ラシク・インタビューvol.192
STUDIO BUKI株式会社 代表取締役 コズロブふくみさん
読者のみなさんの中には、「この先フリーランサーになりたい」、「起業してみたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。LAXICではこれまでも、コロナ禍で働き方が変わりキャリアチェンジを視野に入れるようになったという事例をお届けしてきました。
一方で、いざ起業となると「事業計画書が書けない」、「登記や資金調達など難しそうなことばかり」とそのハードルの高さを実感したという意見も…。
今回インタビューさせていただいたコズロブふくみさんもそんなひとり。2019年にパーソナライズ絵本(※)を制作するSTUDIO BUKI(スタジオブーキー)株式会社を立ち上げるまでにはたくさんの迷いやチャレンジがあったそうです。
「自分にできないことは人に頼ろう!」とポジティブに周囲を巻き込み、パートナーのイゴールさんとともにスピード感を持って疾走するコズロブふくみさん。自分らしさを活かす事業の作り方と、起業ステップついてお話を伺いました。
(※)子ども一人ひとりが主人公となり物語に登場する、世界に一冊のオーダーメイド絵本
「いつか独立したい!」という想いを行動に変えた父の言葉と夫のサポート
編集部:ふくみさんはご自身のブログで、「起業に至るまで8年かかった」と仰っていますね。そもそも、起業を志したきっかけは何だったのでしょうか?
コズロブふくみさん(以下、敬称略。ふくみ):私が独立を志したのは、今から10年前の2011年でした。きっかけは、高校生のころから父によく言われていた言葉でした。父はサラリーマンではあったのですが、月の半分家にいないなと思ったらあとの半分は家にいるようなフレキシブルな働き方をしていたんです。授業参観や運動会にも、必ずいて(笑)。
そのせいなのか、私の性格を見越していたからかは分かりませんが、ずっと「ふくみは独立したほうがいい」と言われていたんです。
編集部:お父様の言葉が原体験となったのですね。
ふくみ:といっても、ずっと聞き流していたんですけどね。でも、あるとき上司との面談で、「君はよくやってるから、このままもっと上を目指していこう!」と言われ、違和感を覚えたんです。「私、会社の中で上を目指したいんだっけ?」と。
上司からは「同期に負けないようにな!」と激励されたのですが、私の中では同期に勝つために働くイメージがなくて…。目の前の楽しいことに取り組むのが私のモチベーションなのに、と改めて自己分析をしたとき、父の言葉を思い出したんです。「そうか、独立か!」と。
編集部:なるほど。そしてそこから独立のために、どんな行動を?
ふくみ:当時は、会社で働きながら起業スキルを身につけようと考えたので、まず転職をしました。2社目はコンサルティング会社、3社目はベンチャー企業に。ただ、3社目で気づいたんです。会社では、起業に必要な“0から1”の部分は学べない、と…。
編集部:確かに自分で起業となると0から1のフェーズですもんね。
ふくみ:それで、思い切ってもう独立することに決めました。でも、当時は「独立する」ということだけが先に立っていて、具体的なプロダクトが描けていなくて。独立するからには自分のプロダクトを持ちたいと思っていたものの、何がいいのか具体化できなかったんです。
編集部:そこでどうされたのでしょうか?
ふくみ:まずは夫に協力を依頼しました。彼はコンサルティング会社に勤めていてビジネス戦略を考えるのが得意なんです。
コズロブ イゴールさん(以下、敬称略。イゴール):コンサルティング会社で働いてきた経験から、「テクノロジーを駆使していかに新しいビジネスをつくるか」についてはスキルを持っていたので、一緒にやることにしたんです。私自身も「プライベートで何かプロジェクトをやりたい」と思っていたのも大きいです。
試行錯誤の末にたどり着いたのは、子どもが物語の主役になれるパーソナライズ絵本
編集部:パーソナライズ絵本の制作というビジネスにたどり着く以前はどのようなプロダクトを考えていたのでしょうか?
ふくみ:輸入販売や和菓子の海外向け販売、猫のWEBメディア立ち上げなどですね。夫にアドバイスをもらいつつ、二人で事業計画を進めていたのですが、当時はいずれもチャンスを掴めずにいました。そんな中、たまたま目にしたのが、海外で市場が伸びてきていた子供ひとりひとりが主人公になれるパーソナライズ絵本でした。
絵本をDX(デジタルトランスフォーメーション)化することで、子どもの名前や誕生日によって異なるストーリーやイラストが楽しめるのが魅力的だなと。
編集部:さまざまなビジネスを模索されていたので、パーソナライズ絵本には何かピンとくるものがあったのでしょうか?
ふくみ:私はもともと絵本が大好きで、幼いころはよく主人公を自分に置き換えて楽しんでいました。「エルマーとりゅう」なら「ふくみとりゅう」、「ジャックと豆の木」なら「ふくみと豆の木」のように(笑)。
でも、成長するにつれて、「私には龍の友だちはいないし、王家出身でもない。」と気づいたんです。「どうやら私は物語の主人公にはなれないらしい…」と。
編集部:なるほど…。
ふくみ:現実と空想の間を線引きしたのですが、息子を出産して、海外のパーソナライズ絵本に触れたとき、その記憶がよみがえったんです。パーソナライズ絵本は一人ひとりの子どもが主役です。まさにそんな本を作りたいと思ったんです。
編集部:それまでのプロダクトとは、違う手応えを感じたのですね!
ふくみ:「私が欲しかったのはこういう絵本。日本のパーソナライズ絵本ブランドをつくりたい!」と思いました。その時点で、会社員時代に得たマーケティングスキルや、独立後に養ったSEOやSNS運用の知識があったので、それを総動員したら、いつの間にか形になっていました。