「善き女王ベス」と呼ばれたエリザベス1世。彼女から、ぜひ学んでいただきたいのが富の増やし方です。
孤島の小国だったイングランド王国
エリザベス1世の時代のイングランドは、ヨーロッパ片隅にある孤島の小国で、後に「大英帝国」と呼ばれるような強国ではありませんでした。国の財政状況も、先代の国王たちによる無理な戦争のツケがたたり、火の車でした。
こんな状況ですから、エリザベスは他国の王妃のように派手な振る舞いはできません。普段の服装はいたって質素。夕暮れ時、部屋が暗くなってきたので女官がろうそくに火を灯そうとすると、「まだ見えるから大丈夫。もったいないから火を消しなさい!」と、火を消させるぐらいの倹約家。そこまで節約せざるを得ないほど、国の財政は大変だったのです。
女王の赤字解決策
しかし、節約ばかりではどうにもなりません。一計を案じたエリザベス。前女王で亡き姉メアリーが、夫のスペイン国王・フェリペ2世に次から次へとプレゼントしていた高価な宝石類に目を付けます。
「男性にそのような宝石は必要ないでしょう」
「姉が差し上げたものよりも、もっと高価なものが簡単に手に入るでしょう」
義兄であるフェリペをそうおだてながら、姉が貢いでいた宝石類を全て取り戻します。そして、自分が身に着ける分を除き、他は宝石商に売却して換金しました。そのお金の一部で、謁見の際に必要な女王然とした立派な衣装をそろえ、残りは国の金庫に入れます。
「何だ。自分が着飾るためか」と思われるかもしれませんが、女王といえば「国の顔」。女王に謁見するために外国の大使がやってきたときに、その当の女王がみすぼらしい身なりをしていたら、「この国はこんなにも貧しいのか」と、国のイメージダウンにつながってしまいます。
ですから、「自分のためのオシャレ」というよりも、国のイメージアップ、国のための投資として、ときには豪華に着飾る必要もあったのです。