多くの成功者が早起きを習慣にしている一方で、朝が苦手な成功者も少なくありません。重要なのは起きる時間帯ではなく、生産性を上げるための環境作りです。「成功者には朝型が多い」といわれる理由を知り、生産性を上げるポイントをしっかりとクリアすれば、「遅起きでも成功を呼ぶ」ことは可能なのです。

成功に早起き、遅起きは関係ない?

Appleのティム・クックCEOやヴァージングループのリチャード・ブランソン会長、ドナルド・トランプ米大統領など、早起きのメリットを仕事に活かしている成功者はたくさんいます。その一方で、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOやAmazonのジェフ・ベゾスCEO、「オマハの賢人」の異名をもつ偉大な投資家ウォーレン・バフェット氏など、早起きは苦手と認めている成功者もいます。

睡眠時間も人により異なり、例えばザッカーバーグCEOやバフェット氏、ベゾス氏は8時間しっかりと眠ることを日課にしていますが、トランプ米大統領や「鉄の女」の異名で知られた故・マーガレット・サッチャー英首相、著名IT実業家マリッサ・アン・メイヤー氏など、3~4時間の睡眠をとれば十分な成功者もいます。

ただしウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、「睡眠をとることは時間の無駄だ」と考える「Sleepless Elite(眠らないエリ―ト)」は、人口の1~3%しか存在しないという極めて希少な人々のようです。残りの97~99%の人々にとっては、普通に眠る時間が必要でしょう。

「三文の得」のカギをにぎるのは生産性

これらの成功者の例を見る限り、特定の起床時間や睡眠時間を「成功に影響する大きな要因」と判断することは難しいといえます。

それでも「朝型には成功者が多い」といわれる理由として、

  • 脳の働きが活発で心身ともにエネルギーに満ちている
  • 時間の余裕をもって一日をスタートさせることで精神的な余裕が生まれ充実した一日を過ごせる
  • 自然光をたっぷり浴びることで頭がスッキリする
  • 規則正しい睡眠サイクルが習慣化しやすい ことなどが挙げられるのではないでしょうか。

    こうしたメリットは、すべて生産性の向上に貢献するといえるでしょう。時間や労力を効率的に使うと仕事が大幅にはかどるほか、脳が冴えることで意思決定のスピードが上がり、革新的なアイデアが生まれやすくなります。

    しかし“良質な睡眠”が十分にとれていない場合、毎日6時に起床したところで頭も体も眠りから覚めず、生産性の高い行動につながらないのではないでしょうか。それどころか、眠気や倦怠感から日中も仕事に集中できず、パフォーマンスが低下する可能性もあります。

    朝型か夜型かは遺伝子が決める?

    「生産性を向上させるための“良質な睡眠”が成功のカギをにぎっている」と理解したところで、次に良質な睡眠について考えてみましょう。

    ナショナル・スリープ・ファウンデーション(NSF)は、成人(26~64歳)にとって理想の睡眠時間を7~9時間と定義しています。しかし前述した通り、最適な起床時間や睡眠時間は個人差があり、理想の睡眠時間が必ずしも良質な睡眠に直結する、とはいえないでしょう。

    また、「朝型か夜型かにはゲノム(DNAの全遺伝子情報)がある程度関係している」との、興味深い研究報告もあります。

    これは英国エクセター医療大学のサミュエル・ジョーンズ博士らが2019年に発表したもので、約70万人のヒトゲノムと睡眠モニターデバイスから収集した8,500人の睡眠パターンを分析した結果、朝型に関連性のあるゲノムが350種類以上特定されました。

    朝型ゲノムの種類が最も多い人は最も少ない人に比べ、就寝時間の中央値が25分早かったといいます。

    「静かな環境で仕事に集中したい」という理由で、クックCEOやペプシのインドラ・ヌーイ元CEOを真似て午前4時に起床しても、「頭がぼんやりするだけで何もする気が起きない」という人は朝型ゲノムの種類が少ないのかも知れません。