総額492億ドル(約5兆円 *1米ドル=109円換算)もの純資産を保有し、「世界一裕福な一族」に名を残すドゥーマス家。王族ご用達の馬具工房にすぎなかったエルメスを世界の高級ブランドに進化させた5代目CEOジーン・ルイス・ドゥーマスの偉大な功績と、6代にわたり家族に受け継がれるビジネス戦略の秘訣を探ってみましょう。

大胆なアプローチでイメージチェンジに成功

エルメスは1837年、高級馬具メーカーとして、ジーン・ドゥーマスの祖父が設立しました。1920年代に入る頃には、自動車が普及し馬具の市場が縮小したことや、ウェールズ公から要望があったことにより、旅行用・スポーツ用の皮製品メーカーへと、事業を多角化させます。

ジーンの父親で4代目CEOだったロバートは、ベルトやスカーフといった小物を、エルメスの商品ラインに加えます。しかし、エルメスに定着していた馬具メーカーのイメージは、まだまだ根強いものでした。エルメスを「世界中の女性が憧れる高級ブランド」へと変貌させたのは、1978年に経営権を受け継いだジーンです。

ロバートの他界によりトップの地位に就いたジーンは、エルメスのイメージを一新し、若い顧客を獲得する戦略として、エリック・ベルジェールやバーナード・サンツといった、才能あふれる先鋭デザイナーを起用。

パイソンのオートバイのジャケットやダチョウの皮のジーンズなど、新しい高級ラインを導入し、ファッション業界に旋風を巻き起こします。

やがて、「ケリーバッグ」や「コンスタンス」「バーキン」といった、大ヒット作を次々と世に送り出し、高級ブランドとしてのエルメスの地位を揺るぎないものにしました。