住宅ローンの返済は、長期間となるため「住宅ローンの返済額を少しでも抑えたい」と考えることは自然なことです。その手段の一つとして検討したいのが「住宅ローンの借り換え」。しかし「自分にはメリットがあるのだろうか」「今のままのほうがよいのではないか?」など疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、借り換えのメリット・デメリットや注意点、借り換えに向いている人などについて分かりやすく解説します。

住宅ローンの借り換えとは?

2.住宅ローンの借り換え、自分はしても大丈夫?
(画像=『UpU』より引用)

住宅ローンの借り換えとは、これまでの住宅ローンを完済し新たな住宅ローンを借り直すことです。新規に住宅ローンを借りたときと同様に金融機関の審査を受け契約手続きを行います(図1)。

ただし借り換えのメリットがあるかどうかは、これから説明する通りケースバイケースです。場合によっては借り換えをしないほうがよかったり、借り換え自体ができなかったりすることもあります。

住宅ローン借り換えのメリット

3.住宅ローンの借り換え、自分はしても大丈夫?
(画像=terovesalainen/stock.adobe.com,『UpU』より引用)

住宅ローン借り換えのメリットは大きく分けて「返済負担が軽くなる」「団体信用生命保険の保障を見直せる」「他のローンを有利に借りることができる」の3つです。ただし金融機関や選ぶ商品によって大きな違いがある点に注意してください。

返済負担が軽くなる

もっとも大きなメリットが「済負担が軽くなる」です。具体的には、高い金利の住宅ローンを低い金利のものに借り換えることで毎月の返済負担や完済までの利息の総額を減らすことができます(図2)。 住宅ローン,借り換え

4.住宅ローンの借り換え、自分はしても大丈夫?
(筆者の試算に基づく)
(画像=『UpU』より引用)

上図の例では、借入期間35年、借入額3,000万円、固定金利年1%の住宅ローンを10年目に0.5%で借り換えることで以降の毎月の返済額が約5,000円、完済までの利息総額を約150万円減らすことができます。

ただし次に説明しますが、実際には借り換えのための諸費用がかかるため、その通りにはなりません。また住宅ローンの金利は金融機関によって異なります。比較の際は、入念なリサーチをすることが大切です。

団体信用生命保険の保障を見直せる 借り換えをすることで団体信用生命保険(以降、「団信」)の保障内容を見直すことができます。「借り換えをせずに今の契約で見直しできないの?」と感じている人もいるかもしれません。実は、借入時に加入した団信は、完済まで保障内容を変更することが原則できないのです。

5.住宅ローンの借り換え、自分はしても大丈夫?
(画像=『UpU』より引用)

加入者が死亡、または高度障がいになった場合にその時点の住宅ローン残高が免除される一般団信だけでなく、7大疾病保障や就業不能保証付きの保険など近年ではさまざまなタイプの団信が登場しています。現在の保障内容が十分でないと考える人には、見直しができるよい機会とも言えるでしょう。ただし加入の際には告知が必要です。

また健康状態に不安のある人の場合、新しい団信に加入できなかったり、加入できても選択肢に限りがある場合があります。

他のローンを有利に借りることができる。

金融機関によっては、借り換え時に新たな住宅ローンに加え、リフォーム用のローンを一体で借り入れることも可能です。この場合、追加のリフォームローンを住宅ローンと同じ金利で借りることができたりリフォームローンの金利が優遇されたりする場合があります。

さらに住宅ローンに加えて、他の金融機関で教育ローンやマイカーローンなどの無担保ローンをすでに借りている人が借り換えで「おまとめ」できる場合もあるのです。これにより別々に借りるよりも金利の総支払額を減らすことが期待できます。

住宅ローン借り換えのデメリット

6.住宅ローンの借り換え、自分はしても大丈夫?
(画像=yamashou/stock.adobe.com,『UpU』より引用)

既存の住宅ローンを借り換えするかしないかを決めるにあたっては、デメリットについてもしっかりと考えておく必要があります。おもなデメリットとして以下の4つが挙げられます。

手数料がかかる

住宅ローンの借り換えには、おもに以下の諸費用がかかります。

・事務手数料
・団体信用生命保険料
・保証料
・印紙税
・抵当権設定費用
・抵当権抹消費用
・繰り上げ完済手数料

これらのうちもっとも大きな費用が事務手数料です。事務手数料の金額や支払い方法は、金融機関や商品に違いがあるため、金利と同様にしっかりとリサーチしておきましょう。借り換えメリットを算出するときは、これらの諸費用も含めて計算します。なぜなら条件によっては、借り換えのメリットが大きく減ってしまうことがあるからです。

一例として図1の例に借り換え費用を含めると、図3のとおりメリットは半減してしまいます。

7.住宅ローンの借り換え、自分はしても大丈夫?
(画像=『UpU』より引用)

費用を差し引いてもメリットが出るかは「借り換え時の残高」「金利」「借り換え時期」の3つにかかっています。金融機関によってはメリットが出る基準をホームページで紹介していますので参考にするとよいでしょう。ちなみ図3の前提を用いると「残高が350万円以下」「金利が0.77%以下」「借り換え時期が21年9ヵ月以降」のいずれかになると完全にメリットがなくなってしまいます。

新たな審査が必要になる

借り換えには、新たな住宅ローンの審査が必要です。そのため当初に借り入れたときの年収や勤務状況によっては、借り換えができない場合があります。

健康状態によっては団信に加入できない場合がある

借り換えには、原則その金融機関が指定する団信へ加入しなければなりません。しかし健康状態によっては通常の団信に加入できないこともあります。その場合、引き受け基準が緩和されたワイド団信への加入を検討することになりますが通常の団信と比べて保険料が割高になる点がデメリットです。また金融機関によっては取り扱いがないところもあります。

住宅ローンに付帯の優遇が消滅する

既存の住宅ローンの借り入れにともない、カードのポイントが付いたり電気料金が実質割引になったりするなどの特典が付いている場合があります。しかし借り換えによってこれらの特典が終了するため、優遇の恩恵を受けていた人は注意が必要です。

住宅ローン借り換えの注意点

8.住宅ローンの借り換え、自分はしても大丈夫?
(画像=htpix/stock.adobe.com,『UpU』より引用)

ここでは、デメリットに挙げた以外の借り換え時における注意点を紹介します。

住宅ローンの借入要件を満たす必要がある

借り換えであっても新たな住宅ローンを借りる点では同じです。そのため「借入時や完済時の年齢」「就業期間」「前年度の年収」(会社員の場合)など借入要件を満たしていなければなりません。

借り換えにより、返済期間を延ばすことはできない

借り換えの場合、新たに借りる住宅ローンの返済期限は、借り換え前の住宅ローンの返済期限までとなります。つまり借り換えによって以前の住宅ローンよりも返済期限を延ばすことはできません。

住宅ローン控除の控除期間は変わらない

いわゆる住宅ローン控除は、借り換えしても利用可能です。ただし借り換えをしても住宅ローン控除を適用できる期間に変更はありません。また借り換え後の住宅ローンの借入期間は10年以上にする必要があります。

住宅ローンの一部借り換えは原則できない。

住宅ローンを一部だけ借り換えすることはできません。その理由は、抵当権の設定順位にあります。住宅ローンの借り入れには、担保となる自宅の土地、家屋に設定する抵当権を第1順位に設定することが条件です。複数の住宅ローンを同時に第1順位に設定することはできないので一部借り換えはできません。

住宅ローン借り換えに向いているのはこんな人

住宅ローン借り換えに向いている人

住宅ローン借り換えに向いている人
借り換え費用を差し引いても返済額が十分に減る人
借入時と比べて健康状態に大きな変化がない人
ローン以外の優遇が消滅しても気にならない人
借り換え後も当初の返済期間内で返済可能な人

これまで見てきたメリット、デメリットや注意点をもとにどのような人が住宅ローン借り換えに向いているか、上表にまとめてみました。

借り換え以外の選択肢もある

これまで紹介した借り換えではなく、今の住宅ローンを繰上返済することでも毎月の返済額を減らすことができます。もし余裕資金があれば比較検討するのがよいでしょう。繰り返しになりますが住宅ローンの返済は大きな負担です。しかし入念な準備と下調べをすれば借り換えで返済額を減らせるチャンスがあります。ぜひ本記事を参考に情報収集を始めてみてください。

酒井 乙(さかい・きのと)
ZFinancial&Associates 代表
CFP®、米国公認会計士、MBA
大学卒業後、メーカーや金融機関にて20年以上に渡り会計や財務、新商品開発などの業務に携わる。離婚により財産の問題に直面したことをきっかけに、「お金の問題に煩わされることなく、新たな人生を歩むためのサポートや情報発信」を行うために現事務所を立ち上げ。「難しい事柄を、誰にでも分かるように整理する」ことが得意。

提供・UpU

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