老後のお金について考えるうえで、「いつから年金を受け取り始めるか」はとても重要なポイントです。早くすることも遅くすることもできますが、それぞれメリットとデメリットがあります。詳しく見ていきましょう。

年金の「繰り上げ」「繰り下げ」とは

(写真=PIXTA)

老後に受け取れる年金(老齢年金)の受け取り開始は、「65歳から」というのが基本ですが、希望すればそのタイミングをずらすこともできます。受け取り開始時期を早めることを「繰り上げ」、あとに延ばすことを「繰り下げ」といいます。

繰り上げは60歳から65歳になるまでのあいだ、繰り下げは66歳から70歳までのあいだで、1ヵ月単位でいつから受け取り始めるか指定できます。

老齢年金は一度受け取り始めたら、亡くなるまで一生涯受け取り続けることになります。それならできるだけ早く受け取り始める方がお得と考えるかもしれません。しかし、年金は繰り上げするとその早めた期間に応じて1ヵ月あたりの支給金額が少なくなります。逆に繰り下げの場合は、遅らせた期間に応じて支給金額が多くなります。

より長い期間に渡って減額された年金を受け取り続けるか、期間は短くなっても増額された年金を受け取り続けるか、どちらが自分にとって都合がいいのか考えて選ぶ必要があります。
 

 

受け取り時期を変更するメリット&デメリット

(写真=PIXTA)

繰り上げと繰り下げ、それぞれの特徴は以下のとおりです。
 

繰り上げ受給 繰り下げ受給
メリット ・早く受け取れる
老後の資金準備が少なくても、
60歳で無職になっても、
年金の収入で
家計を安定させやすい
・1ヵ月あたりの年金額が増える
・長生きするとお得
・途中で気が変わったら
さかのぼって一時金として
受給することもできる
デメリット ・1ヶ月あたりの年金額が減る
・長生きすると損
・「1人1年金」の原則があるため、
老齢年金を受け取り始めると
障害年金や遺族年金に影響する
・受け取り開始が遅くなる
・加給年金
(厚生年金加入歴20年以上で
年下の配偶者がいる人などが
受け取れる追加分)は、
繰上げしても増額されない
・年金額が大きくなると、
税金や社会保険料の負担が
増すことも

1ヵ月繰り上げすると、1ヵ月あたりの年金額は本来もらえたはずの金額より0.5%減少します。最も早く受け取れるように、本来の65歳開始から5年早めて60歳を開始時期とした場合は、0.5%×12ヵ月×5年=30%の減額となります。

逆に、1ヵ月繰り下げした場合は、1ヵ月あたりの年金額が0.7%増加します。本来の65歳から5年遅らせて、最も遅く受け取ることになる70歳を開始時期とした場合は、0.7%×12ヵ月×5年=42%の増額になります。