「国の負債」とも言われる国債。財務省が発表した2019年末における国債の発行額は、累計で1,110兆円を超え過去最高の金額となっています。これは国民1人当たりにすると、約900万円の負債を背負っていることになります。このまま国債の残高が増え続けても、日本は大丈夫なのでしょうか。そうした不安を払拭するには、まず国債について知ることが大切です。そこで国債の基礎知識を紹介し、どういった課題があるかを解説します。

国債って何?

2.今さら聞けない「国債」の基礎知識!仕組みと種類を解説
(画像=キャプテンフック/stock.adobe.com,『UpU』より引用)

国債の正式な呼び方は「国庫債券」で、「国が発行する債券」のことを指します。それでは債券とは何でしょう?

債券とは国、地方公共団体、政府関係機関、企業などが投資家からお金を借り入れるために発行する証書のことです。投資家がお金を貸す代わりに受け取る利子、元本の返済について明確にするために発行されます。

国会では毎年、国の予算が審議されますが、税収だけでは足りない分を補うために国債を発行し財源を確保しています。後述しますが、国債には大きく分けて「普通国債」と「財政投融資特別会計国債(財投債)」の2つがあります。また国債は、個人投資家などが投資利益を得ることを目指して保有する「金融商品」という性質も帯びています。

「国債費」と「国債」の違いは? 国債に関して説明されるとき、「国債費」と「国債」という単語が頻繁に登場します。この2つの違いはなんでしょう?

「国債費」とは発行にともなう金銭的なコストのことを言い、国債の発行、元金の国民への返還、返還時の金利の増加などがこれにあたります。そして債券としての借用証書のことを「国債」と言います。

国債は「普通国債」と「財投債」の2種類

国債は「普通国債」と「財投債」に大別されることはすでに述べましたが、もう少し詳しく説明しましょう。

普通国債

普通国債とは「歳入債」とも呼ばれ、政府の歳出(支出)を賄う資金を借りるために発行される国債です。この普通国債は「建設国債」「特例国債(赤字国債)」「年金特例国債」「復興債」「借換債」に分類され、建設国債と特例国債と年金特例国債は一般会計で発行され、収入も一般会計に繰り入れられます。

復興債は東日本大震災特別会計、借換債は国債整理基金特別会計においてそれぞれ発行され、収入も各特別会計の歳入となります。これらの普通国債はそれぞれ発行する目的が異なり、例えば建設国債の場合は公共事業などの財源などを確保するために発行され、復興債は復興政策における必要資金を調達するために発行されます。

普通国債の利息の支払いや償還財源(※返済するための資金源のこと)には、将来集められる税収が充てられます。

【普通国債の種類】
・建設国債:公共事業、出資金及び貸付金の財源を確保するために発行

・特例国債(赤字国債):建設国債を発行してもなお歳入が不足すると見込まれた場合、公共事業費以外の歳出に充てる財源を調達するために特別の法律のもとで発行

・年金特例国債:基礎年金の負担にともない、見込まれる財源となる税収等が入るまでのつなぎとして、2012年度と2013年度に発行されたもの

・復興債:東日本大震災からの復興施策を実施するのに必要な財源となる税収等が入るまでのつなぎとして、特別措置法に基づき、2011年度から2015年度に発行されたもの

・借換債:普通国債の償還額の一部を借り換える資金を調達するために発行

財政投融資特別会計国債(財投債)

財投債は、国の投融資活動である「財政投融資」の資金を調達するために発行される国債のことを指します。調達した資金は「財政投融資特別会計」における歳入の一部となります。

普通国債の利息の支払いや償還財源には将来の税収が使われることを先ほど説明しましたが、財投債の場合は財政融資の貸付回収金から行われます。

国が新たにお金を刷って負債を返済しないのはなぜ?

3.今さら聞けない「国債」の基礎知識!仕組みと種類を解説
(画像=キャプテンフック/stock.adobe.com,『UpU』より)

「国の負債」とも呼ばれる国債。ふと考えると、お金を追加で刷ればその負債を簡単に返すことができるようにも感じます。なぜ国はこれをしないのでしょうか?

その理由の1つが、「インフレーション(インフレ)」に対する懸念です。市場で流通する貨幣が極端に増えると、貨幣価値が暴落することで市場が大きく混乱するリスクが高まります。発展途上国では現在も実際に、貨幣の大量供給でインフレが起きているケースが見受けられます。

そのため日本においては、政府が自由にお金を刷らないよう紙幣の発行機関である日本銀行は法律で政府から独立する存在と位置付けられています。こうした仕組みから、国の負債が増えたからといって政府が日本銀行に新たなお金を刷るよう安易に命令できないようになっています。