通常の投資で利回りを得づらくなっている状況で、あえて権利関係が複雑な不動産を購入することで利回りを追求しようという動きも見られる。難しいゆえに利回りが出やすい不動産もあるわけだが、あえて権利関係が複雑な投資をすることにどの程度メリットがあるのかをみていきたい。

借地権の不動産

借地権付住宅というものを聞いたことがあるだろうか。借地権とは「土地を借りる権利」のことだ。借地権付住宅を買うと、土地は借りるのだが、建物は自分の所有になる。建物は所有になるので、自由に改築をすることができる。

実感としては土地ごと家を買うのと変わらない。借地権付住宅を買うのは、所有権付住宅を買うのに比べて安くなる。所有権として住宅を買う場合の、何割か安い感覚で買えるのだ。駅から近い物件であれば、賃貸に出せば利回りは良くなる。ただし、この場合のデメリットは銀行融資を得にくいという事であろう。全額キャッシュや少額の融資で買えるような投資家にはこのデメリットを逆手にとって投資するのも面白い。

私道にしか接していない不動産

次は私道にしか接していない奥まった不動産を買うという選択肢だ。通常、生活しているときに意識することはないと思うが、道路には私道と公道がある。

公道は国や地方公共団体によって管理されており、舗装の修繕、給排水管の更新などは国や地方公共団体が行ってくれる。一方、私道は、個人や企業が、自らの所有地の一部または全部を道路として使っているものであり、自ら管理を行うものである。

通常、一戸建てや土地を購入するときに気をつけないといけないのが、前面道路が公道か私道かを確認することである。戸建分譲業者が、大きな土地に複数の物件を建築・販売するケースは多い。例えば4軒以上の一戸建てを建築する場合、公道に接している面から奥の方へ道路を敷設し、その周囲に建物を建築することがある。その新たに敷設した道路が私道である場合が多い。

最近の開発業者は一戸建てを分譲するときに「私道負担付」として販売する方法がとられるケースが多い。私道負担があるというのは、『その私道に接する敷地の所有者全員で共有する』ということになる。こういった分譲一戸建てを購入するときに、分譲業者や仲介業者によって、私道共有のリスクについて重要事項として説明されているはずなのだが、よく理解していない所有者が多い。

私道のせいで家が売れない?

そもそも、いろいろな近隣住民との共有私道のある不動産を所有することが、リスクと言えるのかもしれない。将来、転勤などで家を売りたいと思っても、家が公道に面していない場合、検討に入った買主が融資付けするときに、私道の掘削・通行許可の取得が求められる場合が多い。その場合は、売主だけでなく私道を共有している近隣の所有者全員から承諾書をもらう必要があるのだ。

共有道路という事でお互い様だから簡単に承諾書をもらえるだろうと思いがちなのだが、買主は他人だから協力しないというケースが多いのだ。そこで承諾料をいくらか払って承諾書をもらうケースもあるのだが、頑なに署名をするのが怖いから絶対に承諾しないという近隣住民がいることさえある。そうなると買主が銀行からの融資が得られず、売買が成立しなくなってしまう。そうなると、現金で買える買主を探さざるを得ない。即ち、売却価格が市場価格を大きく下回る可能性が高くなるのだ。