職種ごとに投資できる金額の上限が変わることもありません。

また、NISAは、原則で中途解約ができないiDeCoや、口座開設者や引き出し年齢に条件のあるジュニアNISAなどと比較して投資家に対する制限の少ない制度で有るため、投資経験が少ない人であっても気軽に利用できます。

NISAの投資金額の上限は年間120万円までですが、投資金額の下限はありません。年間120万円以下であれば、1円以上から好きなタイミングで好きな金額分だけNISAを利用した投資を行うことができます。

運用によって生じた資産の使い道も自由です。老後資金やこどもの教育資金の準備、家族旅行のためなど、利用目的を自分で自由に決められます。

なお、NISAは途中解約が可能です。そのため、急にお金が必要となった場合でもNISAで買い付けた商品を売却して現金化を行い、手元にお金を引き出すことができます。

さらに、NISAで生じた売却損益や、非課税対象として受け取った分配金や配当金については、確定申告の必要もありません。