老後資金が厚生・国民年金などの社会保険だけでは賄えず、金額の差こそあれ老後に備えて一定程度の自己資金を用意する必要があることが明らかとなりました。ミドル世代などでは老後資金が不足していた場合でも挽回する時間的猶予がありますが、間もなく老後生活を迎えるシニア世代は準備不足のまま老後生活にはいってしまう恐れもでてきます。こうした場合、老後生活時も資産運用を継続し、老後資金の資金寿命を延ばすことが重要となります。そこで本記事では、税金対策として60歳のシニア世代がはじめてNISA(少額投資非課税制)制度を利用する際のポイントについて解説していきます。

NISAとは?

【各種NISAの制度概要】

一般NISA つみたてNISA 新型NISA
対象者 日本国内に居住する満20歳以上の人
非課税投資枠 年間120万円 年間40万円 年間122万円
非課税期間 5年間 20年間 5年間
対象商品 上場株式および
各種投資信託
特定の投資信託など つみたてNISA対象商品と
上場株式など
投資可能期間 2023年まで 2037年まで 2024年~2028年

NISAは2014年1月から個人の投資活動を支援するために導入された制度で、年間一定額までの投資元金から発生した値上がり益や配当金などを非課税とすることができます。

20歳以上の人が利用できるNISAには、「一般NISA」と「つみたてNISA」があり、それぞれ投資期間や利用できる金融商品に違いがあります。また、2024年には一般NISAの制度変更も予定されているため、新型NISAの仕組みも含めて制度概要を理解しておきましょう。

一般NISAは年間の非課税投資枠が大きいため、ある程度まとまった金額を比較的短期間で投資に回していく場合に適しており、つみたてNISAは若年層が長期間にわたり資産形成を行う場合に適しています。

退職金などのまとまった資金で資産運用を行う場合は、一般NISAのほうが適していますが2023年までしか利用することができません。しかし、投資期間が終了した場合でも所定の手続きを取ることによって一般NISAの金融商品は新型NISAに移管可能になると見込まれているため、非課税期間の短さを過剰に気にする必要はなさそうです。

NISAのメリット・デメリット

2.60歳からはじめるNISA。初心者が押さえておきたいポイントとは?
(画像=metamorworks/stock.adobe.com,『UpU』より引用)

NISAは所得税などの節税効果を得られるメリットの多い制度ですが、NISA口座以外(特定口座、一般口座)で資産運用を行っている場合はデメリットを被る場合があるため、NISAのメリット・デメリットを把握しておきましょう。

メリット:約20%の税金が非課税

非課税投資枠内の資金で資産運用を行い、その際に生じた値上がり益と配当金・分配金に課税される約20%の所得税・住民税が非課税となります。

デメリット:「損益通算」「繰越控除」が適用されない

NISAの対象商品となる上場株式や投資信託などの金融商品は値下がりするリスクもあります。通常、資産運用の税金は同種の金融商品内で利益と損失を通算し、残った利益に対し課税が行われます(これを「損益通算」と言います)。また、損失が生じた場合は3年間にわたって「繰越控除」することもできます。

しかしNISAによる資産運用による利益・損失は別枠として取り扱われるため、「損益通算」と「繰越控除」ができません。つまり、通常の証券口座で利益が生じ、NISA口座で損失が生じた場合でもこれらを通算することはできず、利益に対して課税が行われるため、税負担が増加してしまう場合があるのです。

ファンド(投資信託)の選び方──「アクティブ運用」と「インデックス運用」

3.60歳からはじめるNISA。初心者が押さえておきたいポイントとは?
(画像=m.mphoto/stock.adobe.com,『UpU』より引用)

NISAによる資産運用では損失となった場合、制度のメリットを得ることができないため、利益をあげることが何よりも重要となります。しかし、上場株式の株価は企業業績や将来性に大きく左右されるため、長期投資を行う際には財務諸表などの分析が重要です。

これは初心者には判断が難しい場合もあるため、投資初心者はファンド(投資信託)を利用するのがいいでしょう。ファンドには大別して「アクティブ運用」と「インデックス運用」があり、リターンや手数料などが違ってきます。

アクティブ運用とは、目安となる指数(日経平均株価やTOPIXなど)を上回るように「積極的」に運用するものです。一方、インデックス運用は、目安となる指数(インデックス)に連動するように運用するスタイルです。両者には、それぞれ異なったメリット・デメリットが存在しています。

アクティブ運用のメリット:より大きなリターンが期待できる

アクティブ運用はインデックスなどの設定されたベンチマークを上回ることを目的とし、ファンドの運用方針に従い、ファンドマネージャーの判断によって組入れ資産を柔軟に変更することができるため、インデックス運用よりも大きなリターンが得られる可能性があります。

アクティブ運用のデメリット:手数料が高い

機械的な売買を行えばよいインデックス運用に対し、アクティブ運用はファンドマネージャーが投資判断を行うので人件費が必要となるほか、組入れ資産の変更に際しても売買手数料が多くかかるため、投資家はインデックス運用よりも多くのコストを負担するデメリットがあります。

インデックス運用のメリット:運用コストが低い

インデックス運用のメリットは金融商品を特定の組み入れ比率に沿って機械的に売買するためプロの判断を必要としないで済み、運用コストを引き下げることができます。

インデックス運用のデメリット:リターンが低くなる場合がある

インデックス運用は指標に連動するため、基本的に指標以上の運用成績を得ることができません。