お腹の赤ちゃんはママが食べたものを吸収して成長します。ですから、妊娠中は赤ちゃんが健康に育つように、毎日の食事で何を食べるかについても気を付けることが大切です。
今回の記事では妊婦さんを対象に、妊娠中にとり過ぎないよう注意したほうが良い食品や、積極的に食べたほうがよい食品について、くわしくご紹介します。妊娠中の正しい食生活について知り、母子ともに健康になりましょう。
妊娠中の食事で気をつけるべきもの
まずは、妊娠中にできるだけ避けたほうがよいものを7つ、ご紹介します。男性や高齢者、妊娠した経験がない人には知られていないものも多いため、周りの方にもお伝えして、理解していただくようにしましょう。
タバコ
妊婦さん自身が喫煙することはもちろん、他の喫煙者の呼気やタバコから出る副流煙は、母体にも赤ちゃんにも健康被害をもたらすことがわかっています。タバコの主な有害物質は煙や副流煙に含まれるニコチンで、流産率が2倍になったり、早産率が1,5倍になったりするリスクがあるのです。また、ニコチンには血管を収縮させる作用があるため、子宮への血液循環が阻害された結果、赤ちゃんが低出生体重児になるケースもあります。
妊娠したら禁煙するとともに、家族や職場の人等にも近くで喫煙しないように協力してもらいましょう。ちなみに、タバコより安全性が高いイメージで人気を得ている加熱式タバコや電子タバコの中にもニコチンを含む製品があるため妊娠中は使用を避けてください。
アルコール
胎児は胎盤を通じてママの身体から栄養を吸収しています。そのため、ママがお酒を飲めば、赤ちゃんもアルコールを摂取することになり、胎児性アルコール症候群の原因となるのです。胎児性アルコール症候群は脳の形成不全や成長の遅れを引き起こす可能性があります。
ですから、妊娠したらすぐにアルコールを断ちましょう。もしも、妊娠に気付く前に飲酒してしまっていた場合は、いつ頃まで飲酒していたかを医師に伝えて相談することをおすすめします。
カフェイン
妊婦さんがカフェインをとりすぎると、妊娠の経過に悪影響が及ぶ場合や胎児が低体重児になる場合があるといわれています。妊娠中に摂取しても問題ないとされるカフェインの量は300mgとされており、コーヒーなら1~2杯、紅茶なら2~3杯、緑茶なら3~4杯程度です。
コーヒーやお茶は嗜好品のため、妊娠したからといって急にやめるのはつらいと感じるかもしれません。その場合は、カフェインレスの製品を利用してみるとよいでしょう。スーパーマーケットや赤ちゃん用品店、ネットショップなどで手に入ります。また、麦茶やルイボスティー、ハーブティーなど、もともとカフェインを含まないお茶に替えてみることもおすすめです。
水銀
魚は良質なたんぱく質ですが、魚の種類によっては水銀含有率が高いため、妊娠中に食べる量を制限したほうがよいものがあります。小さい魚を捕食する大きい魚ほど食物連鎖の上位にあり、水銀の含有率も上がっていくのです。
妊娠中のママが水銀を含む魚を食べ過ぎた場合、お腹の赤ちゃんに健康上の問題が出るおそれがあります。妊娠初期から注意すれば、胎盤ができる妊娠4週頃までにはママが食べた水銀は体外に排出されているため、赤ちゃんへの影響はありません。
サケやサバ、イワシやサンマ、タイやブリ、キハダ・ビンナガ・メジマグロ、ツナ缶などは、特に摂取量を抑える必要はないといわれています。それに対し、ミナミマグロ(インドマグロ)やマカジキ、ユメカサゴやキダイ等は、1食分を80gとして週に2回までに制限するのが望ましいです。また、本マグロ(クロマグロ)やメカジキ、メバチマグロ等は1食分を80gとすると週1回までが妊婦さんのとってよい量とされています。
ヨウ素
ヨウ素は妊娠中に適量をとることが大切とされる栄養素で、不足しても過剰になってもよくありません。厚生省の資料によると、妊婦さんに対するヨウ素の推奨摂取量は1日につき240マイクログラムです。特に昆布はヨウ素含有量が飛びぬけて多く、5gの乾燥昆布に12000マイクログラム、大さじ1の昆布つくだ煮に1650マイクログラムも含まれています。
昆布など海藻類を多く食べる日本人の食習慣では過剰になりがちなので要注意です。妊娠後期の妊婦さんがヨウ素をとりすぎると、赤ちゃんが甲状腺機能低下症になるといわれています。昆布製品や昆布出汁などをとりすぎないように注意しましょう。
ヒ素
ひじきはミネラルや食物繊維が豊富な食材ですが、発がん物質である無機ヒ素が多く含まれているため、食べ過ぎないほうが良いとされています。
一般的な成人の場合は、週に数回、ひじきの小鉢を食べる程度なら問題ありません。妊婦さんの場合は赤ちゃんへの影響を回避するために、量を控えめにしましょう。
ビタミンA
レバーやうなぎに豊富に含まれる動物性のビタミンAを妊婦さんや生後3カ月までの赤ちゃんがとりすぎると、赤ちゃんに形態異常が発生するリスクがあるといわれています。妊婦さんが食べる場合、レバーなら1片程度、うなぎなら1串の半分程度が1日あたりの適量です。
ただし、植物性ビタミンA(カロチン)については、たくさん摂取しても問題はないといわれています。
妊娠中に積極的に食べたいもの
次に、妊娠中に意識して摂取したほうがよい食品や栄養素を4つ、ご紹介します。
葉酸が豊富な「納豆や焼き海苔」
葉酸は細胞分裂に必要なDNAの合成に欠かせない栄養素であり、妊婦さんが葉酸をしっかりととることによって、赤ちゃんの脳や脊髄の異常発達を防止するといわれています。
葉酸を多く含む食品には納豆や焼き海苔の他、モロヘイヤなどもあります。
タンパク質が豊富な「肉や魚」
赤ちゃんの筋肉や血液を作るもととなるのがタンパク質です。人体を構成する主成分でもあるため、良質なタンパク質を含む食品である肉や魚は、ふだんはもちろん、妊娠中にも欠かさず食べるようにしましょう。
ただし、同じ食品ばかり偏って食べるとアレルギーの原因になるという説もあります。できるだけ多種類の食品からタンパク質をとるように心がけるとよいかもしれません。卵や大豆製品、乳製品もタンパク質が豊富な食品です。
カルシウムが豊富な「乳製品」
赤ちゃんの骨や歯を作るために、大量のカルシウムが必要です。また、胎児にカルシウムを奪われてしまうため、妊婦さんの骨や歯がもろくなってしまう場合もあります。赤ちゃんと母体の健康のために、意識してカルシウムを摂取しましょう。
カルシウムは乳や低脂肪乳、チーズやヨーグルト等の乳製品に豊富に含まれています。その他、小魚や海藻、緑黄色野菜からもカルシウムを摂取できます。
鉄分が豊富な「レバーやほうれん草」
鉄分は貧血の防止や体力の維持に必要な栄養素のため、妊娠中も多めに摂取したほうがよいといわれています。
鉄分を豊富に含む食品として有名なものは赤身肉やレバー、ほうれん草です。その他、鉄分を強化したシリアルやサプリメントなどを利用する方法もあります。