投資信託を買うときに一番気になるのは、「損をしないか」ではないでしょうか。そして、損失について考えるときにぱっと目につくのが、投資信託のパンフレットなどに書かれている「リスク」という言葉。
しかし、初心者の方は案外投資信託のリスクについて勘違いしているケースも多い傾向です。今回は、投資信託を買う前に知っておきたいリスクについて解説します。
■投資の世界でのリスクの意味
「リスクという言葉の意味は何だと思いますか?」と質問されて、「危険」と回答した人は、少し勘違いをしているかもしれません。資産運用の世界では、リスクは元本割れなどの危険性だけでなく、プラスになることも含めた、価格の「振れ幅」の大きさのことをいいます。
リスクが大きい
振れ幅が大きいため大きくマイナスになることもあるが、大きくプラスになることもある。
リスクが小さい
振れ幅が小さいため少しマイナスになることもあるが、少しプラスになることもある。
専門的には、金融商品の「リスク」の大きさは「標準偏差」という指標を使って比較します。標準偏差の数値が大きいほど、値動きが大きい(=上下の振れ幅が大きい)ため、リスクが高いです。
資産運用で「どんなリスクがあるのか」は、投資対象によってあらかじめ決まっています。そのため、事前にリスクを知っておけば、「どんなときに値動きが大きくなるのか」をイメージすることができるでしょう。
投資信託にまつわるリスクとは?
投資信託には主に6つの「リスク」があります。
価格変動リスク
投資信託内の株式や債券の価格が変動するリスクのことです。株価は買いたい人が多ければ上がり、売りたい人が多ければ下がります。投資家の売買の判断材料になるため、国内および海外の政治・経済情勢、企業の業績などの変化で価格にも影響を受けます。
為替変動リスク
為替レートが変動することで発生するリスクのことです。外国通貨建ての株や債券などに投資する投資信託の場合、為替変動は基準価格を動かす大きな要因のひとつになります。一般的には円高になれば基準価額にマイナス、円安ならプラスの影響です。
金利変動リスク
金利が変動するリスクのことです。債券の場合、一般的に、金利が上がると債券価格は下落し、金利が下がると債券価格は上がります。また、満期までの期間が長い債券ほど、金利変動の影響を大きく受けがちです。株式の場合、金利が上がると借金が多い企業ほど財務状況を懸念され株価にも影響がでます。
信用リスク
債券などを発行する国や企業が、財政難や経営不振などに陥り、利息や償還金をあらかじめ定めた条件で支払ってもらえなくなるリスクのことです。信用リスクは、格付け(ムーディーズ、S&Pなどが有名)で判断することができます。
カントリーリスク
海外に投資する際、投資先の国や地域の政治・経済が混乱し、証券市場や為替市場が不安定になった場合、資産の価値が変動したり、回収が困難になったりするリスクのことをいいます。
流動性リスク
売買が極端に少なくなり、買い手がなかなか現れない場合、希望するタイミングで売れなかったり、大幅に安い価格でしか売れなかったりするリスクがあります。
投資信託のリスクは「目論見書」で確認することが大事!
目論見書(もくろみしょ)とは、投資信託の取扱説明書に当たるものです。目論見書には、投資信託の商品ごとに、「どのようなリスクがあるか」について書かれているので、ぜひチェックしましょう。
ファンドの目的、投資対象、運用実績、分配方針、手数料や諸経費といった重要な情報も書かれています。目論見書を読んでも分からないことがあれば、金融機関に遠慮なく聞いてみてください。分からないままにしないことが大切です。
トータルリスクとトータルリターンを比較して投資信託を選ぼう
投資信託では、リターンとリスクの両方を比較して選ぶ必要があります。まず、リターン(収益)は、値上がり益ばかり気になりがちですが、受け取った分配金も合わせた総合的な投資収益を含めた「トータルリターン」で判断するのが正解です。
例えば、ある投資信託の買付金額が100万円だったとして、その後、基準価格が10%下落して評価金額が90万円になったとします。もし、分配金を30万円分受け取っていたら、トータルリターンはプラス20万円ということになります。
- トータルリターン:値上がり(値下がり)+分配金
- トータルリスク:どれだけ値動きの幅が大きかったか。標準偏差
この2つの数値をみると、似たような内容の投資信託でもかなり違うものです。運用報告書や投資信託の比較サイトなどで確認してみましょう。
リスクはクスリ(薬)です
ある資産運用セミナーでは、講師が「リスクはクスリ(薬)です」と話して笑いをとっていました。冗談のようですが本当のことなのです。利益を出すために、投資信託のリスクはしっかり理解しておきましょう。
深川美幸(ファイナンシャルプランナー(CFP))
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