大学生や就活生の中には、「いくら稼げるかを軸に職種を選ぶ」「幸せな生活のためにお金がほしい」と考える人もいるのではないでしょうか。しかし、年収が高いほど幸福なのではなく「年収800万円が幸福度のピーク」という研究結果があります。今回は、年収と幸福度の関係を考察し、20代の人生設計で何が大切かを検討します。

幸福度のピークは年収800万円?

一般的に、「高年収な人がうらやましい」「もっとお金持ちになりたい」と考える人は多いでしょう。「年収が高い=幸せ」という考えは、多くの人が無意識に抱いています。しかし、この思い込みに疑問を呈する研究があります。2015年にノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のアンガス・ディートン教授は、年収と幸福度の関係について興味深い研究結果を発表しています。

この研究によると、年収が7.5万ドル(約800万円)を超えるとそれ以降は、年収と幸福度の相関があまり見られないというのです。この研究結果をかみ砕いて説明すると、年収800万円までは年収が上がるに従い幸福度が上昇しますが、それ以降は年収が増えても幸福度はあまり変わらないということになります。

日本で実施された年収と幸福度の調査

先ほど紹介したのはアメリカの研究ですが、実は日本でも内閣府が年収と幸福度に関する調査結果を発表しています。内閣府が2019年に実施した「満足度・生活の質に関する調査(第1次報告書)」でも、年収と幸福度の興味深い関係が示唆されています。

調査はWebで行われ、「現在の生活にどの程度満足しているか」について0~10点の11段階で質問したもの。調査結果によると年収100万円未満の人の幸福度は平均5.01、年収700万円以上1,000万円未満の幸福度は6.24で、1.23の差が開いています。

一方、年収1,000万円以上2,000万円未満の幸福度は6.52で、年収700万円以上1,000万円未満と比べて0.28しか差がないのです。アメリカの研究同様、やはり年収800万円程度を目安として、年収が幸福度に与える影響が薄れていくといえそうです。

さらに同調査では、年収3,000万円以上になると、逆に幸福度が下降するという衝撃的な結果となりました。幸福度は、年収3,000万円以上6.6、年収5,000万円以上6.5、年収1億円以上6.03と緩やかに下降していきます。年収1億円以上の人の幸福度はなんと、年収700万円以上1,000万円未満の人の幸福度よりも低いことが明らかになりました。