居酒屋で日本酒のメニューを見ると、「甘口」「辛口」という表示を良く見かけます。
これ、正直、ちょっとよくわからないですよね・・・
カレーの「甘口」「辛口」と同じ表現なのに、感じ方は同じではありません。辛口のお酒を飲んでも、カレーのような辛さはないですし、タバスコのような辛さもありません。「辛い」もいろいろあるので表現を変えてほしいものです。
というわけで今日は、この「甘口」「辛口」についてお話します!
まずは、日本酒の作り方をざっくりおさらいしましょう。
日本酒の作り方
1:まず、米がコウジ菌の働きによって分解され、糖になります。
2:糖が、酵母の働きによって、アルコール(と、酸など)に変わります。
3:お酒のできあがり(ざっくりすぎてスミマセン・・・)
つまり、日本酒は
- 水
- アルコール
- 糖
- 酸など
の成分からできています。
酵母くんが頑張って働けば、糖分が少なくなって、アルコールは多くなります。
日本酒の甘さに大きな影響を与えるのは、「糖」の量です。
この糖の量は、酵母くんの頑張り度合で決まるわけで、酵母くんが頑張って働けば、糖分が少なくなって、アルコールは多くなります。この”酵母くんの頑張り度合”を示す指標があれば、甘さがざっくり分かりますね!
「日本酒度」
”酵母くんの頑張り度合”を示す指標が「日本酒度」です。
この日本酒度、「酵母のやつ、今日も元気に頑張ってるじゃねえか。今日は評価してやるか!」みたいな感じで、酒屋さんのその日のノリで決めてるわけではありません。
「日本酒度計」という計測機器でちゃんと測定しています。
日本酒度計はどうやって使うかと言うと、、、
日本酒にプカプカ浮かべて、浮き具合をメモリで読むだけです!カンタン!!
これは、酵母くんにとっては「こんな、へんな体温計みたいなやつのメモリだけで僕の頑張りが分かるわけない!もっとちゃんと僕の頑張りを評価してよ!」と憤慨ものですが、これでも十分に酵母くんの頑張りが分かってしまうのです。
この日本酒度計は、ある液体が「水より重いかどうか(つまり、比重)」を測るものです。
- 糖は、水より重いです。
- アルコールは、水より軽いです。
つまり、
糖が多くてアルコール少ない(たぶん、酵母くんがサボった)
⇒水より重い
⇒日本酒度マイナス
となります。
逆に、
アルコールが多くて糖が少ない(たぶん、酵母くんが頑張った)
⇒水より軽い
⇒日本酒度プラス
となります。
水と同じ重さのもの
⇒日本酒度ゼロ
です。
この日本酒度は、日本酒度計がなくても、自分でざっくり分かります。 コップに水を入れて、水の上から日本酒をちょっと垂らして、日本酒がどろっと沈んだら日本酒度マイナス(糖多い)、浮かんだら日本酒度プラス(糖少ない)となります。
- 糖分が多ければ甘いので、「甘口」
- 糖分が少なければ(アルコールが多ければ)甘くないので、「辛口」
(※スピリタスなど、アルコール度数が高いお酒はピリッとするので、辛口という表現も分かる気がします)
となります。
ちなみに余談ですが、日本酒はだいたいアルコール15%くらいです。 酒税法によると、日本酒のアルコールは22%未満と定められています。 (酵母くんはアルコール20%以上では死んでしまうので、22%以上になることはまずありえませんが。かわいそうに。)
以上をまとめますと、
日本酒度がマイナス(糖が多い)⇒「甘口」
日本酒度がプラス(糖が少ない)⇒「辛口」
と、判断することができます。
※この説明では、「甘口」のお酒が酵母が働いていないだけのような表現にもなっていますが、実際は、米や製造プロセス、酵母、コウジなどいろんな要素が加味されて、酒屋さんのいろんな工夫で「甘口」「辛口」が変わってきます。当然ですが、「甘口」のお酒が出来損ないなわけではありません。
しかーし、この日本酒度(比重)だけで本当に「甘さ」を判断していいのでしょうか?
「砂糖水」は、糖が入っているので水より重く、日本酒度マイナスです。 「レモンジュース(砂糖入り)」も、同様に水より重く、日本酒度マイナスです。
でも、「砂糖水」と「レモンジュース(砂糖入り)」を飲み比べると、甘さの感じ方は全然違います。
「砂糖水は甘いけど、レモンジュース(砂糖入り)は、すっぱくて、ほとんど甘さ感じないよ!でも、日本酒度はほとんど同じじゃん!!これ、日本酒度だけじゃ甘さ分かんないじゃん!!」
という意見がでました。ごもっともです。
すっぱい成分(酸)の量が少ないほど、「甘口」と表現すべきです。