海外在住の日本人がどれくらいいるかご存じだろうか。

外務省の海外在留邦人数調査統計(平成28年要約版)によると、在外公館に在留届を提出している日本人は131万7078人(2015年10月1日現在)。これは、さいたま市の推計人口127万5331人(16年10月1日現在)を上回っている。

実際には、在留届を出していない人も多く、200万人前後の日本人が海外に居住しているとみられている。

職業別では、民間企業関係者が約35%(46万2462人)を占め、留学生・研究者・教師17万8449人、政府関係者2万3463人などとなっている。

海外に進出している会社の規模や業種は多岐にわたり、いつ海外赴任を命じられてもおかしくない。海外に赴任を命じられたら、年金や医療保険、税金はどうなるのだろうか。

海外赴任者の年金は給与体系や社会保障協定で異なる

日本の年金受給要件は、通算25年(300カ月)以上加入していることだ。

厚生年金適用事業所である民間企業の勤務者は厚生年金、公務員は共済年金、その他の居住者は国民年金に加入する。国籍条項はない。海外に赴任している間の年金や健康保険は、給与体系や社会保障協定の有無で異なる。

海外赴任者の給与体系は3つ、支給方法は2つのパターンがある。

給与体系は日本社が全額負担、日本社と現地法人等が分担、赴任先の現地法人等が全額負担。

支給方法は現地で全額支給と現地と日本で分けて支給するパターンがある。日本社が払う円ベースの給与を現地で受け取る場合には為替変動で手取り額が上下することもある。

日本社から給与が支払われる民間企業の勤務者は、通常は海外赴任中も厚生年金の加入者となる。現地法人が負担するケースでも、給与の一部が日本で支給される場合は厚生年金に加入できる。給与の全額または一部を日本の官公庁が負担する公務員は共済年金加入者のままである。

給与の全額を現地法人などが負担し、かつ、現地で全額を受け取る場合、厚生年金や共済年金には加入できず、赴任先の年金に加入するか、日本の国民年金に任意加入する。任意加入できるのは日本国籍者のみである。

日本は2016年10月時点で19カ国と社会保険協定を締結し、16カ国との間で協定を発効している。社会保障協定には「保険料の二重負担防止」と「年金加入期間の通算」がある。

多くの国が、国籍に関わらず居住者に年金加入を義務付けているが、日本の厚生年金、共済年金、国民年金のいずれかの加入者で、二重負担防止の協定国への赴任者は現地の年金加入が免除される。

加入期間通算の協定国への赴任者は、現地の年金加入期間は日本の年金の受給要件である300カ月に合算される。日本での加入期間も相手国の加入期間とみなされ、双方から受給できることもある。