和歌山県紀の川市の粉河寺は、770年に創建された歴史ある寺院。境内の大門や中門、本堂といった建物は、どれも大きく立派で、圧倒されるような迫力です。国の名勝に指定されている庭園もあるので、散策してみてはいかがでしょうか。
粉河寺とは
粉河寺(こかわでら)は、和歌山県紀の川市にある寺院です。宝亀元年(770年)に、大伴孔子古(おおとものくじこ)によって創建されたといわれており、日本最古の観音巡礼「西国三十三ヶ所」の第三番札所でもあります。ご本尊として、秘仏の千手千眼観音菩薩が祀られています。
境内には、いずれも重要文化財の大門、中門、本堂といった建物が立ち並ぶほか、巨石と樹木を組み合わせた独特の庭園もあり、見どころが多いです。また桜の名所としても知られており、春には多くの観光客が訪れます。
境内を散策しよう
大門
JR和歌山線の粉河駅から、北に延びる通りを進むと、朱塗りの大きな楼門が見えてきます。宝永4年(1706年)の建築とされる大門です。和歌山県では、高野山や隣の岩出市にある根来寺に次ぐ大きさを誇り、重要文化財にも指定されています。
門の両脇には、金剛力士像が鎮座しています。仏師春日の作と伝わる仏像は、桂の巨木で作られているそうです。鋭い目つきでこちらを睨みつけるようにも見え、高さもあるので、とても迫力があります。
中門
中門は、大門から本堂に至る回廊にある楼門です。建立は天保3年(1832年)と、大門よりは新しく、やや小ぶりですが、良質な欅で造られている門は、重厚さも感じられます。
こちらには、「風猛山」と書かれた額が掲げられています。これは、この粉河寺に付いている山号(称号)なのですが、紀州徳川家十代藩主の治宝(はるとみ)の直筆によるものだそうです。
名勝 粉河寺庭園
さらに進むと、本堂が見えてきますが、その前に庭園があるので注目してみてください。粉河寺庭園は、桃山時代に造られた枯山水庭園です。大きな石組にサツキ、ソテツ、松が植えこまれた珍しいもので、国の名勝にも指定されています。
筆者は秋に訪れましたが、毎年5月下旬から6月上旬頃には、ピンク色のサツキが咲くので、華やかな印象の庭園になるのではないでしょうか。
本堂
庭園の横の階段を登ると、本堂が建っています。現在のものは、享保5年(1720年)に再建されたものですが、西国三十三ヶ所の中で最大とされる建物は、非常に立派で存在感があります。
こちらは、礼拝や読経のための「礼堂」と、寺院の中心の建物である「正堂」が結合しているのですが、前者が一重屋根、後者が二重屋根で、それらが合わさった構造はとても珍しいのだそうです。
千手堂
千手堂は、本堂左手にある建物です。宝暦10年(1760年)の建築とされる宝形造りの屋根で、細部の建築様式は、本堂と似ている部分があるそうです。正面には千住観世音菩薩が安置され、両脇には、紀州歴代藩主やゆかりの人物の位牌が祀られています。
粉河産土神社
本堂と千手堂の間にある階段を登ると、粉河産土神社(こかわうぶすなじんじゃ)があります。こちらは、紀の川市粉河地区や粉河寺の氏神であり、境内には、江戸時代中期のものとされる春日造りの美しい社殿が建っています。毎年7月には、紀州三大祭りの粉河祭りが行われ、多くの人で賑わいます。